実務に役立つ労務の知識
何に気をつければいいの? 職業安定法改正施行

2022年9月12日

 

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毎年いくつもの法改正があります。最近であれば、育児介護休業法の改正や社会保険の被保険者の適用拡大などです。これらの改正内容は行政から公表されていても、実際に入手した情報を活かすには、自社での対応の必要性の有無の判断、必要な場合の準備、そして実施に関する手続き等は会社担当者が行わなければなりません。

このように、法改正は担当者が自分から行動する必要があり、疎かにすると会社として「行政指導」を受けたり、「従業員との労働トラブル」などに至る危険性があります。今回の職業安定法の改正も「知らなかった」では済みませんので、特に具体例に気を付けながらお読みください。

 

職業安定法と改正時期

従来から人や物を運ぶことを目的としている事業用自動車(緑ナンバーのバス、トラック、タクシー等)を運用している会社には、貨物自動車運送事業法に基づいて「運行管理者」を選任する義務があります。その者の役割として会社の従業員が事業用自動車を運転する前後に「検知器による飲酒検査を行う義務」を課し、酒気帯び運転等の予防・撲滅等の任にあたらせています。

 

【改正①】求人等に関する情報の的確な表示

労働者(求職者)は応募に際し、会社等の事業者からの募集情報を吟味し、自分が希望する企業に応募することになりますので、その情報が正しくなければならないのは当然のことです。そこで今回、求人企業に対して、「求人情報、自社に関する情報」を的確に表示すること等が義務付けられました。

  • 誤解を生じさせる表示、虚偽の表示はしてはならない。
  • 求人情報を正確・最新の内容に保つ措置を講じなければならない。

<「誤解を生じさせる表示」「虚偽表示」の例>

<「正確かつ最新の内容に保つ措置」の例>

  • 募集を終了・内容変更したら、速やかに募集に関する情報の提供を終了・内容を変更する。

対応例)自社の採用ウェブサイト等を速やかに更新する。

  • 求人メディア等の募集情報等提供事業者を活用している場合、募集の終了や内容変更を反映。

対応例)速やかな事業者への依頼。

  • いつの時点の求人情報か明らかにする。

対応例)募集を開始した時点、内容を変更した時点 など時期を明らかにし、かつ、最新に更新。

 

【改正②】個人情報の取り扱いに関する新しいルール

求職者の個人情報を収集する際には、業務の目的を明らかにすることとされました。

  • 求職者等が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に、個人情報を収集・使用・保管する業務の目的を明らかにしなくてはならない。

<業務目的の明示の「アウト、セーフ」例>

<(従来からの)職業安定法の個人情報に関する規定>

従来より、求職者の個人情報に関する「収集・使用・保管」は業務の目的の達成に必要な範囲内でしなくてはならず、当該個人情報をみだりに第三者に提供してはならないとされています。また、業務上知り得た人の秘密も同様に漏らしてはなりません。

 

【改正③】求人メディア等についての届出制が創設

従来の求人メディア・求人情報誌だけでなく、インターネット上の公開情報等から収集(クローリング)した求人情報・求職者情報を提供するサービス等を行う事業者も職業安定法の「募集情報等提供事業者」になりました。

<特定募集情報等提供事業者の届出>

特定募集情報等提供事業者(求職者に関する情報※を収集する募集情報等提供事業者)に、届出制が導入。また、年に1度、提供している募集情報等の規模等の事業の概況を報告する必要があります。

※「求職者に関する情報」には、氏名等の特定の個人が識別できる個人情報だけでなく、メールアドレスや経歴、サイトの閲覧履歴等を含む。

【注意】令和4年10月1日時点で特定募集情報等提供事業を行っている事業者は、令和4年12月31日までに届け出る必要がある。

 

まとめ

今回の職業安定法の改正内容は、従業員を募集する会社にとっての「基本的注意事項の明確化」といった内容です。「いい求職者に応募してもらう」ことだけでなく、入社後に実力発揮して長く会社に貢献していただくためにも今回の改正内容は今後の対応に反映いただきたいと思います。

 

厚生労働省HP  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172497_00003.html

 

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特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。当コラムは2015年1月より担当。

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