インボイスをもらえない取引。仕入税額控除はできないの?
<3分で読める税金の話>

2021年8月17日

 

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インボイス制度が開始すると、原則として適格請求書発行事業者から適格請求書を受け取った場合のみ仕入税額控除が可能となり、適格請求書を受け取らなかった場合は仕入税額控除はできなくなります。適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者として税務署で登録を受けた課税事業者となりますので、免税事業者からの仕入れは仕入税額控除ができなくなる、ということは以前にお伝えした通りです。

とはいうものの、現実的に考えて公共交通機関の3万円未満の旅客の運送や、自動販売機及び自動サービス機による販売の場合、適格請求書を受け取ることはできないでしょう。郵便・貨物サービスで郵便ポストにより差し出されたものも同様です。仕入税額控除はどうなるのでしょうか?

 

 

■適格請求書がなくても仕入税額控除が認められる取引

インボイス制度がスタート後も、以下の取引は適格請求書の保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められることになっています。

① 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引
③ 古物営業(中古車販売業はこちらに該当します。)を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
④ 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得
⑤ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入
⑥ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源又は再生部品の購入
⑦ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
⑧ 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

 

この場合、帳簿の記載事項に関し、通常必要な記載事項に加え、次の事項を追加する必要があります(太字が追加事項)。

【帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿の記載事項】

A 課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地
B 課税仕入れを行った年月日
C 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
D 課税仕入れに係る支払対価の額
E 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨

 

 

■記載がなくともよい取引

Aの仕入れの相手方の住所又は所在地ですが、以下の場合は帳簿に記載する必要はありません。

イ  適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送を行った交通機関名
ロ  適格請求書の交付義務が免除される郵便役務の提供について、その郵便役務の提供を行った者
ハ  課税仕入れに該当する出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)を支払った場合の当該出張旅費等を受領した従業員等

 

 

■各業法に定められた台帳に記載があれば帳簿に記載しなくてよい取引

③から⑤に係る課税仕入れについては、古物営業法、質屋営業法又は宅地建物取引業法により業務に関する帳簿(古物台帳等)等へ「相手方の氏名及び住所」を記載することとされており、業務に関する帳簿(古物台帳等)等へ記載がある場合、仕入れの相手方の住所又は所在地を帳簿に記載する必要はありません。

⑥に係る課税仕入れについては、事業者以外の者から受けるものに限り仕入れの相手方の住所又は所在地を記載が必要です。

 

具体的な内容の記載は

Eの帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨の記載としては、以下のような記載をすることになります。

①に該当する場合……3万円未満の鉄道料金
②に該当する場合……入場券等

 

原則があれば例外がある、という税法にはよくあるパターンの典型となりそうですが、公共交通機関で適格請求書の発行が義務付けられたら駅の改札は大混乱でしょうし、一般消費者からの仕入れにおいて仕入税額控除が認められないとすると、中古車や中古住宅は大打撃となり、市場の流通にも多大なる影響が出ることも予想されます。業界のロビー活動の賜物なのかもしれませんが、法の実行可能性、利便性などを考えると、このようなところに落ち着くのかな、と思われます。

 

 

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税理士高山 弥生

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