猫でもわかる改正電帳法 電子帳簿編
<3分で読める税金の話>

2021年9月21日

 

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前回のコラムではおおまかな電帳法の歴史を振り返りましたので、令和3年度改正内容のお話に移りたいと思います。電子データでの保存対象は大きく分けて「帳簿」と「書類」がありますが、今回は電子帳簿についてご説明します。

 

■令和3年度改正で電子帳簿は2種類になる

今回の改正により、電子帳簿は「優良な電子帳簿」と「その他の電子帳簿」の2種類となりました。「優良な電子帳簿」は、今までの税務署に申請を必要とする電子帳簿と同等の要件を満たした帳簿、「その他の電子帳簿」(一般の帳簿と呼ぶことが多いようです)は現在の電子帳簿の要件を満たさないものと考えてください。

 

 

■優良な電子帳簿の要件

優良な電子帳簿の要件には、記録事項の訂正・削除の履歴が残ること、通常の業務処理期間を経過した後に入力を行った場合にはその事実を確認できること、電子帳簿と他の帳簿との間で相互関連性が確認できること、検索要件を満たしていること等があります。検索要件は①取引年月日、取引金額、取引先、②日付又は金額の範囲指定、③2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索が可能であることとされ、税務調査時にダウンロードに応じるのであれば②③は不要とされました。

 

 

■その他の電子帳簿の要件

その他の電子帳簿の要件は、システム関係書類(マニュアルなど)の備付け、速やかな電子帳簿の可視化が可能な機器の備付けと税務調査時にダウンロードに応じること(優良の検索要件①から③を満たしている場合不要)となります。システム関連書類や機器の備付けは優良な電子帳簿でも備付けが必要です。

 

 

■優良な電子帳簿のメリット

国としては、新型コロナウイルス感染症の影響や働き方改革など様々な理由から事業者全体のペーパーレス化を進めるために、制度利用をしていない中小零細企業者に安価で使い勝手のよい会計ソフトの利用を促進したいが、信頼性の高い現状の電子帳簿も残したいと考えました。そこで、優良な電子帳簿に対して、過少申告加算税の5%オフと所得税の青色申告特別控除額65万円のインセンティブが与えられることになりました。

 

 

■承認を受けていても届出を出す必要あり

上述のインセンティブを享受するには、現状、承認を受けて帳簿を電子保存している場合であっても新たに届出を提出する必要があります。提出期限は適用を受けようとする課税期間に係る法定申告期限ですので、申告書と一緒に届出を提出すればよいでしょう。令和4年3月期決算法人は令和4年の5月末の法定申告期限、個人の令和3年分確定申告では令和4年3月15日法定申告期限が届出の提出期限となります。

 

 

■承認を受けているがやめたい場合

現状、承認を受けて電子帳簿保存をしているが、会計システムを変更するなどの理由で、改正後の「その他の電子帳簿」の要件で保存したい場合、現状の承認を取りやめるための届出を提出する必要があります。

 

 

■承認を受けている場合は届出を提出する必要あり

現状、承認を受けて帳簿を電子保存している場合、そのまま現状の要件で保存する場合には何もしなくていいのですが(この場合インセンティブを受けられません)、優良な電子帳簿又はその他の電子帳簿のどちらに移行するにしても何かしらの届出を出す必要があることに留意してください。

優良な電子帳簿に移行する場合、本来であれば優良な電子帳簿を適用する旨の届出に加え、現状の承認を取りやめる届出も提出する必要がありますが、優良な電子帳簿の要件で保存を開始した日の管理・記録をし、調査時にその旨を答えることができれば、現状受けている承認取りやめの届出は提出する必要はありません。

 

 

■記帳代行業者に委託している場合

記帳代行業者に委託している場合であっても、電子帳簿保存は可能です。ただし、課税期間終了後に1年間まとめて記帳したり、保存場所を記帳代行業者の所在地にすることは認められません。記帳代行業者に委託する場合は、通常の入出力(業務処理)サイクルの期間で定期的に電子帳簿の還元を受ける必要があります。

 

 

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税理士高山 弥生

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