2.分かりにくい定額減税
この論点を掘り下げると、意外と深いところの課題に気が付きます。たとえば、定額減税の対象となる令和6年度所得について、所得税と個人住民税とでは時点が異なります。所得税は令和6年度の所得なので、2月に亡くなった年金生活者の親には2ヵ月の年金所得に対する所得税が発生しています。一方、個人住民税については、令和5年度の1年間の年金所得に対する個人住民税が令和6年度に発生していますので、個人住民税の納税者としては1年間の所得に対する減税となります。
しかしながら、亡くなった親が扶養親族に該当する場合、親の定額減税は親を扶養している給与所得者で行われますが、扶養親族の判定基準日である令和6年12月31日時点では既に死亡していますので、扶養親族には該当しないことになります。
親に公的年金等の所得があり、扶養親族に該当する場合はどうなるのでしょうか。
今回の定額減税は、所得税と個人所得税の納税者を減税対象としていますが、そもそも所得税の納税者と個人住民税の納税者は同じではありません。個人住民税の納税者の方が所得税よりも広い概念となるため、所得税の定額減税が受けられない人でも個人住民税の定額減税は受けられることも考えられます。
所得税は申告納税方式であり、納税者側(源泉徴収義務者といっても良いかもしれません)の判断となりますが、個人住民税は賦課課税方式のため市町村側での判断となります。一方、所得税で控除しきれない部分がある場合は、市町村から給付されるとのことですので、所得税の未控除のデータがどのように市町村に連携されるのか、高い関心を持ってチェックする必要があります。
このコラムの執筆時点(令和6年7月)での公開情報は6月から実施する給与に向けたものが多く、限定的です。今後様々な情報発信があると思いますが、今回のコラムは以下の情報をベースに、定額減税の理解の妨げになっている点に焦点を当てつつ、納税者及び事業者の給与担当者の目線からこの定額減税という制度にアプローチします。
定額減税を正しく理解するための情報を整理
- 「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(令和5年 11 月2日閣議決定)
- 令和6年度税制改正大綱(令和5年12月14日 自由民主党・公明党)
- 令和6年度税制改正大綱(令和5年12月14日 自由民主党・公明党)
- 個人住民税の定額減税に関するQ&A集(令和6年1月29日 総務省自治税務局市町村税課)
- 令和6年分所得税の定額減税Q&A(概要・源泉所得税関係【令和6年5月改訂版】)(令和6年2月5日 国税庁)
- 個人住民税の定額減税(案)について(令和6年3月4日 総務省自治税務局市町村税課 課長補佐 鈴木洋平)
- 個人住民税の定額減税に係るQ&A集(令和6年1月29日 総務省自治税務局市町村税課)
- 低所得者支援及び定額減税補足給付金の概要について(内閣官房 令和5年経済対策給付金等事業企画室)