正社員の副業は事業所得?雑所得?
<3分で読める税金の話>

2020年1月9日

 

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「働き方改革」に伴い、政府が副業・兼業の普及促進をしている昨今、私のところにもサラリーマンだけれど別に個人で収入を得ている場合、申告しなくちゃいけないの? 事業所得か雑所得、どっちで申告するの? という質問がチラホラ来ています。

 

■副業は20万円以内なら申告不要は半分ウソ

まずは、申告義務があるのかをみてみましょう。以下に当てはまる方は確定申告が必要です。

●給与を2か所以上から受けており、年末調整されていない給与額と、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える人
●給与を1か所から受けており、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える人

上記に当てはまらない場合は所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。そのため、副業は所得が20万円以内なら申告不要というのは半分間違っているといえます。所得税は小額不追及という考え方がありますが、住民税にはありませんので注意してください。給与所得者の方がメインの勤め先以外から何らかの所得を得た場合、申告は必要であると考えていただいたほうがよいでしょう。

 

■事業所得は雑所得よりお得

副業が事業所得に該当する場合、以下の点で雑所得より有利となります。
●損益通算(給与所得など黒字の所得と事業所得など赤字の所得を差引可能)

青色申告承認申請書を提出することによって、さらに以下の点で雑所得より有利となります。
●青色申告特別控除(記帳、電子申告など要件を満たすと所得から65万円控除可能)
●損失の繰越控除(損益通算後の赤字を翌年以降3年繰越可能)
●青色事業専従者給与(家族への給与が必要経費となる)
●30万円未満の減価償却資産の特例(30万円未満は取得年の必要経費に算入可能)

 

■事業所得に該当するものはどんなもの?

雑所得よりも事業所得で申告したほうが税金面では有利ですので、副業を事業所得として申告したいところですが、副業は事業所得になるのでしょうか。
まず、事業所得が何たるかを考える必要があります。これには昭和56年4月24日最高裁判決という重要判決があります。この判決は弁護士業務が給与所得か事業所得かで争われたものですが、事業所得を次の通り定義しています。

「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得(太字筆者)」

 

■副業は何所得なのか?

事業所得か雑所得かの判断に参考になる判決では、大阪地裁平成23年12月16日判決があります。医師がサイドビジネスとして10人程度の顧客に服飾レンタルサービスを行っていたのですが、裁判所の判断としては医師業の傍らにわずかな時間と労力により、特段の人的設備や物的設備を備えることなく行われたものであり、事業としての社会的客観性を有しているとは認めがたく、自己の服飾費を経費にすることで節税効果を狙っていたとみるのが自然だとして事業所得ではないと判断しました。

また、裁決事例となりますが(平成26年9月1日裁決)、大学教授が週4日大学で講義し、そのほかの時間で著述や講演を行っていたものが事業所得か雑所得かで争われた事例があります。

国税不服審判所は、ある所得が事業所得に当たるか否かを判断するに当たっては、当該所得が社会通念上『事業』といえる程度の規模・態様においてなされる営利性、有償性、反復継続性をもった活動によって生じる所得か否かによって判断すべきであり、この場合において『事業』といえる程度の規模・態様においてなされる活動といえるかどうかは、自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無、その者の精神的肉体的労務の投入の有無、人的・物的設備の有無、その者の職業・経験及び社会的地位等を総合的に勘案して判断すべきであるとし、自己の計算と危険において簡易ながら一定の物的設備を整え執筆や講演等の活動を行ったと認めたものの、他方で、その企画遂行性の程度は仮にあったとしても乏しいものにとどまっており、本件業務に投入している精神的肉体的労務も限定的なものであり、さらにM大学から生活を営むのに十分な給与収入を得ていたことからすれば、本件業務は、社会通念上「事業」といえる規模・態様においてなされた活動とまではいえないとして、雑所得に該当すると判断しました。

これらの判例・裁決から考えると、副業が事業所得としてみなされるには継続的に営む業務で利益が出ていること、副業といえども社会的に認知されていること、片手間とはみられないほどの時間と労力をかけていることが必要といえそうです。正社員が土日の空いている時間で行っている副業は雑所得と判断される可能性が高いのではないでしょうか。正社員の方が副業を事業所得として申告するかどうかは、必ず税理士にご相談いただきたいと思います。

 

 

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税理士高山 弥生

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