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グループ通算制度の適用が来年4月1日以後開始事業年度からスタート

4.決算,申告の事務負担への影響について

【座談会Memo】

  • グループ通算制度に移行しても全体的な業務プロセスは大きく変わらない。
  • 決算・申告※の事務負担はあまり変わらない。※税務調査・修更正を除く。
  • 通算税効果額を決算に織り込むための事務手続がポイントとなる。
  • 親会社が子法人の決算・申告業務のサポートをどこまで踏み込んで行うかがポイントとなる。

【足立】今回の連結納税制度の見直しの目的の一つは,企業の事務負担の軽減にあるということですが,修更正を含めた税務調査の事務負担はこの後に置いておきまして,まずは,経理担当者が気にしている「決算の事務負担」と「申告の事務負担」についてです。グループ通算制度に移行すると事務負担は減るのでしょうか?現行制度の決算,申告の事務フローについてコメントをいただきながら,減りそうなところ,増えそうなところがあれば,その点についても教えてください。

【髙島】現状ですが,各子会社に税金計算,税効果計算のための基本的な情報をTKCシステムに入力してもらっています。まず,第1段階で,会計上の決算業務,それから税務調整項目について,各社が独自に計算を行った結果をTKCシステムに入力します。それを我々がチェックし,全体計算で各社の税額を確定させた後,各社が最終的な会計伝票を入力して決算が締まるというのが現状の流れです。

これがグループ通算制度になると,個別申告の仕組みとなるため,各子会社が全て自分たちで完結させなくてはならなくなります。通算する部分については,親会社が全体計算のための基礎数値を通知しますが,最終的には子会社が個社ごとに締めていかなければいけませんので,こうなると明らかに工数は増えると思います。この点,TKCの新しいシステムでどのような対応が可能になるのか気になります。ただ,全般的にグループ通算制度に移行しても,事務負担が減る部分はないというのが今の印象です。

【足立】一口に事務負担の軽減といっても,税務調査時の事務負担の話なのか,開示に影響が出てくる決算や申告の事務負担なのか分けて考える必要がありますよね。

【佐竹】私も事務負担はあまり変わらないと思っています。

まず非連結子会社にしている子法人は,連結決算に取り込みませんので,申告も決算も連結決算のスケジュールに間に合わせる必要はありません。ですので,少なくとも4月中にeConsoliTax(連結納税制度の申告システム)への入力をしてもらえばよいということにしています。そして,各社の決算については,欠損金を持っている会社については「今年はこうしてください」という連絡はしますが,全体計算にかかってくる項目がない会社は,決算時の法人税額と税務申告時の法人税額はそれほど変わりませんから「単体計算で決算を締めてください」と言っています。そこは,グループ通算制度でも変わらないと思います。

連結子会社にしている子法人は,eTaxEffect(税効果会計システム)と手計算をハイブリッドに使っています。まずは,期末後8営業日くらいまでに,一度,各社で税金計算及び税効果計算について,単体計算で決算を締めてもらっています。また,それとは別にeTaxEffectへの入力をしてもらいます。そして,親法人では,各社のeTaxEffectの入力情報を合わせてグループで全体計算を行い,欠損や税額控除がある会社についてのみ「この仕訳を一本入れてください」といった連絡をしています。そこは,グループ通算制度でも変わらないと思います。

問題となるのは通算税効果額をBS上,区分するかどうかだけで,そこがクリアできれば現行と変わらないと思っています。

【足立】親会社にとっては,子会社の個別財務諸表は連結決算でのみ必要で,子会社にとっては,会社法決算でのみ自社の個別財務諸表が必要になりますから,とりあえず,連結決算用の個別財務諸表の作成では,子法人が通算税効果額をできるだけ区分しない状態で決算を締めることができれば,スケジュールが厳しい連結決算上は,現行と変わらない事務手続にすることができる,ということですかね。

【佐竹】そうですね。あと,一つ疑問なのが,ダイレクト納付を利用すれば,税金は親法人が支払うので,子法人は親法人に未払金を一本立てておけばよいのかという点です。仮に,それでよいということであれば,BSの計上科目も今と変わりませんし,通算税効果額の問題が解消できます。

