更新日:2022年9月2日
違法性の承継
(滞納処分相互間)
1 督促又は差押処分の違法性は、その後における差押え、換価又は配当処分に承継される(大正15.7.20行判、昭和9.7.24行判参照)。
(賦課処分との関係)
2 賦課処分と滞納処分とは、それぞれ目的及び効果を異にし、それ自体で完結する別個の行政処分であるから、賦課処分の違法性は滞納処分には承継されない。したがって、賦課処分に取り消し得べき瑕疵があっても、その処分が取り消されるまでは、滞納処分を行うことができ、また賦課処分が取り消されても、その取消し前に完結した滞納処分の効力には影響がない(昭和26.2.28鳥取地判、昭和26.7.4広島高判、昭和39.4.16仙台高判参照)。
(納付通知書による告知との関係)
3 第二次納税義務者及び保証人に対する納付通知書による告知(以下3において「告知」という。)と滞納処分とは、それぞれ目的及び効果を異にし、それ自体で完結する別個の行政処分であるから、告知処分の違法性は滞納処分には承継されない。したがって、告知処分に取り消し得べき瑕疵があっても、その処分が取り消されるまでは、滞納処分を行うことができ、また告知処分が取り消されても、その取消し前に完結した滞納処分の効力には影響がない(昭和43.3.28大阪高判参照)。
差押えをすることができる者
4
なお、滞納処分の引継ぎ(
差押えの対象となる財産
(財産の帰属)
5 差押えの対象となる財産は、差押えをする時に滞納者に帰属しているものでなければならない(20参照)。
(財産の所在)
6 差押えの対象となる財産は、法施行地域内にあるものでなければならない。 なお、財産の所在については、
(財産が金銭的価値を有すること)
7 差押えの対象となる財産は、金銭的価値を有するものでなければならない。
なお、次のことに留意する。
(財産が譲渡又は取立てができるものであること)
8 差押えの対象となる財産は、譲渡又は取立てができるものでなければならない。
なお、次のことに留意する。
(注)1 抵当権については、民法第376条《抵当権の処分》の規定により譲渡することができるが、この譲渡には、滞納処分による権利の移転は含まれない。
2 根抵当権は、民法第398条の12《根抵当権の譲渡》の規定により元本の確定前は根抵当権設定者の承諾を得て譲渡することができるが、この譲渡には、滞納処分による権利の移転は含まれない。
(譲渡禁止の特約がある財産の差押え)
9 譲渡禁止の特約がある財産でも、差し押さえることができる。 (注) 譲渡禁止の特約が登記されている永小作権の換価は、永小作権設定者の同意を得てその特約の登記を抹消した後でなければ、することができない(民法第272条ただし書、不動産登記法第79条第3号)。
差押えができる場合
(督促をした場合)
10
(公示送達による場合)
11 督促状又は納付催告書を公示送達により送達した場合は、
(納期限)
12
なお、延滞税及び利子税の納期限は、その計算の基礎となる国税の納期限とされている(
(注) 繰上請求は、繰上げに係る期限等を記載した繰上請求書(源泉徴収による国税で、納税の告知がされていないものについては、その請求をする旨を付記した納税告知書)を送達して行う(
(完納しないとき)
13
なお、本税額の全額が納付され、延滞税又は利子税だけが未納である場合には、督促がされている延滞税又は利子税だけについて差し押さえることができる(
(繰上差押え)
14
(賦課等の処分が争われている場合の差押え)
15 課税に関する処分、告知又は督促について、不服申立て又は訴訟が係属中であっても、その処分の取消しがされるまでは、その不服申立て又は訴訟に係る国税についての差押えをすることができる(
差押えができない場合
16 次に掲げる場合には、それぞれに掲げる期間内は、新たな差押えをすることができない。
なお、納税者が、保全差押金額又は繰上保全金額に相当する担保を提供して、保全差押え等をしないことを求めたときは差押えをすることができず(
財産の選択
17 差し押さえる財産の選択は、徴収職員の裁量によるが、次に掲げる事項に十分留意して行うものとする。この場合において、差し押さえるべき財産について滞納者の申出があるときは、諸般の事情を十分考慮の上、滞納処分の執行に支障がない限り、その申出に係る財産を差し押さえるものとする。
