新制度!雇用保険マルチジョブホルダー制度

2022年2月10日

 

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新型コロナに対する第3回目のブースター接種が進められているようですね。希望する方に早く行きわたり、経済の回復につながることに期待です。
さて今回は、新制度である「雇用保険マルチジョブホルダー制度」について取り上げます。なんともつかみどころのない名称ではありますが、従来にはなかった制度ですので、会社担当者の方はぜひ制度概要と対応方法について確認してください。

 

マルチ高年齢被保険者とは

これまで雇用保険の被保険者になる従業員は、主たる事業所での労働条件として週の所定労働時間が20時間以上、かつ、31日以上の雇用の見込みがあること等の要件を満たす場合とされてきました。
しかし、昨今の副業・兼業制度の推進や、高年齢者法改正による70歳までの働き方等を見据え、今年(令和4年)1月1日から「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が制度化されました。この制度は、複数の事業所で働く65歳以上の方が、2つの事業所での勤務時間を合計し、適用対象者の要件を満たす場合に、本人から申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。

 

「マルチ高年齢被保険者」の要件

マルチ高年齢被保険者となるには、以下の要件をすべて満たすことが必要です。
1)複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
2)2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
3)2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
上記条件を満たしていれば自動的にマルチジョブホルダー制度の恩恵を受けるわけではありません。上記条件を満たした方が、マルチ高年齢被保険者となることを希望し、かつ、ご本人がハローワークに申し出ることで雇用保険の適用対象者となります。

(例)

*上記A、Bの事業所で雇用保険の適用を受けた場合、事業所Bを離職してもAとCの労働時間合計が週20時間以上であるため、AとBで雇用保険資格喪失届提出後、あらためてAとCの資格取得の届出が必要になります。
*マルチ高年齢被保険者として加入した後の扱いに関しては通常の雇用保険の被保険者と同様になりますので、労働者の希望による任意での脱退はできません。

 

マルチジョブホルダー制度の効果
上記のようにマルチ高年齢被保険者となった人が失業した場合(注1)には、一定の要件(注2)を満たせば、高年齢求職者給付金(被保険者であった期間に応じて基本手当日額の30日分または50日分の一時金)を受給することができるようになります。

注1)働いている2つの事業所のうち、1つの事業所だけを離職した場合でも受給することが可能です。ただし、上記でも触れましたが、雇用保険に該当する2つの事業所以外の事業所でも働いており、離職していないもう1つの事業所と3つ目の事業所を併せて、マルチ高年齢被保険者の要件を満たす場合は、被保険者期間が継続されるため、受給することができません。
注2) 離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上あることが必要です。

 

会社が行う手続き(取得時)

マルチジョブホルダー制度は「マルチ高年齢被保険者」として希望する従業員本人が手続きを行う必要があるため、会社担当者は本人から申し出がない限りは特に何かをする必要はありません。
ただし、本人から加入の希望があった場合、その依頼に応じて会社は必要な証明(雇用している事実や所定労働時間数)を行わなければなりません。

【取得時】<様式第1号(第65条の6関係)>「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」
事業主記入欄

・雇用保険適用事業所番号 ・マルチジョブの被保険者となったことの原因 ・賃金月額 ・雇入年月日 ・雇用形態 ・職種 ・1週間の所定労働時間 ・契約期間の定め ・事業主所在地会社名等
*添付書類)賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、雇用契約書や労働条件通知書等

*3社以上勤務時は2社を本人が選択
*本人は対象とする事業所(会社)それぞれの必要書類をそろえてハローワークに届出。

<会社の注意点>
会社が協力しなかった場合、ハローワークから会社に対して確認が行われます。本件に関する解雇・雇止め・不利益変更等は禁止とされています。また、加入後は他の被保険者同様、雇用保険料を徴収・納付しなければなりません。

 

会社が行う手続き(喪失時)

【喪失時】<様式第1号(第65条の6関係)>「雇用保険マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届」
事業主記入欄

・マルチジョブ離職年月日・マルチジョブ喪失原因・1週間の所定労働時間・事業主所在地会社名等
(*添付書類 賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、退職届、雇用契約書や解雇予告通知書等)

<離職票(離職証明書)>
【離職等をした事業所の場合】→通常の被保険者と同様の記載
【雇用が継続し、雇用契約に変更がない事業所の場合】
→⑦離職年月日、⑩賃金支払対象期間、⑪基礎日数、⑫賃金額、⑭特記事項、離職理由、⑯本人判断
上記は記載不要。記載項目欄に斜線を引く。

*詳細は「雇用保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット」ご参照(厚労省)

 

まとめ

我が国は今後65歳を過ぎた方でも、希望する方には労働を続けやすいように環境を整備してきており、今回のマルチジョブホルダー制度もその一環と思われます。ただし、今回の制度は自社以外での雇用との兼ね合いなので、自社の労働だけでは状況がわかりません。特に、資格喪失時は「自社では退職していないのに資格喪失届と離職票を会社は作成しなければならない」ことになりますので、これに関しては多くの方が違和感を覚えることでしょう。様式そのものも変更になりますので、希望者が出る前に担当者の方は一通り流れを確認しておかれることをお勧めいたします。

 

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特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。当コラムは2015年1月より担当。

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