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グループ通算制度の適用が来年4月1日以後開始事業年度からスタート

6.実務対応報告第42号への対応

【座談会Memo】

  • 連結納税制度の取扱いを踏襲しているため,実務対応報告第42号の適用による損益への影響はほとんどないと考えている。但し,実際に影響がないことを監査法人と相談しながら確認しないといけない。
  • 既に連結納税制度を採用している企業では,システムを活用して実務対応報告第42号適用による影響額の試算を行うことを検討する。
  • 実務対応報告第42号を適用する金額的影響を考慮して,強制適用又は早期適用を選択する必要がある。

【足立】「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(実務対応報告第42号)」が8月12日に最終基準化されました。実務対応報告第42号については,基本的に連結納税制度の取扱いを踏襲する内容となっていますが,感想や実務で気になる点がありましたら教えてください。

【髙島】連結納税制度からグループ通算制度への切り換えに伴う会計上の影響はほとんどないというイメージでいます。

ただ,影響がないという最終確認をするため,まず会計のインパクトや取組みについて,どこのポイントを押さえてどういう検証をしていけばよいかということを監査法人とこれから詰めていく予定です。最終的に「問題ない」という結論を得たいと思っています。

【宮田】回収可能性の判断など基本的な部分は変わらないと思いますので,会計への影響というのは,日本基準においては特段ないと思っています。

弊社は米国会計基準を適用しているのですが,米国会計基準上においても特段大きな影響はないと思っています。米国基準と日本基準の差異でいちばん大きいのは回収可能性の部分だと思いますが,制度自体は連結納税制度とあまり変わらないので,回収可能性の考え方も基本的には変わらないと考えています。ただし,細かな影響がないかどうかは確認が必要だと思っています。

足立 好幸 氏

公認会計士・税理士
足立 好幸(あだち・よしゆき)氏
(税理士法人トラスト)

【足立】IFRSでも米国基準でもそうですが,適用指針第26号や実務対応報告第42号で定めるような企業の分類をパズルのように当てはめて回収可能性を検討するという詳細なガイダンスはありませんよね。ただ,基本的な考え方として,IFRSでも米国基準でも,将来の課税所得が生じる可能性が高いと判断される場合に回収可能性を見るということだと思います。例えば,米国基準では,将来の収益性に関して,過去の課税所得の発生状況や将来の予測などを検討し,ポジティブな証拠とネガティブな証拠を比較衡量することによって,課税所得が生ずる可能性が高いと判断される場合は繰延税金資産を認識することになるということだと思います。そういう理解でよろしいでしょうか。

【宮田】基本的にはそうです。日本基準と異なり企業の分類という概念はなく,MLTN(more likely than not)により判断します。

【足立】可能性のところは,いわゆる50%超の話ということですか?

【宮田】そうですね。他にも開示上の対応なども出てくるのではないかと思っています。

【足立】実務対応報告第42号への対応ですが,伊藤さん,TKCではいつ頃から対応したシステムの提供を考えているのでしょうか?

【伊藤】グループ通算制度の税効果計算に対応した税効果会計システム(eTaxEffect)を11月に提供しようと思っています。実務対応報告第42号の適用は強制適用(2022年6月期第1Q)か早期適用(2022年3月期第4Q)が選択できますので,システム上で,新基準で税効果を計算するか,従来通りの基準で計算するか選べるようにしたいと考えています。

また,既に連結納税制度を採用されている場合には,連結納税制度からグループ通算制度に移行するパターンや連結納税制度から単体納税制度に移行するパターン,あるいは単体納税制度を採用されている場合には,グループ通算制度に移行するパターン,又は単体納税制度のままのパターンを選択できるようにしようと考えています。

【足立】なるほど。そうすると,既に連結納税制度を採用している企業では,例えば,2021年3月期の本決算や2021年9月期の第2四半期決算で使用した一時差異等の金額や将来の業績予測を使えば,仮にその決算期にグループ通算制度ベースで計算していたとすると繰延税金資産がいくらになるのかということがわかりますね。それがわかれば,実務対応報告第42号を適用することによるおおよその影響額がわかるということですね。

既に連結納税制度を採用している企業のうち,ほとんどの企業で,実務対応報告第42号を適用する金額的影響,つまりは,連結納税制度ベースからグループ通算制度ベースに計算方法を変更する金額的影響が少ないことが予想されます。

