女性活躍推進法の改正
2022年7月27日
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女性活躍推進法は、平成28年4月1日から施行されておりましたが、施行から3年が経過した時点で見直しの要否について検討がなされ、その結果令和元年に改正が行われました。
また、直近である令和4年7月にも法改正が行われています。
各改正点は以下のとおりです(施行日はそれぞれ異なります)。ここで、まとめて確認してみましょう。
1 大企業の計画・公表が2項目へ
「職業生活に関する機会の提供」及び「職業生活と家庭生活の両立環境の整備」という2つのカテゴリーの中から、それぞれ1つ以上の項目を選択し数値目標を設定することが必要になりました。
例外として、いずれかのカテゴリーについてはすでに成果が上がっている場合には、残り1つのカテゴリーのみから2項目選択して数値目標を設定することも可能とされています。
具体的な項目の内容は以下のとおりです。
□「職業生活に関する機会の提供」に関する項目
・採用した労働者に占める女性労働者の割合(区)
・男女別の採用における競争倍率(区)
・労働者に占める女性労働者の割合(区)(派)
・男女別の配置の状況(区)
・男女別の将来の育成を目的とした教育訓練の受講の状況(区)
・管理職及び男女の労働者の配置・育成・評価・昇進・性別役割分担意識その他の職場風土等に関する意識(区) (派:性別役割分担意識など職場風土等に関する意識)
・管理職に占める女性労働者の割合
・各職階の労働者に占める女性労働者の割合及び役員に占める女性の割合
・男女別の1つ上位の職階へ昇進した労働者の割合
・男女の人事評価の結果における差異(区)
・セクシュアルハラスメント等に関する各種相談窓口への相談状況(区)(派)
・男女別の職種又は雇用形態の転換の実績(区)(派:雇入れの実績)
・男女別の再雇用又は中途採用の実績(区)
・男女別の職種若しくは雇用形態の転換者、再雇用者又は中途採用者を管理職へ登用した実績
・非正社員の男女別のキャリアアップに向けた研修の受講の状況(区)
・男女の賃金の差異(区)
□「職業生活と家庭生活の両立環境の整備」
・男女の平均継続勤務年数の差異(区)
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合(区)
・男女別の育児休業取得率及び平均取得期間(区)
・男女別の職業生活と家庭生活との両立を支援するための制度(育児休業を除く)の利用実績(区)
・男女別のフレックスタイム制、在宅勤務、テレワーク等の柔軟な働き方に資する制度の利用実績
・労働者(※)の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間 (健康管理時間)の状況
・労働者(※)の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間 (健康管理時間)の状況(区)(派)
・有給休暇取得率(区)
※ 令和2年4月1日以降、状況把握の際には、管理職を含む全労働者の労働時間を把握する必要があります。
・上記の項目は状況把握項目を区分したものであり、下線は基礎項目(必ず把握すべき項目)です。
・「(区)」の表示のある項目については、状況把握の際は、雇用管理区分ごとに把握を行うことが必要です。
・「(派)」の表示のある項目については、労働者派遣の役務の提供を受ける場合には、状況把握の際は派遣労働者を含めて把握を行うことが必要です。
同改正の施行日は令和2年6月1日からとなっています。
2 中小企業への対象拡大
令和4年4月1日から、常時雇用する労働者が101人以上300人未満の中小企業も女性活躍推進法に基づく行動計画の策定・届け出、情報公表が義務付けられるようになりました。
具体的な手順等は厚生労働省の以下のページを参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000862422.pdf
3 プラチナえるぼしの創設
行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により、厚生労働大臣から「えるぼし」や「プラチナえるぼし」の認定を受けることができます。
令和4年3月末時点での認定状況は以下のとおりです。
プラチナえるぼし 25社
えるぼし 1712社
プラチナえるぼしの認定を受けると、行動計画の策定の免除、公共調達で加点、商品等に厚労省認定の「プラチナえるぼし」マークをつけられるといったメリットがあります。
プラチナえるぼしの創設に関する法改正は令和2年6月1日から施行されています。
4 男女の賃金の差異の情報公表
令和4年7月8日に女性活躍推進法に関する制度改正がされ、情報公表項目に「男女の賃金の差異」を追加するともに、常時雇用する労働者が301人以上の一般事業主に対して、当該項目の公表が義務づけられることとなりました。
5 まとめ
日本は他の先進国と比べて依然として男女の賃金格差が大きい状況にあることからすると、女性活躍推進法の目標とする社会の実現までの道のりはまだ遠いのかもしれません。
法改正も踏まえさらなる意識改革・企業努力が必要になるものと考えられます。
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弁護士 石井拓士(いしい たくじ)(太田・石井法律事務所)
2006年早稲田大学法学部卒業、08年慶應義塾大学大学院法務研究科修了、09年弁護士登録。経営法曹会議会員。第一東京弁護士会労働法制委員会委員。
主な取り扱い分野は、人事労務を中心とした企業法務。
主な著書に『第2版 懲戒処分―適正な対応と実務』(共著、労務行政、2018年)、『労災保険・民事損害賠償判例ハンドブック』(共著、青林書院出版、2017年)、『退職金・退職年金をめぐる紛争事例解説集』(共著、新日本法規出版、2012年)などがある。