アルコール検知器義務化延期か

2022年8月3日

 

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道路交通法の施行規則改正により、今年の4月と10月の2回にわたって、一定規模以上の自動車を使用する会社にはアルコールチェック義務化に関する対応が求められています。すでに4月からの内容は施行になっていますが、10月からの実施内容が昨今の半導体不足の影響で黄色信号が点灯しています。警察庁は、2022年7月15日からパブリックコメントの意見募集を開始しましたが、意見募集要領の中で、アルコール検知器の使用義務について「当面の間延期」する方針が明らかになりました。

安全管理は会社の重要な責務です。

そこで今回は、「アルコールチェック義務化の内容がどういうものであるのか」ということと、「10月施行の内容の現段階での方針」について取り上げたいと思います。社会保険の内容ではありませんが、会社担当者の方には一読いただきたいと思います。

 

緑ナンバーの場合

従来から人や物を運ぶことを目的としている事業用自動車(緑ナンバーのバス、トラック、タクシー等)を運用している会社には、貨物自動車運送事業法に基づいて「運行管理者」を選任する義務があります。その者の役割として会社の従業員が事業用自動車を運転する前後に「検知器による飲酒検査を行う義務」を課し、酒気帯び運転等の予防・撲滅等の任にあたらせています。

 

改正の背景

令和3年6月に千葉県八街市で飲酒運転の白ナンバーのトラックが児童5人を死傷させる事故が発生しました。白ナンバーの車両の場合でも、①白ナンバーの車を5台以上、②定員11人以上の車を1台以上使用する等の条件を満たした会社は、道交法で「安全運転管理者」を選任し、運転手に点呼などを実施して、疲労状況や飲酒していないかを確認する義務があります。しかし、確認の実施はあくまで乗車前の点呼時のみであり、アルコール検知器によるチェックも義務化されていませんでした。これでは点呼後に飲酒されてしまうことによるリスクやその後の指導等は行えず、現に今回の事故の原因にもなってしまっています。

 

アルコールチェック義務化の内容

上記背景があり、対策として①白ナンバーの車を5台以上、②定員11人以上の車を1台以上使用等の条件を満たした会社には、道路交通法の施行規則改正により下記のように2段階に分けて施行・義務化されることになりました。

 

 

 

 

 

 

上記のように今年の4月からはすでに①運転前後の目視確認、②酒気帯び有無の記録と保存、が義務化になっています。また、10月からは「アルコール検知器を用いた検査」が義務化されていましたが、今回、この部分がアルコール検知器不足の影響で方針転換される見込みです(後段記述)。

警察庁HP https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/index-2.html

 

会社がすべきこと

今回の改正施行のキーマンは「安全運転管理者」になります。この担当者が乗車前の前後の状態を4月以降「目視で確認し、記録すること」が義務化されていますが大丈夫でしょうか?記録については下記のような記録簿を会社で用意して1年間保管しなければなりません。

 

 

 

 

 

 

 

また、運転者が帰社するのが遅い時間になることもあるでしょう。この場合、安全運転管理者があらかじめ代わりの者を指名しておき、その者が対応することでもよいとされています。

 

(まさかの)検知器使用が延期の方向

上記のように開始したアルコールチェックですが、令和4年10月からはアルコール検知器を使用した検知が義務化となっていました。ところが、昨今の半導体不足の影響を考慮し、当面の間はアルコール検知器の義務化は適用しないこととする内閣府令案が出され、パブリックコメント募集も行われています(令和4年7月15日~8月14日)。

注意点はあくまで「延期」ということです。「中止」ではありませんので早合点は禁物です。ちなみに緑ナンバーの検知器義務化(2011年4月)も、東日本大震災の影響で1か月間延長されたことがあります。

 

【付録】コロナ濃厚接触者待期期間→最短3日に!

新型コロナウイルス第7波で感染者が急増しました。一方で社会生活への影響の軽減策として、「感染者の濃厚接触者に求める自宅などでの待機期間を現行の原則7日間から5日間に短縮」さらに「抗原定性検査キットを用いた検査で陰性が確認されれば最短3日目で解除」することになっています。この基準は7月22日から全ての濃厚接触者が対象となっています。

 

 

 

 

 

 

 

これまでは、感染者と最後に接触した日の翌日を「1日目」として原則7日間。抗原定性検査により4、5日目に連続で陰性なら5日目で解除でしたが、新基準では原則は5日間で、2、3日目に陰性なら3日目に解除となっています。

 

まとめ

今回はアルコールチエック義務化の内容と10月施行の検知器使用延期の方向性についてとり上げました。あくまで延期ですので準備は進めておくようにしてください。また、コロナ濃厚接触者の待期期間が抗原定性検査の2日連続陰性で最短3日になりましたので、会社での周知や、抗原定性検査キットの用意をしておくのも有効と思います。

 

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特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。当コラムは2015年1月より担当。

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