【令和5年(2023年)税制改正】結婚・子育て、教育資金贈与の非課税措置見直しへ
[ベンチャーサポート相続税理士法人 コラム]

【令和5年(2023年)税制改正】結婚・子育て、教育資金贈与の非課税措置見直しへ

 

この記事でわかること
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✅ 結婚・子育て資金贈与の非課税措置が税制改正でどのように変わるのか
✅ 教育資金贈与の非課税措置も税制改正で見直しが行われる
✅ 結婚・子育て資金贈与と教育資金贈与を併用することは可能なのか
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2023(令和5)年3月28日に、令和5年度税制改正法案が成立し、贈与税の非課税措置について一部見直しが行われました。
結婚・子育て資金贈与や教育資金贈与などの期限を迎える特例措置が一部見直しの上で、その期限が延長されます。
具体的にどのような改正が行われたのか、その内容を確認しておきましょう。

 

 

 

■結婚・子育て資金贈与の非課税措置の見直し


「結婚・子育て資金贈与」とは、2015年4月1日から設けられた、贈与税に関する特例措置です。
制度が設けられた時から年数が経過する中で、何度か手直しが行われ、現在の形となっています。

 

■結婚・子育て資金贈与の非課税措置の概要

結婚・子育て資金贈与の概要は、下記のとおりです。

●受贈者は18歳以上50歳未満である
●贈与者は受贈者の直系尊属(父母や祖父母など)である
●非課税で贈与できる金額は最大1,000万円である
●受贈者は贈与された資金を結婚・子育てのために使うことができる
●受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用できない

 

結婚・子育て資金のうち、結婚資金として利用できる金額は、最大300万円までとなっています。
結婚式の挙式費用や披露宴の費用の他、結婚にあたり家賃や敷金などの新居にかかる費用、転居にかかる費用も含まれます。
また、子育て資金には子どもの医療費や幼稚園・保育園の保育料の他、不妊治療や分娩にかかる費用も含まれます。

ただ単に贈与者から受贈者に金銭を渡せばいいというものではなく、金融機関で手続きを行う必要があります。
結婚費用や子育て費用に該当する支出を行った後に、その領収書を確認してもらい、払出しを受ける方法と、支出前に払出し・支出後に払出しどちらも可能な方法のどちらにするかは口座開設時に選択します。

なお、贈与者が亡くなった時には、贈与されたものの使っていない残額を相続により取得したこととなります。
この時、孫が受贈者になっていると、相続税額の2割加算の規定が適用され、相続税の負担が大きくなることがあります。

また、受贈者が50歳に達した時に残額がある場合は、その時点で贈与があったものとされます
残額が基礎控除額を上回るような場合は、贈与税の申告をする必要があり、贈与税を納付しなければなりません。

 

 

■令和5年度税制改正のポイント

令和5年度税制改正により、贈与者が50歳に達した時などの残額に対して課される贈与税の計算について改正が行われました。
贈与者が50歳に達した時に贈与された資金の残額があると、その残額は贈与税の計算対象となります。
結婚・子育て資金贈与の制度では、受贈者は直系尊属から贈与を受けた成人であることから、特例贈与財産になるはずです。
特例贈与財産に該当すると税率が低くなり、贈与税の金額は少なくなりますが、それでは節税目的の贈与が増えるおそれがあります。

そこで、受贈者が50歳に達した時の残額については、一般贈与財産として贈与税の計算を行うこととされました。
この改正は、2023(令和5)年4月1日以後の結婚・子育て資金贈与について適用されます。
また、結婚・子育て資金贈与の制度は、2025(令和7)年3月31日まで、適用期間が2年間延長されます。

 

 

■教育資金贈与の非課税措置の見直し


「教育資金贈与」の制度は、2013年4月1日から設けられた、贈与税の非課税措置です。
「結婚・子育て資金贈与」と同じく、これまでに制度の見直しを受けながら、現在の形になっています。

 

■教育資金贈与の非課税措置の概要

教育資金贈与の概要は、下記のとおりです。

●受贈者は30歳未満である
●贈与者は受贈者の直系尊属(父母や祖父母など)である
●非課税で贈与できる金額は最大1,500万円である
●受贈者は贈与された資金を教育資金として使うことができる
●受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用できない

 

教育資金となるものには、以下の費用が含まれます。

●学校に対して支払う入学金や授業料
●保育料
●学用品の購入費
●給食費
●修学旅行などの費用

 

