税務研究会

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税理士 金子真一の「定額減税」を考える

4.二重取りでも大丈夫!?

二重取りは調整しなくて良い!?

定額減税の二重取りについてポイントを整理してみます。

定義同一の減税対象者が複数の所得源から同じ減税を重複して受けること。今回の場合、一定の条件下で1人が2人分の減税効果(8万円)を受けられる状態を二重取りといいます
考えられるケース1. 年金と給与の二重取り
2. 配偶者の二重取り
3. 扶養親族の二重取り
4. 副業や複数の職場での二重取り
問題点所得税の納税が正しく行われない

鈴木俊一財務相は令和6年7月12日閣議後記者会見にて定額減税の二重取りが発生することを認めた上で、「企業や地方自治体の事務負担に配慮することも必要」として、返還不要の方針を表明しました。

理由としては、次の点があるようです。

二重取りを防ごうとすると、例えば、源泉徴収義務者である企業や地方自治体が、全ての控除対象配偶者について、個人住民税所得割が課税されたかどうかの情報を網羅的に把握する必要があり、膨大な事務コストが発生する
今回の定額減税は一時的な措置であるため、厳密な管理よりも実施の容易さを優先させる

上記記者会見では、配偶者の扶養に入りながら100万円超から103万円の年収があるといった一定の条件がそろう際に発生する二重取りについてのコメントでしたが、D市のケースをみるともう少し広いところでも発生する可能性があると考えます。

定額減税の二重取りに意図せずして該当してしまった納税者は、まじめな人ほどどうしたらいいのか戸惑うことになりますが、そのボールは会社の人事担当者に、そして場合によっては顧問税理士に飛んできます。そうなった場合、人事担当者や顧問税理士はどうすれば良いのでしょうか。

鈴木俊一財務相の発言からは、会社(所得税)、地方自治体(個人住民税)がそれぞれの情報に基づき、適正に処理されている場合、そこで発生した二重取りについては返還を求める等の調整を行わないと理解しました。市町村もD市の場合、自身で管理している情報に基づき調整給付を判定しており、そこについては止めるとか返還を求めるということはしないと言っています。

結局本件については誰かが「大丈夫ですよ」と判断してくれることは無いようです。人事担当者や顧問税理士はこういった情報を踏まえ、個別に判断していくしかないと考えます。

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