相続土地国庫帰属制度とは?適用要件・手続き・費用ついてわかりやすく解説
[ベンチャーサポート相続税理士法人 コラム]

相続土地国庫帰属制度とは?適用要件・手続き・費用ついてわかりやすく解説

 

この記事でわかること
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✅ 新たに設けられた相続土地国庫帰属制度とはどのような制度かわかる
✅ 相続土地国庫帰属制度のメリットとデメリットを知ることができる
✅ 相続土地国庫帰属制度の適用を受けるための要件を知ることができる
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相続が発生すると、被相続人が所有していたすべての財産は、原則として相続人が引き継がなければなりません。
ただ、被相続人が所有していた不動産の中には、相続人は誰も相続したくないと考えるようなものもあります。

そこで、誰も相続したくない土地を国に引き渡す「相続土地国庫帰属制度」という制度が新設されます。
どのような場合に制度を利用でき、そのメリットとデメリットは何かを確認していきましょう。

 

 

 

■「相続土地国庫帰属制度」とは


新たに設けられた相続土地国庫帰属制度とはどのような制度なのでしょうか。
ここでは、相続土地国庫帰属制度の概要や設立の経緯などを確認していきます。

 

 

■制度の概要

相続土地国庫帰属制度とは、相続財産となった土地のうち一定の要件を満たすものについて、国庫への帰属を認める制度です。

これまでは、被相続人が所有していた財産は、相続人が相続放棄しない限り、相続人がすべてを相続しなければなりませんでした。
土地を相続することができれば、ラッキーだと思う方もいるかもしれません。
しかし現実には、価値がほとんどない土地、遠く離れた場所にあって利用しない土地などが多くあります。
このような土地は、相続人の誰もが相続したくないと考え、遺産分割の時に大きな火種となってしまうことがあります。

また、相続人の誰かが相続したとしても、そのまま利用されずに放置されてしまうこともあります。
手入れがされないまま放置されると、雑草などで近隣の人の迷惑になるなど大きな問題となっていました。
そこで、相続したくない土地のうち一定のものについては、国庫への帰属が認められるようになりました。

 

 

■制度の設立に至った経緯

相続土地国庫帰属制度の創設と密接に関係しているのが、相続登記の義務化です。
相続により不動産を引き継いだ人は、相続人の名義に変更するための登記申請を行うこととされています。
しかし、これまで相続登記は義務化されていなかったため、亡くなった人が所有者として登記されたままである不動産が多く残っています。
相続登記がされずに放置された不動産は、後で大きな問題となることがあります。
そこで、相続登記を義務化し、必ず相続人の名義に変更しなければならないこととされました

相続登記が義務化されると、所有者不明の不動産は大幅に減少します。
ただ、相続したくない土地を相続することとなった場合、相続人としては新たな悩みの種となります。
そこで、相続しなくてもいいという選択肢として、相続土地国庫帰属制度が創設されました。

 

 

■制度が設立されたことの影響

相続登記が義務化されると、相続登記をせずに放置することはできないため、相続登記後もその不動産を管理していく必要があります。
しかし、相続した不動産を管理するためには、金銭的な負担が発生するなど相続人にとって簡単なことばかりではありません。

相続土地国庫帰属制度が創設されると、相続時に本当に相続すべきかどうかを検討することができます
その結果、相続しないという選択をすることも可能となります。

これまで、どうしても遺産を相続したくない場合は、相続放棄するしかありませんでした。
しかし今後は、相続放棄しなくても特定の財産だけ相続しないという選択肢が生まれ、より相続がスムーズに進む可能性があります。

 

 

■相続土地国庫帰属制度のメリット・デメリット


相続土地国庫帰属制度を利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
また逆に、相続土地国庫帰属制度にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。

 

 

