第1回 介護保険制度の概要
~介護事業のここが知りたい 運営と経理の実務【パート2】経理編~

2022年12月7日

 

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▷連載パート2では、介護事業の経理について、介護保険制度の仕組み、法令で求められる計算書類(財務諸表)の作成について必要な区分経理の方法について解説します。

 

 

介護サービスの種類と収益構造

 介護保険制度と会計

介護保険制度は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき設けられた制度で、国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的としています(介護保険法1 )。

この介護保険制度に関する費用を適正化するため、保健医療サービス又は福祉サービスを提供する事業者に対しては、法令・通知により介護保険事業に係る会計を区分して経理し、明確にすることが求められています。

 

 

 介護保険制度の仕組み

介護保険制度の仕組みは[図表1 ]のようになっています。

[図表1 ]の①~⑬の矢印が表している内容は以下のとおりです。

① 介護保険料の支払

被保険者は介護保険料を支払い又は徴収されます。

※ 「被保険者」(介護保険法9 )

    • 第1 号被保険者:市町村内に住所を有する65歳以上の者
    • 第2 号被保険者:市町村内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者

 

② 施設又は事業者の指定

都道府県知事は介護保険の施設又は事業者の申請に基づき指定を行います(介護保険法70、78の2 、79、86、94、115の2 、115の12、115の22)。

※ 「介護保険施設」(介護保険法8 ㉕、旧介護保険法8 ㉖)

指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護療養型医療施設。

※ 地域密着型サービスについては、市町村長が指定を行います。

 

③ 認定申請

介護保険給付を受けるための要介護又は要支援の認定を申請します(介護保険法27、32)。

※ ただし第2 号被保険者は、特定疾病(初老期における認知症など)が原因である者に限り、認定を受けることができます。

 

④ 認 定

市町村の認定審査会は申請があった被保険者につき、調査票及び主治医意見書に基づき、要介護、要支援の該当、要介護区分について審査及び判定し、その結果により市町村は要介護又は要支援の認定をします(介護保険法27、32)。

※ 認定の有効期間は、原則として6 ヶ月(月の初日以外は認定の効力の生じた日からその月の末日までを加算)です(介護保険法施行規則38、52)。

※ 認定調査は、原則として市町村が自ら行うか、指定市町村事務受託法人に委託されます(介護保険法24の2 )。

 

⑤ 契 約

重要事項説明書に基づき施設又は事業者との契約を行います。

 

⑥ サービス提供

契約に基づき介護保険施設に入所し、又は居宅サービス、介護予防サービス、地域密着型サービス若しくは地域密着型介護予防サービスを受けます(介護保険法8 、8 の2 )。

※ 「支給限度額(支給限度基準額)」要介護区分又は要支援区分ごとに、居宅サービス(特定施設入居者生活介護及び認知症対応型共同生活介護を除きます。)では1 ヶ月単位で利用できる単位の限度額(介護保険法43、44、45、55、56、57)

 

⑦ 利用者負担の支払

サービスに応じた介護報酬の10%~30%を原則として施設又は事業者に支払います。ただし、生活保護の適用者のような介護扶助のため負担がない又は軽減される場合があります。

 

⑧ 報酬の請求―代理受領

法定代理受領に基づき原則介護報酬の90%~70%を国保連に請求します(介護保険法41、42の2 、46、48、53、54の2 、58)。

※ 「法定代理受領(現物給付)」指定居宅サービス及び指定介護予防サービス(地域密着型サービスを含み、一部のサービスを除きます。)が法定代理受領となるのはケアプランに基づいて提供された場合に限ります。法定代理受領にならない場合は一旦利用者が報酬の全額を事業者に支払い、後日市町村に介護給付費を請求します(償還払い)。

※ ケアプラン(居宅サービス計画又は介護予防サービス計画)指定居宅介護支援事業者又は指定介護支援事業者に作成してもらう、毎月の居宅サービス又は介護予防サービスを受けるための計画です。指定居宅介護支援事業者は報酬の全額を法定代理受領として国保連に請求します(介護保険法46、58)。

 

⑨ 報酬の請求

国保連が審査の上、各市町村に介護給付費の支払を請求します(介護保険法41、42の2 、46、48、53、54の2 、58、176)。

 

⑩ 報酬の支払

各市町村が国保連に介護給付費を支払います。

 

⑪ 報酬の支払

国保連が施設又は事業者に介護給付費を支払います(介護保険法176)。

 

⑫ 国の負担

国が給付費の20%又は15%、調整交付金及び介護予防・日常生活支援総合事業に要する費用の額を市町村に対して交付します(介護保険法121、122、122の2 、127)。

 

⑬ 都道府県の負担

都道府県が給付費及び介護予防事業の費用の12.5%又は17.5%並びに介護予防・日常生活支援総合事業に要する費用の額の12.5%を市町村に対して交付します(介護保険法123)。

 

 

 

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株式会社オフィスイーケア代表取締役田中正明

1960年、兵庫県生まれ。
1992年、税理士試験合格。
1993年、税理士登録。
1998年、神戸にて税理士事務所開業。 2010年、行政書士登録。
現在、TKC 近畿兵庫会会員。

» HP:https://www.estanaka-zeirishi.jp/

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