相続時精算課税制度適用者に対するお知らせの送付について|開始時期・注意点
[ベンチャーサポート相続税理士法人 コラム]

相続時精算課税制度適用者に対するお知らせの送付について|開始時期・注意点

 

この記事でわかること
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✅ 相続時精算課税制度とはどのような制度なのか知ることができる
✅ 相続時精算課税制度適用者に対するお知らせが送付される
✅ 相続時精算課税制度適用者に対するお知らせの注意点がわかる
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相続時精算課税制度は、現在の税金に関する制度の中では比較的新しい制度です。
ただし、導入から約20年が経過したため、適用したことを忘れてしまう方も中にはいます。
相続時精算課税制度を適用したことを相続人が忘れてしまうと、確実に相続税の申告漏れが発生します。
そのため、相続時精算課税制度適用者に対して、新たに2023年5月からお知らせの送付が開始されることになりました。

お知らせの内容はどのようなものなのか、どのような注意点があるのか、解説していきます。

 

 

 

■相続時精算課税制度とは


相続時精算課税制度とは、贈与税の課税制度の1つです。
2003年に新たに導入された制度であり、従来からの暦年課税制度とは大きな違いがあります。
そこで、相続税の2つの課税制度について解説していきます。

 

■暦年課税制度

暦年課税制度は、一般的にイメージする贈与としての計算方法です。
1年間に贈与された財産の合計額を計算したら、その額から110万円の基礎控除額を控除します。
そして、控除後の金額に税率を乗じて、贈与税の計算を行います。
そのため、1年間に贈与された財産の金額が基礎控除額110万円以内であれば、贈与税は発生しません

 

■相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、贈与された人ごとに、2,500万円までの贈与は非課税となります。
2,500万円の非課税枠は毎年発生するものではなく、過去から通算して計算されるものです。
そのため、相続時精算課税制度を利用する場合は、税金が発生しなくても申告しなければなりません。
2,500万円の非課税枠を超えて贈与した場合は、一律20%の税率で贈与税が発生します。
暦年課税との選択適用となるため、相続時精算課税制度を選択する場合は、贈与税の申告書にその旨を記載します。
なお、相続時精算課税制度を選択すると、その選択をした年分以降は、暦年贈与に変更できません。どちらが効果的な節税になるか、よく考えてから選択するようにしましょう。

 

■相続時精算課税制度を利用した時のポイント

相続時精算課税制度を利用した場合、贈与税の申告や税額の計算が変わる他、相続税の計算にも影響があります。
相続時精算課税制度適用後の、相続税の計算のポイントについて解説します。

 

●贈与した財産を相続財産に含める
相続時精算課税制度を利用して贈与された財産は、相続が発生した時には相続財産に含めなければなりません
そのため、相続時精算課税制度を利用して贈与した分だけ、相続税の金額は大きくなります。
一方で、相続時精算課税制度を利用した場合、すでに納税した贈与税額は相続税額から控除できます。
つまり、相続時精算課税制度を利用しなかった場合の相続税額と、結果的には同じだけの相続税を負担することとなります。

 

●贈与した時の評価額で相続税を計算する
相続時精算課税制度により贈与された財産は、相続税の計算をする際には、相続時でなく贈与時の評価額で計算します
現金や預貯金を贈与した場合は、その評価額の計算に差はありません。
しかし、土地や建物などの不動産、あるいは株式などを贈与した場合は、贈与時の評価額で相続税の計算する必要があります。
そのため、相続時精算課税制度を利用すれば相続税の負担が必ず軽減されるわけではありません。
相続時より贈与時の評価額の方が高ければ、相続税の負担は増えてしまうこととなります。

 

【関連記事】
令和5年度税制改正により生前贈与が変わる! 暦年贈与と相続時精算課税どっちが有利?
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■ 相続時精算課税制度適用者に対するお知らせの送付


相続時精算課税制度で財産を贈与した人が亡くなった時に、相続時精算課税制度での贈与財産を計上することを忘れて、相続税の申告をしてしまうことがあります。
そこで、納税者に対して、相続時精算課税制度により贈与された財産があることを知らせる取り組みが始まっています。

 

■お知らせに関する概要

東京国税局は、2022年10月以降の相続開始分について、2023年5月からお知らせの文書を送付します
具体的には、相続税の申告期限のおおむね3か月前を目途に、書面を郵送することとしています。

 

■お知らせが開始される経緯

相続時精算課税制度を利用して贈与された財産は、必ず相続財産に含めなければなりません。
相続時精算課税制度を利用して贈与された財産であることを覚えていれば、相続税の計算も正しく行えます。
しかし、10年前、あるいは15年前に行われた贈与について、記憶していないケースが数多くあります。
過去の贈与の内容を忘れてしまっていると、相続税の計算に含めることにも気づきません。
そのため、相続税の申告を間違えてしまうことが数多くあるのです。

税務署では、過去の申告内容を保管しています。
その中には、相続時精算課税制度により贈与を受けた人やその財産に関するものも含まれています。
そこで、それらの資料を基に、相続税の申告期限前に注意喚起を促すお知らせを送付することとしました。

