いよいよ目前!社会保険の適用拡大 税理士・弁護士・社会保険労務士等士業が「適用業種に追加」も10月から!!

2022年7月1日

 

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最近、年金事務所による会社の社会保険に関する窓口調査が増加しているように感じていました。コロナ前までは算定基礎届の提出時に4社に1社の割合で窓口での定期調査がありましたが、それとはどうも関係なく行われているようです。そこで年金事務所の担当官に聞いたところ、「実は社会保険の適用拡大が近いので…」との言葉を得ました。今回はこの社会保険の適用拡大について取り上げます。

 

原則の社会保険加入対象者

社会保険の加入となる対象者は、社会保険に加入している適用事業所に雇用されている者で、代表取締役等の役員も原則対象になります。ただし、パート等の短時間労働者の方については「1週の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が、正社員と比較して概ね4分の3以上である者」とされており、原則として週の所定労働時間が30時間未満の方については加入対象とはなっていません

 

短時間労働者の適用拡大

上記のように週30時間未満の短時間労働者の方は、原則として社会保険加入の加入対象ではありませんが、平成28年10月から特定適用事業所(従業員数が501人以上の会社)に雇用されている方は、週の所定労働時間がおおむね20時間以上他の条件で社会保険の加入対象者になっています。これを社会保険の適用拡大と呼ぶのですが、この拡大の波がさらに大きくなり、令和4年10月からは101人以上に拡大されます。

 

上記従業員数の会社に雇用されており、下記条件にすべて該当した場合に社会保険の加入対象になります。

① 週の所定労働時間が20時間以上

② 月額賃金が8万円以上

③ 「2ヶ月を超える雇用の見込」がある

④ 学生ではない

なお、従来までの「勤務期間1年以上」の要件が撤廃され、令和4年10月からは上記のように「2ヶ月を超える雇用の見込み」となります。

(参考) 日本年金機構ホームページ https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html

 

注意点(社員数のカウントと適用対象時期)

従業員数の対象は、以下のAとBの合計「現在の厚生年金保険の適用対象者」になります。

 

したがって社会保険の適用拡大における従業員数と、すべてのパートタイマーを含んだ全従業員数とは異なるということになります。

また、令和4年10月1日の適用拡大時には101人以上ではなかったものの、その後従業員数の増加で対象事業所になる場合もありますので、この点も注意が必要です。

 

必要な準備

令和4年10月以降、新たに従業員数101人以上で社会保険の適用拡大事業所(特定適用事業所)になった場合、拡大条件に該当する従業員に対して「被保険者資格取得届」等の提出が必要になります。

以下、主な準備事項です。

① 新たに被保険者となる短時間労働者の把握

② 従業員への説明

→説明ナシで手続きを進めるとトラブルが予想されます。

③ 「資格取得届」の準備

→対象従業員の「被保険者資格取得届」の他、被扶養者についても調査を行い必要に応じ「被扶養者(異動)届」の準備も必要です。

 

加入義務対象となる事業所の拡大

今回の短時間労働者に関する適用拡大とは中身が異なりますが、同じ時期にもう一つ大きな改正があります。それは社会保険の対象にならない「非適用業種」の見直しです。

社会保険の適用事業所は、法人であれば代表ひとりでも強制適用です。一方、個人事業の場合、適用業種と非適用業種で実は取り扱いが異なります。適用業種とは、製造業や土建業等を言い、従業員等が5人以上となった場合は強制適用となりますが、5 人未満の場合は強制適用の対象外です(任意適用)。ところが非適用業種(飲食店や理容・美容業、税理士・弁護士・社労士事務所等)の場合は、従業員を何人雇っても任意適用のままの扱いとなっています。したがって美容室などは従業員が数十人いたとしても、個人事業であるかぎりは社会保険への加入義務は発生しません。

 

非適用業種の見直し(令和4年10月施行)

しかし今回、上記の非適用業種のうち、弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業については、他の業種と比べても法人割合が著しく低いこと、社会保険の事務能力等の面からの支障はないと考えられることなどから、適用業種に追加されることになりました。これにより、これらの事業では従業員が5人以上となった場合、社会保険に加入しなければなりません。令和4年10月になりましたら速やかに新規適用届、被保険者資格取得届等の届出を行ってください。

(参考) 日本年金機構ホームページ https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/20211118.html

 

まとめ

今回の社会保険の適用拡大は、対象となる会社(事業所)にとって社会保険の対象者が増えることを意味します。会社負担の社会保険料の増加の対応、及び、改正内容を事前に対象者に説明・理解していただかないと労働トラブルも予想されます。事前の準備を心がけましょう。

 

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特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。当コラムは2015年1月より担当。

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