【足立】今回のグループ通算制度への移行に伴う実務対応では,グループ通算制度においてどういった組織体制や親子の役割分担で業務を行うことになるのか,連結納税制度と何が変わって,何が変わらないのか,これが共通したテーマかなと思います。そこで,まず,連結納税制度において,現在,どのような体制でどのような実務対応を行っているのか,についてお聞きしたいと思います。
【佐竹】日本製紙では2018年3月期より連結納税制度を導入しました。連結法人は72社ありますが,申告は,基本的には各社の経理部門及び顧問税理士の先生にお任せをしています。ただ,連結納税特有の処理もありますし,小規模な会社だと税務以外の業務も兼任している会社担当者も多いので,子法人のサポートが非常に大変です。グループ通算制度に移行しても,この辺りの業務は引き続き行う必要があると思っています。
現状,3名体制で連結納税含めた親会社の税務全般をみていますが,なかなか手の回っていないところもあって,今後の参考に,他の会社さんの話も聞かせていただきたいと考えています。
【田中】丸紅では,2003年3月期から連結納税制度の適用を開始しました。2021年3月末現在の連結法人数は106社です。
組織体制は,全社の経理部と,営業ラインごとに営業の経理がございます。営業ラインごとに,担当営業本部の予算・決算管理を行っていきますが,子法人の決算申告実務自体は,各子会社の経理部門で対応しており,多くは顧問税理士に委託して,それで各社の数字を固めてもらっています。事業会社であったり,持株会社であったり,様々な形態の子会社がありますが,基本的に決算・申告は各社で行い,我々親法人ではスケジュール管理を行うという役割分担になっています。
【足立】連結納税の申告書を作成する時のスケジュール管理とは,具体的にはどのようなことを行うのですか?
【田中】まず,システム上の法人税,地方税のレポーティングパッケージの入力の締め切り,それから添付書類はいつまでにとか,大きなスケジュールを子法人に通知します。そして,実際に個社計算まで行ってもらった後に,親法人で全体計算を行い,再び子法人に通知します。親法人では,自分たちの申告以外の連結納税特有の業務として,全体の進捗管理を中心に行い,あとはTKCマスターに必要な情報の収集や登録の作業のほか,検算差額が生じていないか,利益積立金の期首残高と前期の期末残高が一致しているか,添付資料が漏れなく作成されているかなど,ある程度形式的なところや整合性を中心にチェックしています。連結法人数が100社を超えていることもあり,ある程度手間がかかります。
【宮田】TDKでは2011年4月1日から連結納税制度を開始しています。直近の連結法人数は10社です。丸紅さんと同じように各社で決算・申告という形ですが,国内だとそれほど子法人数が多くなくて,10社程度規模となっていますので,親会社として子法人のサポートもしております。子法人も限られたリソースと日程の中,決算や申告に対応しているので,全体の進捗管理と,決算,申告,税効果等の形式や内容のチェックを行っています。
【足立】そこまで親法人がやってくれると,子法人としては心強いですね。
【髙島】コマツは2015年度に連結納税制度を開始しました。直近(2021年3月末)の連結法人数は13社です。当社では2002年にSAPを導入したことを契機に,国内グループ会社の経理業務を本社ですべてシェアードサービスするという体制に切り換えています。基本的には国内グループ会社すべての会計伝票を親会社であるコマツでチェックしており,経理部に100名ぐらいの人員がいます。決算申告業務に関しても可能な限りシェアードサービスで対応していこうという過去からの流れがあって,連結子法人の何社かはコマツが決算申告業務を行っています。
【足立】連結納税のグループに関係なく,国内グループの経理業務,決算申告業務を集約化していく方向ですね。
【髙島】はい。一方で,連結法人の中には,自分たちで決算申告業務を行っている法人もありますが,そういった法人も含めて親会社において8名体制で管理しています。
小規模な会社にも経理の人員は置いており,ある程度の業務はできるように親会社の方で教育をしていますが,その他は,都度質問を受けて指導するサポートをしています。
また,決算申告の際は各子法人がTKCのシステムに入力して,その入力されたデータを親会社が全てチェックし,内容に不備があれば修正してもらった上で,最終的に全体計算を締めるという形で対応しています。
【足立】全体計算の前の個社計算の段階で親法人がしっかりとチェックをして確定させる流れなんですね。
【参加企業の概要】(五十音順)
会社名 | コマツ | TDK | 日本製紙 | 丸紅 |
---|---|---|---|---|
グループ会社数(※1) | 254社 | 145社 | 160社 | 456社 |
連結法人数(※2) | 13社 | 9社 | 72社 | 106社 |
連結納税制度の スタート時期 |
2015年4月1日 | 2011年4月1日 | 2017年4月1日 | 2002年4月1日 |
業種 | 機械 | 電気機器 | パルプ・紙 | 卸売業 |
売上高(※3) | 2,189,512百万円 | 1,479,008百万円 | 1,007,339百万円 | 6,332,414百万円 |
決算期(連結親法人) | 3月 | 3月 | 3月 | 3月 |
会計基準(個別) | 日本基準 | 日本基準 | 日本基準 | 日本基準 |
会計基準(連結) | 米国基準 | 米国基準 | 日本基準 | IFRS |
(※1)2021年3月期(通期)の有価証券報告書の第一部【企業情報】/1【企業の概況】/3【事業の内容】における開示計数。親会社を含まない。
(※2)自社を連結親法人とする連結納税制度の対象となる法人数。2021年3月末時点の数値。なお,連結法人には,非連結子会社等も含まれている。
(※3)2021年3月期(通期)の連結財務諸表の数値。
株式会社TKC グループ通算制度プロジェクト推進室
E-mail:eConsoli@tkc.co.jp