■相続土地国庫帰属制度のメリット

相続土地国庫帰属制度のメリットは、土地を相続したくない場合に、その財産の引き取り手を探す必要がないことです。

これまでも、相続した土地をそのまま所有したくない場合には、売却することで手放すことはできました。
しかし、現実には買い手が見つからないこともあり、手放すのは簡単なことではありません。
相続土地国庫帰属制度を利用すれば、要件さえ満たせば国がその土地を引き取ってくれます。
そのため、引き取り手を探す手間がなくなります。

また、相続した土地が宅地の場合だけでなく、農地や山林であっても適用が受けられるのもメリットといえます。
通常は農地を手放そうとしても、農業委員会の許可が必要になるため、なかなか買い手を見つけることができません。
しかし、相続土地国庫帰属制度を利用すれば、国のものとなるため、買い手が限定されるという制約を受けることはありません

そして、相続土地国庫帰属制度を利用した場合に、要件を満たせば国に引き渡せることは相続人のメリットとなります。
土地を売却しようとする場合、売り手と買い手の間で様々な条件について交渉が行われます。
価格の条件を満たしても、引き渡し時期で合意が得られなければ、売買契約は成立しません。
これに対して、相続土地国庫帰属制度を利用した場合、要件を満たせば国に引き渡すことが可能となります

 

 

■相続土地国庫帰属制度のデメリット

相続土地国庫帰属制度のデメリットとなるのは、利用にあたって様々なお金がかかることです。
利用にあたっての費用については後ほど詳しく説明しますが、決して少ない金額ではないので、注意が必要です。

また、相続土地国庫帰属制度を利用する際に、国が審査を行うこととなりますが、その審査に時間がかかることもデメリットといえます。
この制度の対象は土地だけであることから、建物の取り壊しや登記手続きなども必要になります。

審査の内容や進め方はこれから明らかになりますが、慎重な審査が行われると考えられるため、時間がかかります。
場合によっては、審査だけで半年から1年程度の期間を要する可能性もあります。
そのため、すぐに土地を手放したい場合、あるいは確実に手放したい場合には、相続土地国庫帰属制度は向いていません。

 

 

■相続土地国庫帰属制度の適用要件


相続土地国庫帰属制度を利用するためには、様々な要件が定められており、そのすべてを満たす必要があります
どのような要件があるか、その内容を確認していきましょう。

 

 

■申請できる人

相続土地国庫帰属制度を利用できる人は、相続や遺贈により土地を取得した人です。
単独で相続した場合、共同で相続して共有財産となった場合のいずれも、申請を行うことができます。
ただ、共同で相続した場合は、その共有者全員で相続土地国庫帰属制度の申請を行う必要があります。

例えば、夫婦が1/2ずつ共有していた土地があり、夫が亡くなったために長男が夫の持分を相続するといったケースがあります。
この場合、相続した長男だけでなく、もともと所有者となっていた妻も相続土地国庫帰属制度を利用することができます。

なお、相続土地国庫帰属制度が開始となるのは令和5年4月27日ですが、これ以前に相続した土地も申請することができます。

 

 

■申請ができない土地(申請の段階で直ちに却下となる土地)

相続や遺贈により取得した土地には様々な状況のものがあり、そのすべてが帰属の対象となるわけではありません。
例えば、下記に該当する土地は申請ができず、申請の段階で直ちに却下となります。

・建物の存する土地

・担保権または使用および収益を目的とする権利が設定されている土地

・通路その他の他人による使用が予定される土地として、①~④が含まれる土地
①通路として利用されている土地
②墓地内の土地
③境内地
④水道用地、用悪水路、ため池として利用されている土地

・土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地

・境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地

 

■帰属の承認ができない土地(審査の段階で該当すると判断された場合に不承認となる土地)

また、下記に該当する土地は帰属の承認がされません。

・崖(勾配30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用または労力を要するもの

・土地の通常の管理または処分を阻害する工作物、車両または樹木その他の有体物が地上に存する土地

・除去しなければ土地の通常の管理または処分をすることができない有体物が地下に存する土地

・隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理または処分をすることができない土地

・その他、通常の管理または処分をするに当たり過分の費用または労力を要する土地

 

 