相続時精算課税制度は、いったん適用するとその後、適用を取りやめることはできません。
相続税の申告にも影響するため、納税者自身がきちんと覚えておく必要があります。
しかしながら、実際にはどのような申告を行ったのか、納税者自身では覚えていないことも多くあります。
贈与税の申告を税理士に任せているケースが多くある一方で、相続税の申告を別の税理士に依頼することも少なくありません。
その結果、相続税の申告でミスが発生しやすい状況にあります。
単純なミスを防ぐために、東京国税局独自に文書が送られることとなったのです。

 

■お知らせの対象となる人

郵送先は、原則として相続時精算課税制度により財産を贈与された人となります。
これとは別に相続税のおたずねの文書が、死亡届を提出した人に送られます。
相続時精算課税制度を適用した財産についてのお知らせと、相続についてのお尋ねが異なる人に届くこともあるので、注意が必要です。

 

■開始時期

東京国税局では、2022年10月以降に相続開始となった事例につき、2023年5月から文書の送付を開始しています。
このほかの国税局では、正式にこのような文書を導入していないため、納税者自身できちんと管理を行う必要があります。

 

 

■ 相続時精算課税制度適用者に対するお知らせに関する注意点


相続が発生すると、相続時精算課税制度の適用者に対するお知らせが郵送されてきます。
このお知らせが送付されてくるにあたって、注意すべき点には何があるでしょうか。

 

■まずは東京国税局のみでの運用となる

相続時精算課税制度適用者に対するお知らせは、2022年10月以降に発生した相続について、順次送付されます。
このお知らせは新たに始まったものですが、まずは東京国税局管内だけでの運用となります。
東京国税局の管轄は東京都、千葉県、神奈川県、山梨県の1都3県となっています。
東京国税局以外の国税局では、同じようなお知らせの文書は送付されません。
そのため、大半の相続に関しては、お知らせの対象には含まれないため、注意しなければなりません。

 

■東京国税局管内でも対象にならないケースがある

東京国税局管内の税務署に、相続時精算課税制度による贈与税の申告をしていても、お知らせが送付されないケースがあります。

1つは、亡くなった人が相続税の申告案内の対象になっていない場合です。
亡くなった人が預金や不動産などの財産をほとんど保有していない場合、相続税が発生しない可能性があります。
そのため、税務署から「相続税についてのお知らせ」とした文書は送付されません。
ただ、相続税の申告案内が送付されなくても、相続税が発生するケースはあります。
税務署による相続税の申告案内の対象となっていない場合、相続時精算課税制度適用者に対するお知らせも送付されないので、注意が必要です。

もう1つは、相続時精算課税制度の適用者が東京国税局の管轄外に住む場合です。
相続時精算課税制度適用者が複数いる場合は、1人でも管轄外に住む人がいると、全員にお知らせが送付されません。

 

■お知らせが来なくても対象者は申告しなければならない

相続時精算課税制度適用者に対するお知らせの文書は、納税者が相続税の申告漏れにならないよう注意喚起するものです。
このお知らせを見た人が、過去の申告を把握して正しい申告を行うきっかけとする狙いがあります。

ただし、すべての相続時精算課税制度適用者に対して、このお知らせが送付されてくるわけではありません。
お知らせが送付されなかったことを理由に、相続時精算課税制度を考慮せず相続税の計算を行うと、申告漏れとなってしまいます。
そのため、お知らせが届かなくても相続時精算課税制度を適用したかどうかの確認をしておく必要があります。

 

 

■まとめ


相続時精算課税制度は、生前贈与を行う際に、税負担を少なくするために利用されることがあります。
ただ、相続税の申告を行う際には、相続時精算課税制度による贈与を織り込まなければなりません。
そのため、相続時精算課税制度を適用したことを忘れている相続人がいると、申告漏れとなってしまいます。

申告漏れを防ぐための取り組みが、東京国税局では2023年5月以降、順次始められることとなっています。
ただ、対象者はごく一部だけであることから、相続人自身が注意して過去の申告内容を把握しておく必要があります。

 

 

 

解説:古尾谷 裕昭(ふるおや ひろあき)
ベンチャーサポート相続税理士法人(相続サポートセンター) 代表税理士

東京税理士会 京橋支部所属(登録番号:104851)
1975年生まれ 東京都出身

明治学院大学卒業後、都内3カ所の税理士事務所勤務を経て、2006年に税理士資格取得、税理士事務所開業。2012年にベンチャーサポート税理士法人と合併。2017年にベンチャーサポート相続税理士法人を設立。相続専門の司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍するベンチャーサポートグループの中核を担う「ベンチャーサポート相続税理士法人」を代表税理士として率いている。年間1,800件以上の相続税申告。10万人以上の登録者数を持つ相続YouTubeチャンネルを運営。「令和5年度版 プロが教える!失敗しない相続・贈与のすべて」など著書多数。

 

 

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