第2回 災害時の業務継続に向けて介護施設が強化すべき取組とは?
~介護事業のここが知りたい 運営と経理の実務【パート1】運営編~

2022年9月28日

業務継続に向けた取組の強化

災害時おける業務継続の取組が義務付けられましたが、災害にあっても業務を継続しなければならないのでしょうか?

従来、災害に対しては、防災計画等において、利用者、職員の身体、生命の安全確保を目的に避難や救助、被害の拡大防止等について計画されていました。一方、令和3 年度施行の改正で新たに策定が義務付けられた、「業務継続計画」は、感染症や非常災害発生時において、介護事業を継続的に実施すること及び非常時の体制で早期の業務再開を図ることを目的としています。よって、業務を継続することを目的にしている点が大きく異なります。災害とういう困難な状況下において業務継続が示される背景は、提供しているサービスが介護サービスという特性上、このサービスがないと最低限の生活を維持するのが困難な人たちが多いということが大きな理由として挙げられます。

また、このような特性上、多くの利用者に対して、明日から別の事業所からサービス提供を受けて下さい、という対応も災害状況下において、さらなる利用者の負担になることが想定されます。一方で、被害状況によっては、業務の継続が極めて困難な場合も想定されます。特に事業規模の小さい事業所では、その可能性も高くなると想定されます。業務継続計画では、業務の継続、早期の復旧を目的に策定されますが、職員、設備、インフラの復旧状況によっては、継続不可能という結果もありえます。その場合もその判断基準を設けておき、早期に判断することが求められます。

「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」には、「万一業務の縮小や事業所の閉鎖を余儀なくされる場合でも、利用者への影響を極力抑えるよう事前の検討を進めることが肝要です。」と記載されており、事業が継続できないという結果においても、利用者の受け入れ先や情報提供等についても念頭に入れた検討が望まれます。

 

〈参考〉 厚生労働省

「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」及び「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」

https://www.mhlw.go.jp/content/000749533.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/000749543.pdf

 

なお、業務継続計画の策定、研修及び訓練の実施については、他のサービス事業者との連携により実施しても構いません。また、業務継続計画は、策定が義務付けられていますが、令和6 年3 月31日までは、努力義務とされています。

 

  • 「業務継続計画」の目的は、避難、救助ではなく、事業の再開である。
  •  事業継続不可能の判断基準も「業務継続計画」の要素となる。

 

 

 

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株式会社オフィスイーケア代表取締役楠元睦巳

株式会社オフィスイーケア代表取締役
1965年奈良県生まれ。
富士通株式会社・生産システム本部にてコンサルティング業務に従事。株式会社やさしい手にて城南エリア事業部長、ISO 内部監査員等。
ミモザ株式会社にて常務執行役員、居宅介護事業本部長、内部監査室等。 2008年オフィスイーケア創業(2017年株式会社化)。介護コンサルタントとして、介護事業所運営支援、組織開発、介護保険制度・給付管理・コンプライアンスに関する執筆、セミナー、研修の他、自治体の介護保険事業計画の策定支援等に携わる。

» 会社HP:https://www.oe-care.com/

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