また、学校以外に支払うものでも教育資金として認められるものがあります。
学習塾やスポーツ、ピアノなどの習い事の月謝も含まれます。
また、通学定期券代や留学にための渡航費用なども、この教育資金贈与の教育資金に含まれます。
ただ、学校以外に支払う教育資金については、その上限が500万円とされています。

結婚・子育て資金贈与と同じく、教育資金贈与の適用を受けるためには、金融機関で手続きしなければなりません。
一度支払った後に受け取った領収書を金融機関に持っていき、払出しを受けるのか、支出前に払出し・支出後に払出しどちらも可能な方法にするのか口座開設時に選択するのも同じです。

贈与者が亡くなった時に贈与されたものの使っていない残額があると、その残額は相続により取得したこととなります。
ただし、受贈者が下記のいずれかに該当する場合は、相続税の計算の対象外となります。

23歳未満
学校に在学している
●教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している

 

孫が受贈者になっている時は、相続税額の2割加算の規定が適用され、相続税の負担が大きくなることがあります。

また受贈者が30歳に達した場合に残額があると、その残額は贈与があったものとされます
他に贈与された財産があれば、それらと一緒に贈与税の計算を行い、申告・納税しなければなりません。

 

 

■令和5年度税制改正のポイント

令和5年度税制改正では、教育資金贈与について、大きく2点の改正が行われました。

1つめは、贈与者が亡くなった時の残額に対する相続税の対象が拡大する点です。
現在は、受贈者が23歳未満、学校在学中または教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受けている場合、相続税の対象になりません。
しかし、受贈者がこの条件に該当しても、贈与者の相続財産の課税価格が5億円を超えると、残額も課税対象となります。

2つ目は、受贈者が30歳になるなど、残額が発生した場合の贈与税の計算方法についてです。
結婚・子育て資金の贈与と同じく、この残額についてはすべて一般贈与財産として贈与税の計算を行うこととされます。

これらの改正は、2023年4月1日以後に行われた教育資金贈与について適用されます。
また、教育資金贈与の制度は、2026(令和8)年3月31日まで、適用期間が3年間延長されます。

 

 

■結婚・子育て資金贈与と教育資金贈与は併用できる?


結婚・子育て資金贈与と教育資金贈与は、ともに多額の贈与を非課税で行うことができる制度です。
そこで、この2つの制度を併用すれば、さらに大きな効果があると考える方もいるでしょう。
この点については、贈与者の立場から見た場合、2つの制度を併用することはあります
一方、同一の受贈者が2つの制度を併用することは考えにくいでしょう。

結婚・子育て資金贈与の受贈者は18歳以上50歳未満となっており、ある程度の年齢となった子や孫が想定されます。
一方、教育資金贈与の受贈者は30歳未満となっているため、これから幼稚園や保育園、あるいは小学校に入る孫が想定されます。
両方を併用できる受贈者は18歳以上30歳未満となりますが、この年齢で教育資金の贈与を受けるケースは多くないと予測されます。

そこで、子には結婚・子育て資金贈与、孫には教育資金贈与が現実的だといえます。
また、上限金額まで贈与するのではなく、できるだけ残額が発生しないよう、適切な金額を贈与するようにしましょう。

 

 

■まとめ


結婚・子育て資金贈与と教育資金贈与は、それぞれ特定の目的に使う資金を、前もって贈与しておくものです。
資金の使途には制限がある上、使うことのできる期間が定められており、残額には贈与税がかかります。
今回の税制改正後は、残額に対する贈与税の計算はより高い税率を使って行うこととされ、通常の贈与より課税額が高くなってしまいます。
また、これらの特例で贈与した資金は本来、必要となったその都度渡せば贈与税はかかりません。
特例を利用する際は、その特色をよく理解し、できるだけ残額が出ないような金額を贈与するようにしましょう。

 

 

 

解説:古尾谷 裕昭(ふるおや ひろあき)
ベンチャーサポート相続税理士法人(相続サポートセンター) 代表税理士

東京税理士会 京橋支部所属(登録番号:104851)
1975年生まれ 東京都出身

明治学院大学卒業後、都内3箇所の税理士事務所勤務を経て、2006年に税理士資格取得、税理士事務所開業。
2012年にベンチャーサポート税理士法人と合併。
2016年に相続税専門部署を開設。
2017年にベンチャーサポート相続税理士法人設立。
相続専門の司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍するベンチャーサポートグループの中核を担う「ベンチャーサポート相続税理士法人」を代表税理士として率いている。

 

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