印税や契約金で税額が多額に!何か手立てはないの?【平均課税】
<3分で読める税金の話>

2021年2月18日

 

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不動産の貸付などにより権利金や頭金を一時に受け取ったり、スポーツ選手などが契約金を受け取った場合、また、原稿料や作曲料などが入った場合、その年だけ所得が大きくなります。このようなときに「平均課税」を適用することで税負担を軽減することができます。

 

■平均課税が適用できるケース

事業所得や不動産所得、雑所得のうち、年によって所得の変動が激しいものが平均課税の対象となります。例えば、漁業を営む人が今年はたまたま大漁であった場合や、印税や原稿料、作曲料(変動所得)、スポーツ選手やファッションモデルが専属契約を結ぶときの契約金(臨時所得)などがあります。

 

■なぜ平均課税があるの?

ある作曲家が数年かけて作り上げた曲が大ヒットした場合、巨額の印税が入ることになります。その曲に対してかけた労力は数年にわたるにもかかわらず、印税は発売した年の所得であり、その所得に対して累進課税(所得が大きいと高い税率となる)を課すのは酷であろうというわけです。漁業の場合、今年はたまたま大漁であっても来年も大漁とは限らず、所得の変動が大きい業種です。こちらも、その大漁である年に累進課税での課税は不適当といえるでしょう。スポーツ選手などの契約金は、今後数年にわたる専属契約の対価とも考えられますので、作曲家と同様に契約金が発生した年に累進税率で課税されるのは不適当といえます。

 

■平均課税は住民税にはない

平均課税は、収入のあった年に課税するという所得税の計算上の要請のもと、大きく変動する所得に対しては累進課税を緩和することで折り合いをつけたものということができます。そのため、一定の税率(10%)を採用している住民税においては平均課税の適用はありません。

 

■平均課税を適用するための条件

変動所得は毎年それなりに発生することもあるでしょうから、過去の変動所得と比較します。今年の変動所得が過去2年の変動所得の平均を超えていれば、変動所得と臨時所得の合計が本年度の総所得金額の20%以上である場合、平均課税を適用できます。

反対に、今年の変動所得が過去2年の変動所得の平均以下の場合、変動所得は平均課税の計算対象とならず、本年の臨時所得の金額が総所得金額の20%以上である場合、平均課税を適用することができます。

 

■平均課税の計算

平均課税の計算は二段階になります。まず、変動所得(過去2年に変動所得がある場合、それらの合計額の2分の1の額を超える部分の金額)と臨時所得の1/5とその他の所得と合算して調整所得金額を求めます。調整所得金額に所得税の税率表を適用し、調整所得金額に対する税額を算出します。

次に、課税総所得金額から調整所得金額を差し引き、変動所得と臨時所得の4/5部分を算出し、それに対しては上記で算出した(調整所得金額に対する税額)/(調整所得金額)を掛けて税額を算出し、これらを合計した額が税額となります。

 

(1) 調整所得金額に対する税額
{(課税総所得金額)—(平均課税対象金額)×(4/5)}=調整所得金額
(課税総所得金額が平均課税対象金額以下であるときは課税総所得金額の5分の1相当額とされる。)
調整所得金額に税率を適用して求めた税額=調整所得金額に対する税額

(2) 特別所得金額に対する税額
(課税総所得金額)—(調整所得金額)=特別所得金額
(特別所得金額)×{(調整所得金額に対する税額)/(調整所得金額)}=特別所得金額に対する税額

(3) (1)+(2)=その年の課税総所得金額に対する所得税額

 

(注) 平均課税対象金額とは、変動所得の金額(前年分又は前々年分の変動所得の金額がある場合は、その年分の変動所得の金額が前年分及び前々年分の変動所得の金額の合計額の2分の1を超える場合のその超える部分の金額)と臨時所得の金額との合計額をいう。

 

■最後に

平均課税の計算方法は、平均課税対象所得が1/5であると仮定して他の所得と合算して税額を計算し、その仮定の所得と税額の割合で残りの4/5に対応する税額を出すという面白い計算方法となっています。申告にあたっては「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」を添付しますが、こちらの記入をしてみると、平均課税の計算の仕組みがよくわかるようになっています。ぜひ一度手書きで記入してみてくださいね。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/pdf/011.pdf

 

 

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税理士高山 弥生

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