第5回 介護施設が検討しなければならないこれからの組織・仕組みづくり
~介護事業のここが知りたい 運営と経理の実務【パート1】運営編~
2022年11月9日
組織・仕組づくりについて
LIFE 導入に関して
今回の改定で大きなウェイトを占めるLIFE 関連ですが、算定要件として示される内容の大多数は
- サービスの質の向上を図るため、LIFE への提出情報及びフィードバック情報を活用
- 利用者の状態に応じた計画の作成(Plan)、当該計画に基づく支援の提供(Do)、当該支援内容の評価(Check)、その評価結果を踏まえた内容の見直し・改善(Action)の一連のサイクル(PDCA サイクル)
により、サービスの質の管理を行うとされています。
LIFE への情報を提出するにあたっては、個人の作業の延長でも可能かもしれません(間違いなく、データ収取モレ等なくし、精度高くPDCA運用を進める前提であれば、チームとしての運用が望ましいと考えます)。
一方、フィードバック情報を活用するにあたってはいかがでしょうか?
「パソコンが得意な職員を担当にしている」「フィードバック情報から分析を行った」では、フィードバック情報の活用にはなりません。算定要件のPDCA サイクルの管理では、フィードバック情報から分析した結果から実施した支援内容の評価を行い(Check)、評価結果を踏まえた支援、計画内容の見直し・改善(Action)につなげることが求められています。フィードバック情報をどう解釈し、それをどのように見直しに活かすのかについては組織としての体制が構築されていないと、個々の職員の能力だけでは回らない業務になる可能性があります。LIFE の運用がまだできていない事業所においては、令和3 年度内は、操作の慣れや正確にデータを管理する整備もあると考えられるので、まず一部の職員により、業務の形としてPDCA サイクルが回せるところを最初のステップとして位置付け、次に他の職員も関われるように手順や担当を割り振り、分析・評価及び改善の内容の充実を図る段階を踏むことが望まれます。
そもそも、LIFE 導入が掲げる科学的介護の目的は、なんでしょうか?データを収集し、フィードバック情報を活用することで記録や集計の時間が削減され、生産性が向上するからでしょうか?違いますね(効果としてはアリかもしれませんが)。最大の目的は、利用者の自立支援、重度化防止です。そのためにPDCA サイクルを運用し、提供したサービス、取組んだ支援計画のアウトカム評価を行うことにあります。LIFE については、新しい取組であり、次回制度改正に向けてもさらに範囲が広くなる可能性の高い取組であるため、組織としての考え方や実務面の体制整備を構築しておきたいところです。
BCP 等
また、今回の改定では組織として大きな方向性や姿勢を問われる内容が多く設定されていました。主なものでは、
- 業務継続計画(感染症・災害等)の策定等
- ハラスメント対策の強化
- リスクマネジメント(事故発生)の強化
- 高齢者虐待防止の推進
が挙げられます。これらの策定については、法人として事業所として、地域でどのような役割を担うのか、対象となる利用者としてどのような状態の方を想定するのか、逆に受入難しい利用者の範囲はどうであるか、災害時等に職員がどこまで稼働できるのか、職員個々の家族を考慮した場合、災害時に出勤できる人がどれだけいるのか等々、事業所の考え方と職員の意向のすり合わせがないと効果的なものができあがりません。
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株式会社オフィスイーケア代表取締役楠元睦巳
株式会社オフィスイーケア代表取締役
1965年奈良県生まれ。
富士通株式会社・生産システム本部にてコンサルティング業務に従事。株式会社やさしい手にて城南エリア事業部長、ISO 内部監査員等。
ミモザ株式会社にて常務執行役員、居宅介護事業本部長、内部監査室等。 2008年オフィスイーケア創業(2017年株式会社化)。介護コンサルタントとして、介護事業所運営支援、組織開発、介護保険制度・給付管理・コンプライアンスに関する執筆、セミナー、研修の他、自治体の介護保険事業計画の策定支援等に携わる。