【足立】確かに,新しいダイレクト納付を利用すれば,子法人の税金は親法人が支払うので,子法人は申告税額と通算税効果額を合わせて親法人に未払金を一本立てておけばよいという考えも出てきそうですね。ただ,個人的には,グループ通算制度では,あくまで,各社に納税義務がありますので,翌年度に実際に支払うのは親法人であったとしても,決算時は,申告税額としての未払法人税等と通算税効果額としての未払金を区別して処理すべきだと考えています。ただ,佐竹さんの言うように,親法人が子法人の法人税を納付するダイレクト納付を利用する場合の会計仕訳というのは,論点としてはあるでしょうね。

田中さん,事務負担という観点について,丸紅さんではどうお考えでしょうか?

【田中】納付に関しては,各法人に連帯納付責任がかかってきますので,親法人で各社が税金を支払ったかどうかを確認する必要があると考えています。ただ,それを網羅的に管理するのは大変だと思っています。

その点,親法人が子法人の法人税の納付ができるダイレクト納付で色々と解決するのであれば,グループ全体の事務手間も勘案のうえ,利用を検討したいと思います。

子法人各社で電子申告を行う場合,これまで親法人で対応していた子法人分のTKCシステム未対応別表のe-Taxソフトでの作成,PDF添付資料の回収,電子申告時のそれらの添付作業など,親法人における子法人の申告に係る作業はある程度削減されると考えています。一方で,その分,子法人での作業は増えます。特に,現行,地方税の電子申告に対応していない子法人にとっては,電子申告自体が初めてとなるため,電子証明書の管理や社内規程の整備等も必要となります。

ですから,親法人における子法人申告関連資料収集の手間との兼ね合いもありますが,子法人の申告も親法人が提出することで,これらの作業は引き続き親法人で対応することも考え得ると思います。一方で,当初の申告は,親法人が子法人の申告をまとめて行うにしても,修更正は,個社で遮断される形になるので,子法人それぞれで対応してもらう必要があると考えています。ですので,当初申告と修正申告を区別して,親法人,あるいは,子法人がこれらの作業を行うことができるよう,システムが改修されることを期待しています。

宮田 覚 氏

宮田 覚(みやた・さとる)氏
(TDK株式会社)

【足立】宮田さん,TDKさんではどうですか?

【宮田】基本的に,子会社で決算が締まった後にTKCシステムに入力いただき,親法人で全体計算をしてその内容を確認したうえで,決算も申告も行っている状況です。

この一連のプロセスは,グループ通算制度に移行しても基本的には変わりませんので,子会社側でもそれほど負担はないと思います。

ただし,親会社では細かい制度変更の部分の事務負担が生じますので,当面の間は,我々の事務負担は増えてしまうと予想しています。

【足立】年数を重ねていくと子会社のレベルも段々と上がっていくものですか?

【宮田】弊社の場合,税効果も含めて税金計算は簡便法を使っているので,子会社が原則法により税金計算を行う機会は,年に1回しかありません。

【足立】なるほど。四半期決算では,四半期特有の会計処理,つまり,税引前四半期純利益に年間の見積実効税率を乗じて税金費用を計上する方法を採用しているということですね。そのため,原則法による税金計算や税効果計算,あるいは,申告書作成は,本決算の年1回しか経験できないということですね。

【宮田】はい。もちろん勉強会などはしていますが,税務業務を専任していない子会社の担当者の方に税金計算を慣れていただくことは難しいと思っています。そのため,子会社に任せるか親会社でチェックするのか色々と考え方はあるとは思いますが,私個人としては,親会社が最終チェックをすべきだと考えています。そういったことからも,全体からすると親会社の工数というところは当面の間,少し増えるのかなという印象です。

【足立】グループ通算制度は,個社で申告を行うことになっていますから,建前上は各社で申告を頑張りましょうということになります。しかし,個社の申告が全体に影響してくるところもあるという非常に特殊な取扱いになっていますから,親会社として子会社を教育,あるいはコントロールをしていくだけではなく,子会社の作ったものをしっかりチェックしていくという方針も当然にあると思います。

ところで,先ほど非連結子会社の話が出てきました。会計上,100%子会社であっても重要性の観点から連結財務諸表に含めていない会社です。一方で,税務上,連結納税の範囲には入っていますから,申告には含めていると思いますが,決算時は,税額や繰延税金資産の回収可能性に関する全体計算の対象に含めているのでしょうか?