■相続土地国庫帰属制度の負担金・費用


相続土地国庫帰属制度を利用する場合、国に対して一定の費用を負担しなければなりません。
審査手数料」と「負担金」の2種類の費用が発生するため、その内容を確認しておきましょう。

 

■審査手数料

相続土地国庫帰属制度を利用するにあたって、その適用を受けられるかどうかの審査を受けなければなりません。
審査手数料の金額は、土地の地目や大きさに関係なく、土地一筆当たり14,000円となっています。
申請時に、申請書に審査手数料相当額の収入印紙を貼って納付します。

 

■負担金

負担金とは、土地の国庫への帰属の承認が決定した後に、10年分の土地管理費相当額として支払うものです。
国庫に帰属する場合、10年分の管理費は申請した人が負担しなければならないこととされています。

土地は「宅地」「農地」「森林」「その他」の4種類に区分され、この区分に応じて、負担金の金額は変わります。

宅地・田畑の場合、原則として面積に関わらず負担金の額は20万円とされていますが、以下の要件に該当する宅地・田畑は、面積によって負担金の額が変わりますので注意が必要です。
・都市計画法によって市街化区域または用途地域が指定されている地域内の土地
・農業振興地域の整備に関する法律によって定められた農用地区域内など一定の農地

森林の場合は、面積によって負担金の額が変わります
なお、「その他」(雑種地、原野等)も面積に関わらず、負担金の額は20万円となります。

負担金の金額は、国庫帰属の申請が承認された場合に納入告知書が送付されるため、その納入告知書を使って納付します。
負担金は通知が到達した翌日から30日以内に納付しなければなりません。

いずれの土地の申請においても、ある程度まとまった金額が必要となることに注意しましょう。

 

 

■相続土地国庫帰属制度の手続きの流れ


相続土地国庫帰属制度を利用するためには、どのような手続きをしなければならないのでしょうか。
その流れに沿って、順番に確認していきましょう。

 

 

①国に対する申請と審査手数料の納付

相続土地国庫帰属制度を利用しようとする人は、法務局で申請を行います
審査手数料分の収入印紙を貼付した申請書を法務局に提出します。

 

②法務局による書面審査と実地調査

申請が行われた土地について、まずは書面上での審査が行われます
書面上で要件を満たしていないと確認されれば、その時点で申請は却下されます。
書面上の問題がない場合は、法務局の担当者により実地調査が行われます。

 

③審査を経て承認・不承認の通知

書面審査と実地調査が行われた後、申請者に対して承認または不承認の通知が行われます。
承認通知には、負担金の通知もあわせて申請者に送られてきます。

 

④負担金の納付

前項のように申請が承認された場合、申請者に承認通知と負担金の納入告知書が送られてきます。
納入告知書が送られてきたら、通知が到達した翌日から30日以内に納付しなければなりません

 

 

■まとめ


これまで、相続したくない土地がある場合も相続人の誰かが相続しなければならず、大きな負担となっていました。
しかし、相続土地国庫帰属制度が創設されたことで、相続しないという選択肢が生まれたことは大きな意義があると言えるでしょう。
なお、相続土地国庫帰属制度を利用するためには、要件や手続きが明確に定められています。
その要件を満たすことが明らかな場合には、必要な手続きを行うようにしましょう。

 

 

 

解説:古尾谷 裕昭(ふるおや ひろあき)
ベンチャーサポート相続税理士法人(相続サポートセンター) 代表税理士

東京税理士会 京橋支部所属(登録番号:104851)
1975年生まれ 東京都出身

明治学院大学卒業後、都内3箇所の税理士事務所勤務を経て、2006年に税理士資格取得、税理士事務所開業。
2012年にベンチャーサポート税理士法人と合併。
2016年に相続税専門部署を開設。
2017年にベンチャーサポート相続税理士法人設立。
相続専門の司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍するベンチャーサポートグループの中核を担う「ベンチャーサポート相続税理士法人」を代表税理士として率いている。

 

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