【第11回】M&Aについて

2023年3月21日

 

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銀行出身の中小企業診断士である事業再生専門家の視点から、事業再生の状態に陥らないために、「転ばぬ先の杖」として知っておいていただきたいことをお伝えしていきます。今回は、事業承継(再生、後継者不足)におけるM&Aの活用についてお話いたします。

 

なぜ今、M&Aなのか


中小企業・小規模事業者の経営者のうち、65歳以上の経営者は約4割を占め、今後数年で多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えるとみられています。

経営者の高齢化が進む一方で、親族内に後継者がおらず、後継者不在を理由に廃業を選択する企業が増えています。親族内承継の減少に伴い、従業員承継やM&Aによる第三者承継などの親族外承継も増加しており、事業承継の在り方も時代とともに変化しています。

 

M&Aのメリット


中小企業のM&Aについて、売り手、買い手のそれぞれの立場から、メリットを下記に整理します。

 

(売り手のメリット)

・後継者問題の解決

・創業者利益の確保 ※投資した金額‐株式売却金額⇒IPOと同様

・会社の存続、社員の継続雇用

・連帯保証の解除

 

(買い手のメリット)

・時間を買う⇒早い

・技術、ノウハウの取得⇒安い ※事業を一から立ち上げるより、トータルコストは安い

・市場シェアの拡大⇒安全 ※新規事業リスクの回避

 

事業再生におけるM&A


事業再生を必要とする企業は資金力、営業力、信用力などの経営資源が不足しています。それらを補い事業を再スタートさせるため、スポンサー企業による再生型М&Aがあります。

場合によっては譲渡側経営者がそのまま社長職を継続します。また、個人保証についても「経営者保証ガイドライン」に準じて処理(自己破産しなくてよい)できるケースがあります。

 

【スポンサー企業のM&Aによる事業再生の流れ】

(1)再生計画の検討:事業DD、財務DDを基にM&Aによる再生計画の有効性を検討

(2)スポンサー企業の選定:最適なスポンサー企業の選定

(3)スポンサー企業との交渉:事業DD、財務DDを基に買収価格などを交渉

(4)関係金融機関等との調整:事業再生のために、必要な金融支援を調整

(5)スポンサー企業による買収:譲渡側経営者の個人保証は「経営者保証ガイドライン」に準じて処理(自己破産しなくてよい)

 

REVIC(地域経済活性化支援機構)特定支援制度の活用


上記のように、スポンサー企業を探し出し、関係金融機関と債権放棄などの支援を求めながら調整を図って行くのは非常に時間が掛かりますし、交渉も難航します。

そのような時は中小企業の事業再生を目的とし制定されたREVIC特定支援制度などの枠組みを活用することをお薦めします。

REVIC特定支援制度は、数千万円の売上や負債規模からが対象です。専門家による資産査定や弁済計画を基に、特定支援の可否を判断します。特定支援を受けることができれば、国が制定したスキームでREVICが金融調整を進めてくれるため、案件の進捗も比較的スムーズです。

 

まとめ


事業再生において、スポンサー企業によるM&Aは非常に有効です。しかしながらM&Aを成功させるためには、スポンサー企業との交渉や関係金融機関との金融調整等々、相当に高い障壁が幾つもあります。企業独自で成就するには非常に困難な経営施策と言えます。また、自社の売却という精神的な引け目から、中々、声に出しづらいこともあり、関心はあるが具体的に進まないことも多いと思います。事業再生への対策は早ければ早いほど、成果が出ることが多いです。まずは身近で信頼できる専門家に相談をしてみて下さい。

 

 

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中小企業診断士前田節(まえだ とも)

株式会社ジャストコンサルティング 代表取締役。
中小企業支援をメインとした経営コンサルティング会社「株式会社ジャストコンサルティング」を2014年設立。コンサルタント12名を率い、専門性とチームワークを活かした実行型支援を行っている。

» 会社URL   https://www.just-c.net
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