タワーマンション節税は終わる?相続税評価額の見直しの内容・影響について
[ベンチャーサポート相続税理士法人 コラム]

タワーマンション節税は終わる?相続税評価額の見直しの内容・影響について

 

この記事でわかること
===============================
✅タワーマンションを利用した相続税の節税に税制改正が行われる内容がわかる
✅タワーマンション節税の仕組みを知ることができる
✅タワーマンション節税に対する税制改正への対策方法がわかる
===============================

 

東京都内をはじめとする都市部では、タワーマンションの販売が非常に好調といわれています。
実際に自分で住むために購入する人もいますが、それ以上に投資目的、あるいは節税目的で購入する人が多くいます。
しかし、タワーマンションを利用した節税については、2024年の通達改正により、一定の制約が設けられることとなりました。

タワーマンション節税とはどのようなものか、そして改正によりどのような影響があるのか、解説していきます。

 

 

■タワーマンション節税が終わる?変更点・内容は?


タワーマンションを購入すると税金を抑えることができ、節税効果があるといわれます。
また、タワーマンションだけでなく、通常のマンションを購入した場合でも、節税になることがあります。

しかし、この節税効果が薄れるような改正が2024年以降に行われます。
具体的にどのような改正内容となっているのか、確認していきましょう。

 

■タワーマンションの相続税評価額の見直し

タワーマンションを購入した人は、そのマンションの所有者となります。
マンションは建物と土地からなり、タワーマンションを所有したまま亡くなると、建物と土地が相続財産になります。

タワーマンションの売買価格は、市場価格をもとに決定されますが、マンション需要はここ数年、大きく上昇しているため、市場価格も大きく上昇しています。

一方、タワーマンションの建物や土地の相続税評価額も上昇していますが、市場価格のように急激な上昇はしていません。
そのため、タワーマンションが相続財産になった時に、市場価格と相続税評価額とが大きく乖離することとなります。

亡くなる前にタワーマンションを購入して相続財産になった場合、市場価格との乖離によって、その相続税評価額は購入価格より低くなります。
一般的に建物や土地の相続税評価額は、市場価格より低くなるものですが、タワーマンションはその乖離が非常に大きくなることが予測されます。

そこで、その乖離が大きくなりすぎないように、相続税評価額の補正が行われることとされています。

 

■評価水準60%を下回らないようにする見込み

前述したように、タワーマンションの相続税評価額が低くなりすぎないよう、補正が行われる見込みとなっています。
この調整計算は、「相続税評価額÷市場価格」で計算される評価水準の割合が、60%を下回らないように補正される内容となっています。

 

評価水準が60%を下回るケースの節税効果とは

評価水準が60%を下回らないように補正されるということは、これまでは60%を下回るケースが多くあったということです。

仮に評価水準が40%となっている市場価格5億円の物件がある場合、相続税評価額は2億円となります。
この場合、もしタワーマンションを購入していなければ、5億円の現金が相続財産になっていたはずです。
しかし、タワーマンションを購入したことで相続税評価額が3億円低くなり、その分課税額が抑えられます。
しかし、評価水準が60%を下回らないように補正されると、節税効果は薄まると見込まれます。

 

 

タワーマンション節税の仕組みとは


タワーマンションを節税に利用できると耳にしたことがあるものの、実際にどのような仕組みで、どのような税金が節税できるのか、詳しくはわからない方も多いと思います。

ここでは、タワーマンション節税の仕組みについて詳しくご紹介します。

 

■建物・土地は相続税評価額で評価される

建物や土地を保有している人が亡くなった場合、保有していた不動産は相続税評価額によって相続税の計算を行います。
不動産の相続税評価額は、通常、不動産の市場価格より低い金額になります。
目安として、土地の相続税評価額は土地の市場価格の約8割になるといわれます。

土地の相続税評価額は、国税庁の定める路線価または固定資産税評価額を基に計算されます。
都市部の土地は路線価を使って評価されますが、その1㎡あたりの価格が、市場価格の8割程度となっています。
そのため、不動産が相続財産になった場合は、市場価格より低い金額で相続税の計算が行われることとなります。

【関連記事】
4,000万円のマンションの相続税はいくら?【計算方法・評価方法について】
https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/souzokuzei/sozk-40millionapartment/

 