ただ,単体納税時代の繰越欠損金である特定欠損金の解消額は,連結納税の場合は損益通算前の所得とぶつけて回収可能額を見ていますが,グループ通算制度では,損益通算後の所得とぶつける形になるので,単体納税時代の繰越欠損金がたくさんあって,今後,グループ内に赤字会社があり,損益通算の効果が大きいことが見込まれる場合,特定欠損金の部分の繰延税金資産の取崩しが出るかもしれません。そのような企業は多くはないでしょうけど。

いずれにせよ,実務対応報告第42号を適用する金額的影響が少なければ強制適用から素直に進めてもいいんでしょうけれども,金額の影響が仮に大きければ,早期適用して今年度の第4四半期で吸収することも検討する必要が出てくると思います。伊藤さん,11月の新システムの提供を心待ちにしておりますのでよろしくお願いします。それから,実務対応報告第42号は,連結財務諸表での回収可能性の判断手順について,実務対応報告第5号等と比べて,より明確にしている印象がありますので,連結財務諸表で日本基準を採用している企業については連結財務諸表での取扱いも改めて確認する必要があるでしょうね。

図表 グループ通算制度を適用する場合の繰延税金資産の回収可能性の判断

  グループ通算制度を適用する場合の取扱い(注) 連結納税制度を適用する場合との相違点
個別財務諸表 企業の分類 通算グループ全体の分類と個社の分類のいずれか上位を適用する。 差異はない。
通算グループ全体の分類は,連結納税主体の分類と同様の判定方法となる。
スケジューリング 自社単独の将来の通算前所得で回収できない場合でも,損益通算による益金算入額(他の通算会社の所得)があれば回収可能と判断される。 他の通算会社の所得を使って回収可能額を計算する点で連結納税制度を適用する場合と同様となる。
連結財務諸表 企業の分類 通算グループ全体の分類を適用する。 差異はない。
スケジューリング 通算グループ全体を1つの計算単位として回収可能額を計算する。 グループ全体を1つの計算単位として回収可能額を計算する点に変更はない。

(注)法人税及び地方法人税の将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性の判断に関する取扱いとなる。

図表 実務対応報告第42号の適用時期

(1) 連結納税制度からグループ通算制度へ移行する企業(3月決算)

適用時期 2022年3月第4四半期 2022年6月第1四半期
早期適用 税金計算 連結納税制度 グループ通算制度
税効果計算 グループ通算制度ベース(注1) グループ通算制度ベース
強制適用 税金計算 連結納税制度 グループ通算制度
税効果計算 連結納税制度ベース グループ通算制度ベース(注1)

(2) 単体納税制度からグループ通算制度へ移行する企業(3月決算。2022年4月1日からグループ通算制度を適用)

適用時期 2022年3月第4四半期 2022年6月第1四半期
早期適用 税金計算 単体納税制度 グループ通算制度
税効果計算 グループ通算制度ベース(注2) グループ通算制度ベース
強制適用 税金計算 単体納税制度 グループ通算制度
税効果計算 単体納税制度ベース グループ通算制度ベース(注2)

(3) 連結納税制度から単体納税制度へ移行する企業(3月決算)

適用時期 2022年3月第4四半期 2022年6月第1四半期
2022年3月に移行しない旨の届出書を提出した場合 税金計算 連結納税制度 単体納税制度
税効果計算 単体納税制度ベース(注3) 単体納税制度ベース

(注1)会計方針の変更による影響はないものとみなす。また,「特例的な取扱い」を採用していた場合,税制の変更による影響を適用初年度の損益(資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等をその他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上する場合又は直接純資産の部の評価・換算差額等に計上する場合には,その他の包括利益又は評価・換算差額等。以下,(注2)(注3)に同じとして計上する。特例的な取扱いとは,実務対応報告第39号における特例的な取扱い(実務対応報告第5号等に関する必要な改廃をASBJ が行うまでの間は,改正前の税法の規定に基づくことができるとする取扱い)をいう。
(注2)税制の変更による影響を,適用初年度の損益に計上する。
(注3)税制の変更による影響を,届出書を提出した日の属する会計期間(四半期会計期間を含む)の損益に計上する。


お問合せ

株式会社TKC グループ通算制度プロジェクト推進室
E-mail:eConsoli@tkc.co.jp

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