コロナ禍での業務縮小を理由とした整理解雇

2021年10月25日

 

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コロナ禍の業績不振を理由に人員整理その他の人事措置を検討している会社も多いかと思われますが、司法判断の一例として、森山(仮処分)事件(福岡地決令3.3.9)をご紹介します。

同事案は、主として貸切観光バス事業を営んでいる会社において、新型コロナウイルスの感染拡大によって令和2年2月中旬以降貸切バスの運行事業がまったくできなくなり、同年3月中旬にはすべての運転手に休業要請を行う事態に陥り、同年3月の売上は約399万円、同年4月は約87万円、一方で従業員の社会保険料の負担は月額150万円を超えていた状況で、雇用調整助成金がいつ、いくら支給されるかも不透明な状況にあったことから人員整理を行ったという内容です。

裁判所は、人員整理の必要性は認めましたが、人員削減の規模や人選基準の説明が不十分であること、希望退職者の募集を行っていないこと、新たに開始する高速バス事業に従事するか否かの労働者の意思確認手続きも拙速であったこと等から、解雇手続きが不相当であり、人選の合理性も認めがたいものとして、解雇は無効としました。

このほかにも、コロナ禍の人員整理について、雇用調整助成金の利用が可能であるにもかかわらずこれを利用していないこと等から雇止めを無効と判断した例としてセンバ流通(仮処分)事件(仙台地決令2.8.21)があります。

このように、人員整理のハードルは高い傾向が見て取れます。少なくとも、あらゆる手段を講じてなお人員整理が避けられないということが数字をもって具体的に説明可能であり、かつ、希望退職の募集等の解雇回避努力のほか、従業員への丁寧な説明及び人選の合理性といった手続き面の適正を図ることが重要と考えられます。

 

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弁護士 石井拓士(いしい たくじ)(太田・石井法律事務所)

2006年早稲田大学法学部卒業、08年慶應義塾大学大学院法務研究科修了、09年弁護士登録。経営法曹会議会員。第一東京弁護士会労働法制委員会委員。
主な取り扱い分野は、人事労務を中心とした企業法務。
主な著書に『第2版 懲戒処分―適正な対応と実務』(共著、労務行政、2018年)、『労災保険・民事損害賠償判例ハンドブック』(共著、青林書院出版、2017年)、『退職金・退職年金をめぐる紛争事例解説集』(共著、新日本法規出版、2012年)などがある。

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