高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~

2021年10月4日

 

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70歳までの就業機会確保のために高年齢者雇用安定法が改正され,令和3年4月1日から施行されることが予定されています。
すでに65歳までの雇用確保は義務付けられていますが,改正法では65歳から70歳までの就業機会を確保するため,以下のいずれかの措置を講じることが努力義務として使用者に対して課せられることになりました。

① 70歳までの定年引き上げ
② 定年制の廃止
③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて,他の事業主によるものを含む)
④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
b. 事業主が委託,出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

④,⑤のように雇用によらない就業確保措置も含まれている点,③について再雇用先として資本関係にない他の事業主も含まれている点がこれまでの高年齢者雇用確保措置と異なります。

雇用によらない就業確保措置である④,⑤については未知数の点も多いため,ひとまずはこれまでの定年後再雇用制度と同様に③の70歳までの継続雇用制度を導入する企業が多いのではないかと思われます。

これまでの裁判例では,再雇用後の業務内容が変わるとしても70%以上賃金が下がるような場合には合理性を欠くものとして不法行為の成立等が認められることがありました。
新たに努力義務となった65歳以降の再雇用についても極端な賃下げは難しいものと考えられますが,かといって企業としての新陳代謝を図る必要もあるため,パートを提示する等の選択肢は柔軟に認められることが望ましいものと考えます。

 

 

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弁護士 石井拓士(いしい たくじ)(太田・石井法律事務所)

2006年早稲田大学法学部卒業、08年慶應義塾大学大学院法務研究科修了、09年弁護士登録。経営法曹会議会員。第一東京弁護士会労働法制委員会委員。
主な取り扱い分野は、人事労務を中心とした企業法務。
主な著書に『第2版 懲戒処分―適正な対応と実務』(共著、労務行政、2018年)、『労災保険・民事損害賠償判例ハンドブック』(共著、青林書院出版、2017年)、『退職金・退職年金をめぐる紛争事例解説集』(共著、新日本法規出版、2012年)などがある。

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