■タワーマンションの相続税評価額が低くなる理由

タワーマンションが相続税の節税に広く利用されるのは、その節税効果が非常に大きいからです。
一般的に、タワーマンションの相続税評価額は、他のマンションと比較してもより低くなる傾向があります。

タワーマンションの土地部分の相続税評価額は、その敷地全体の相続税評価額を各所有者の持分で按分して計算します。
タワーマンションは高層の建物であるため、1つの建物が有する部屋数は非常に多くなっています。
タワーマンション敷地全体でみると、一等地にあって敷地も広く、相続税評価額は高額になります。
しかし、タワーマンションの所有者別にみると、その評価額はそれほど大きな金額にはなりません。

一方、タワーマンションの市場価格は上昇傾向にあります。
特に東京都23区内にあるマンションは、その人気ゆえに価格の上昇が続いています。
節税効果があるために購入が促進されていた面もある他、外国人が購入するケース、投資目的で購入されるケースもあります。

そのため、タワーマンションの相続税評価額は、市場価格と大きな乖離が生じるようになっています。
乖離が大きくなるほど相続税の節税効果は大きくなり、ますます節税目的で購入する人が増える要因にもなっています。

 

■タワーマンションは人気ゆえに価格が下がりにくい

タワーマンションが節税に利用されるもう1つの理由は、人気ゆえに価格が下落しにくく、むしろ市場価格が上昇傾向にあることがあげられます。
そのため、相続税が発生しそうなタイミングを見計らってタワーマンションを購入し、相続した後に売却すると、譲渡益を得ることができます。

仮に購入価格と同額で売却できた場合、相続税の節税分を得したことにとなります。
また、売却価格の方が高くなった場合でも、支払った相続税額の一部を売却時に控除できるため、所得税の負担は軽減されます。

逆に売却価格が購入価格より低い場合は損をしますが、相続税の節税効果の方が大きければ、トータルではメリットがあります。
そのため、都心部で価格が下がりにくそうな物件を中心に、タワーマンションの需要がより高まる要因となっていました。

 

 

【シミュレーション】タワーマンション節税における相続税評価額の見直し


タワーマンションを利用した相続税の節税に対して、一定の歯止めがかけられることとなりました。
これにより、相続税の計算にどのような影響があるのでしょうか。

ここでは、実際の金額を使って、その節税効果をシミュレーションしていきます。

 

計算例

以下のような相続人と相続財産の状況にある人が亡くなった場合を考えます。

●相続人 配偶者と子ども2人(長男・長女)
●相続財産 現預金10億円、自宅土地1億円、自宅建物4,800万円、有価証券2億円の合計13億4,800万円

 

■何も節税していなかった場合

何も節税をしていない場合、保有していた相続財産に対して、相続税評価額を合計した金額に対して相続税が課されます。

先の例では、相続税の金額の計算過程は以下のようになります。

①課税遺産総額
13億4,800万円-基礎控除額(3,000万円+600万円×3人)=13億円

②各法定相続人の取得金額
配偶者 13億円×1/2=6億5,000万円
子ども(1人あたり) 13億円×1/4=3億2,500万円

③相続税の総額
配偶者取得分 6億5,000万円×55%-7,200万円=2億8,550万円
子ども取得分(1人あたり) 3億2,500万円×50%-4,200万円=1億2,050万円
相続税の総額 2億8,550万円+(1億2,050万円×2人)=5億2,650万円

特例などの適用がない場合、3人の相続人で合わせて5億2,650万円の相続税を納付しなければなりません。

 

■タワーマンション節税を行った場合(改正前)

この事例で、タワーマンション節税を行った場合の相続税の計算を確認していきます。
現金で5億円のタワーマンションを購入し、そのタワーマンションの相続税評価額が2億円(評価水準40%)だったとします。

①課税遺産総額
現預金の金額は10億円から5億円に減少します。
その代わり、購入したタワーマンションの相続税評価額2億円が加算され、遺産の金額は10億4,800万円となります。
10億4,800万円-基礎控除額4,800万円=10億円

②各法定相続人の取得金額
配偶者 10億円×1/2=5億円
子ども(1人あたり) 10億円×1/4=2億5,000万円

③相続税の総額
配偶者取得分 5億円×50%-4,200万円=2億800万円
子ども取得分(1人あたり) 2億5,000万円×45%-2,700万円=8,550万円
相続税の総額 2億800万円+(8,550万円×2人)=3億7,900万円

