インボイス制度と事業者免税点制度
<3分で読める税金の話>

2022年3月16日

 

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■納税のあるところに控除あり インボイス制度スタート

令和5年10月よりインボイス制度がスタートします。インボイス制度の下では免税事業者からの仕入れは仕入税額控除ができません。経過措置として、免税事業者からの仕入れはインボイス制度導入後3年間80%、その後3年間50%の控除できますが、その後は控除がなくなります。

 

 

■インボイス制度への対応を考える必要がある

課税事業者としては、課税事業者から仕入れて仕入税額控除するのが合理的な経済行動でしょうから、取引先が課税事業者か免税事業者なのかをリサーチして、免税事業者であるなら対応策を考える必要がありますし、免税事業者は、市場から排除されないために課税事業者となるのか、経過措置があるから様子見とするのか考えなくてはなりません。

 

 

■消費税って何?

課税事業者となる免税事業者にとっては納税負担と事務負担の増加で泣きっ面に蜂状態ですが、免税事業者が消費者から「預かった」消費税を納税せずにポケットに入れてしまっているのは益税だと感じている人も少なくありませんので、納税があるところに控除があるインボイス制度は消費者として受け入れやすいといえるでしょう。

しかしながら、消費税の納税義務者は事業者とされています。所得税の源泉徴収義務のように、納税義務者が事業者以外に存在し、事業者は納税義務のみを負うというものではありません。東京地裁判決平成2年3月26日判決では、「消費税の納税義務者が消費者、徴収義務者が事業者であるとは解されない。したがって、消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者に対する関係で負うものではない。」と、消費税は預り金ではなく対価であるとしています。

 

 

■インボイス制度によりねじれが解消

判決には続きがあり、「もっとも、消費税の実質的負担者が消費者であることは争いのないところであるから、右義務がないとしても、消費税分として得た金員は、原則として国庫にすべて納付されることが望ましいことは否定できない。」とされています。税を免除されている免税事業者が請求書に記載する「消費税相当額」は対価であり、記載することに法令上罰則はないとはいえ、やはり消費者の感情としては判決と同様でしょう。そこに「益税」という批判が生まれます。

インボイス制度においては、適格請求書と誤認される恐れのある請求書を発行した場合、罰則があります。主として免税事業者が登録番号を記載することが想定されていると思われ、消費税相当額を記載してはいけないと明確に規定されてはないのですが、おそらく誤認されないように免税事業者の発行する請求書には消費税相当額を記載しない形式が主流となり、免税事業者は「益税」の誹りを受けることはなくなっていくのではないでしょうか。

 

 

■疑問が残る公平性

このようにインボイス制度はある意味納得のいく制度ではありますが、公平性に関しては疑問が残ります。インボイス制度は小規模事業者の事務負担に配慮する目的で設けられたはずの事業者免税点制度を乗り越えて課税事業者を増やすことになります。免税事業者から課税事業者になるのはBtoBの免税事業者であり、BtoCの場合は免税事業者を維持し続けるため、事業者免税点制度の公平性が保たれないことになり、日税連の建議書においては、「仕入税額控除方式(インボイス方式を含む)及び免税点制度等の見直しを含めた消費税のあり方について、抜本的に再検討すべきである」とされています。

 

 

■今後のカギはシステムと知識

税理士としては、事業者の事務負担の増加が心配です。インボイス(適格請求書)を受け取った都度、適格請求書等発行事業者かどうか確認しなくてはならない、区分記載請求書(免税事業者が発行する請求書)の場合は経過措置適用の旨帳簿に記載が必要であるなど、軽減税率で負担が増えている経理処理がさらに煩雑となり、人の目と手だけで処理するのは限界かもしれません。今は様々な便利機能が搭載された会計システムがありますから、そのような会計システムを選ぶことも一案でしょう。

いくら技術が発達しシステムが高度になっても、最初の設定や、その処理が正しいかどうか確認するのは人間ですので、知識を身につけることも大切です。令和5年10月スタートに向けて、書籍やセミナーなど、さまざまな情報が出回るようになってきました。ぜひ、インボイスという単語を見かけたら、少し立ち止まってみてください。私もたくさんの方に「インボイス」を知っていただくために「消費税&インボイスがざっくりわかる本」を4月に出版します。いつもの会話形式ですので、ぜひ気負わずにお手に取っていただけたらと思います。

 

 

※一部誤解をまねく表現があったため、コラムのタイトルおよび内容を加筆・修正いたしました。(2022年3月28日)

 

 

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税理士高山 弥生

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