ふるさと納税。いくらまでならお得なの?
<3分で読める税金の話>
2020年11月4日
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年末が近づいてくると、ふるさと納税はいくらまでならお得なの?という税理士泣かせの質問が増えるのですが、こちらは「いくらまでなら自己負担2,000円までの寄附なのか」という意味だと思われます。
正確な返答としては「わからない」です。なぜなら、今年の所得がわからないのですから、税理士にだってわからないのです。特に、今年の所得は新型コロナウイルス感染症の影響で所得の増減が激しく、予想も難しいところ。そのため、以下の部分は所得の予想が正しいものとしてお読みください。
自己負担2,000円での寄附金上限額はこの式で計算できます。計算には今年の所得税率と個人住民税所得割額が必要となります。
なぜ上記の計算式で寄附金上限額が計算できるのでしょうか。寄附金控除額は以下の額となります。
Ⅰ 所得税から控除される額
(寄附金額-2,000円)×(所得税率×復興特別所得税率102.1%)
Ⅱ 住民税から控除される額(基本控除分)
(寄附金額-2,000円)×10%
Ⅲ 住民税から控除される額(特例控除分)
(地方公共団体に対する寄附金-2,000円)×(90%-所得税率×復興特別所得税率102.1%)
上記にはそれぞれ、以下の上限があります。
① 所得税の寄附金上限額:総所得金額等の40%
② 住民税(基本控除分)の寄附金上限額:総所得金額等の30%
③ 住民税(特例控除分)の寄附金控除限度額:住民税所得割額*の20%
*住民税所得割額は、課税総所得金額×10%-調整控除額
住民税所得割額を計算する際に使用する課税総所得金額は、生命保険料・地震保険料控除や、配偶者控除、基礎控除などの人的控除の額は所得税の控除額よりも小さくなっていますのでご注意ください。
調整控除は所得税と住民税の人的控除の差に基づく負担増の減額措置であり、計算方法は省略しますが、たいていの方が2,500円程度となります。
ふるさと納税は、寄附した金額から2,000円を差し引いた額に所得税率と住民税率(一律10%)分をはみ出た分であっても、Ⅲにより控除が受けられることがわかります。
しかしながら、Ⅲには③の上限があります。①と②と③を比較すると、①と②は総所得金額等で③のみが税額の20%ですから、③の限度額が一番小さいことがわかります。③の限度額フルまで寄附すれば、自己負担額2,000円でふるさと納税ができることになります。
給与収入が500万円、控除は基礎控除のみで考えてみましょう。
給与所得控除後の所得金額356万円-基礎控除48万円=課税総所得金額308万円
所得税率(復興税あわせて)10.21%
住民税所得割額=給与所得控除後の所得金額356万円-基礎控除43万円=課税総所得金額313万円×10%-2,500円(調整控除)=310,500円
③の上限310,500円×20%=62,100円
Ⅲは所得税と住民税の基本控除分で引ききれない分を拾ってくれます。上記の例では100%-10%-10.21%=79.79%となり、62,100円(③の上限)を79.79%で割り返し2,000円を加算すると79,829円となります。
上記のシミュレーションでは基礎控除以外の所得控除を考慮していませんので、給与所得者の実際の上限額はこれよりも低くなると思われます。
大変長くなりましたがいかがでしょうか。冒頭でも申し上げました通り、正確な所得がわからないといくらが上限なのかはわかりません。そのため、どうしても自己負担額が2,000円を超えたくないのであれば、少し控えめにしておく方がよさそうです。
次回は、ふるさと納税の注意点などをお伝えいたします。
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