この場合、タワーマンションを購入したことで、節税前と比較すると、相続税の総額は約1億4,750万円減少します

 

■タワーマンション節税の改正が行われた場合

タワーマンション節税の改正により、評価水準が60%を下回らないようにされたとします。
評価水準60%の場合、タワーマンションの相続税評価額は3億円となります。

①課税遺産総額
遺産の金額は、改正前のケースと比べて1億円の増額となり、11億4,800万円になります。
11億4,800万円-基礎控除額4,800万円=11億円

②各法定相続人の取得金額
配偶者 11億円×1/2=5億5,000万円
子ども(1人あたり) 11億円×1/4=2億7,500万円

③相続税の総額
配偶者取得分 5億5,000万円×50%-4,200万円=2億3,300万円
子ども(1人あたり) 2億7,500万円×45%-2,700万円=9,675万円
相続税の総額 2億3,300万円+(9,675万円×2人)=4億2,650万円

タワーマンションを購入しなかった場合より1億円の節税になっています。
一方、改正前の節税額と比較すると、4,750万円も相続税の負担が増えることとなります。

 

まとめ


タワーマンションを購入すると相続税の節税に効果的ですが、今後はその効果が限定的になるとされています。
これはタワーマンションに限ったことではなく、ブランド新築マンションのような相続税評価額と市場価格との乖離が大きくなりやすい物件にもいえることです。

また、タワーマンションは相続税対策として購入する人が一定数いるために人気があり、市場価格が下がらなかったと見る向きもあります。
今後はタワーマンションの購入控えにより、市場価格が下がる可能性もあります。
購入にあたっては、より一層慎重に考えた方が良さそうです。

【関連記事】
不動産投資で節税する際に税理士に依頼するメリット・デメリット
https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/realestateguide/inherita-investmentaskcountant/

 

 

 

解説:古尾谷 裕昭(ふるおや ひろあき)
ベンチャーサポート相続税理士法人(相続サポートセンター) 代表税理士

東京税理士会 京橋支部所属(登録番号:104851)
1975年生まれ 東京都出身

明治学院大学卒業後、都内3カ所の税理士事務所勤務を経て、2006年に税理士資格取得、税理士事務所開業。2012年にベンチャーサポート税理士法人と合併。2017年にベンチャーサポート相続税理士法人を設立。相続専門の司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍するベンチャーサポートグループの中核を担う「ベンチャーサポート相続税理士法人」を代表税理士として率いている。年間1,800件以上の相続税申告。10万人以上の登録者数を持つ相続YouTubeチャンネルを運営。「令和5年度版 プロが教える!失敗しない相続・贈与のすべて」など著書多数。

 

 

■相続サポートセンター:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/
■ベンチャーサポート相続税理士法人:https://vs-group.jp/sozokuzei/
■相続サポートセンター YouTubeチャンネル:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/youtube/

 

ベンチャーサポート相続税理士法人とは

<すべての士業が完全にワンストップ>
ベンチャーサポート相続税理士法人は、税理士法人、行政書士法人、司法書士法人、弁護士法人、社会保険労務士法人、不動産会社、保険販売代理店、金融商品仲介業者からなる総合士業グループに属しています。
当グループのすべての専門家は『士業はサービス業』という共通理念で繋がっており、お客様の要望に合わせて、あらゆるサービスをワンストップで提供します。
どの士業とも迅速に連携できる体制を築いており、担当者が相談内容に合わせて、最適な専門家をご案内します。

本件に関する
お問い合わせ先
ベンチャーサポートグループ株式会社 
マーケティング事業部
TEL:03-6264-4030
E-mail:pr@1.venture-support.jp

企業情報

ベンチャーサポートグループ株式会社

事業内容
相続・贈与・事業承継、会社設立、法人税務・会計、登記・各種許可申請、人事・労務、企業法務・民事、不動産
所在地
〒104-0061
東京都中央区銀座3-7-3 
銀座オーミビル8階
電話番号
03-6264-4030
代表者名
代表取締役 中村真一郎
上場
非上場
URL
https://vs-group.jp/

この会社のプレスリリース

この会社のプレスリリース一覧へ

注目タグ