【佐竹】利益からいってもそれほど影響はありませんので,今のところ決算の数字計算には含めていません。申告の時だけ含めています。

【足立】やはりそういった対応が一般的なのですね。

この決算・申告については,先ほどの連帯納付責任のところもありますが,事務負担の軽減という意味では,システムの役割は大きいと思います。伊藤さん,TKCでは,この辺のシステム開発はどうなっていますか?

伊藤 義久 氏

伊藤 義久(いとう・よしひさ)氏
(株式会社TKC)

【伊藤】グループ通算制度に移行しても,損益通算や繰越欠損金の通算,外国税額控除などについては,引き続き全体計算が必要になってきますので,全体的な業務プロセスは大きく変わらないと思っています。

一方,最初の準備段階では,マスター項目の変更や追加が必要になってくる部分もあります。例えば,先ほどお話に出ていた親法人がまとめて申告するのか各子法人が申告するのかなどは,予め設定をしておいて,その上で漏れがないかチェックできるようにしておいたほうがシステム上はよいと考えています。

また,電子申告が義務化されますので,申告・納税までを一連の業務プロセスの形であらわせるようにした上で,より使い勝手をよくしようと思っています。例えば,個社ごとに申告・納付を行う場合には,システムで各社の申告・納付状況を一覧で確認できないか検討しているところです。

あとは,電子申告が義務化されると,これまで電子申告を行っていない子法人は,電子申告の準備が必要となります。その辺はシステムの外の話になってしまいますが,そのための事前の指導,準備のための親会社の負担は増えてくるかもしれません。

連結納税制度のうちに一度電子申告を行っておいてもよいかもしれませんね。

【田中】システムの外の部分という意味では,国税庁が提供する別表のうち,一部の別表については,TKCでは対応しておらず,e-Taxソフトで作成する必要があり,TKCシステムだけで申告書の作成が完了できないため,その辺が,なかなかもどかしいと思っています。また,TKC未対応別表がある場合,子法人分の個別帰属額等の届出についても,親法人が作成する必要があり,手間がかかっています。

【足立】今の点については,さきほど田中さんも触れられていましたが,グループ通算制度に移行すると個社申告になりますから,国税庁が提供する別表のうち,システムで作成できない別表がある場合,グループ通算制度に移行後は子法人自らがe-Taxソフトで作成する必要が生じるということですね。ただ,親法人が子法人の申告をe-Taxで提供する場合は,現行と同様に,親法人がe-Taxソフトに入力することになるということですね。

あと,事務負担の軽減について追加でお話ししておくと,例えば,受取配当金の関連法人配当等の負債利子控除額の計算は,現在,総資産や関連法人株式等の帳簿価額を全社で集計していると思いますが,ああいった面倒な計算はなくなります。賃上げ税制(今年度より大企業向けは人材確保等促進税制に改正)なども,弊社の連結納税制度を採用しているクライアントでは,要件を満たすかどうかは全社で判定するから事前にはよくわからない,集計しても,結局,適用できないのだったらまったくの徒労に終わるので集計自体もやめてしまおうといって,適用を放棄している会社があります。

グループ通算制度では,租税特別措置も研究開発税制以外は基本的に個社ごとの計算になっているので事務負担が減り,かつ,いままで事務負担が重くて適用できなかった税制なども適用できるというメリットがあると思います。


お問合せ

株式会社TKC グループ通算制度プロジェクト推進室
E-mail:eConsoli@tkc.co.jp

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