差押えの時期
(着手前の催告)
18 督促状若しくは納付催告書又は譲渡担保権者に対する告知書を発した後6月以上を経て差押えをする場合には、あらかじめ、催告をするものとする。
(夜間及び休日等の差押え)
19 夜間及び休日等(日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他一般の休日又は
財産帰属の認定
(一般の帰属認定)
20 財産が滞納者に帰属するかどうかの判定は、次に掲げる事項を参考として行うものとする(5参照)。 なお、有価証券の所持人が取立委任裏書又は質入裏書の被裏書人である場合には、その所持人の財産としてその有価証券を差し押さえることはできないこと。 (注) 登録国債、振替社債等については、券面は発行されない。 (注) 電子記録債権については、記録原簿の記録名義が滞納者であること(電子記録債権法第9条)。
(滞納者の名義でない場合の帰属認定)
21 20の(1)から(3)までに掲げる財産並びに(5)及び(6)に掲げる財産については、所持している者又は登記(記載又は記録を含む。以下21において同じ。)の名義人(以下21において「名義人等」という。)が滞納者でない場合であっても、帳簿書類、当事者の陳述等に基づき次に掲げる事項が明らかであるときは、その財産は、滞納者に帰属しているのであるから、滞納者の財産として差し押さえることができる。この場合において、その財産が20の(2)の登録国債又は(3)、(5)若しくは(6)の財産であるときは、登記の名義を滞納者に変更させる必要がある。 (注) 農地の所有権を移転する場合には、農業委員会、都道府県知事又は農林水産大臣の指定する市町村の長の許可がない限りその効力を生じないが、この許可を得ている場合においても、虚偽表示により所有名義人となっているにすぎない者は、農地の所有権を取得しない(昭和52.2.17最高判参照)。
(夫婦又は同居の親族の財産の帰属認定)
22 滞納者の配偶者(届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下(3)及び(4)において同じ。)又は同居の親族が主として滞納者の資産又は収入によって生計を維持している場合には、その滞納者の住居にある財産は、その滞納者に帰属するものと認定して差し支えない。ただし、次に掲げる財産はこの限りでない。
特殊な財産の差押え
(共有財産)
23 差し押さえるべき財産が法律の規定又は当事者の意思表示により共有となっている場合において、それぞれの持分が定まっていないとき(持分が明らかでないときを含む。)は、その持分は等しいものと推定して差し押さえることができる(民法第250条参照)。
(取り消し得べき法律行為又は契約の解除の目的となっている財産)
24 滞納者が、その財産について、売買、贈与その他による譲渡又は権利の設定等をした場合において、その譲渡等の行為が取り消し得べき行為(民法第5条第2項、第9条、第13条第4項、第95条第1項及び第2項、第96条第1項及び第2項等)であるとき又は契約を解除(同法第541条、第542条等)できるときは、
(代位行使されている権利)
24-2 他の債権者が滞納者に属する権利を代位行使して金銭の支払又は動産の引渡しを求めている場合(民法第423条の3)であっても、その支払又は引渡しがされるまでは、その権利に対して滞納処分をすることができる(同法第423条の5参照)。
(条件付又は期限付の譲渡の目的となっている財産)
25 差し押さえた財産が、差押えの当時条件付又は期限付の売買、贈与等の譲渡の目的となっていた場合(民法第129条参照)においては、差押え後、その条件成就又は期限の到来により権利を取得した者は、その権利の取得をもって差押債権者である国に対抗することができない(大正6.4.10行判参照)。ただし、その権利を保全する仮登記が差押え前からあるときは、その権利の取得をもって差押債権者である国に対抗することができる(不動産登記法第106条)。
(売買予約の目的となっている財産)
26 差し押さえた財産が、差押えの当時売買予約の目的となっていた場合には、差押え後におけるその売買を完結する意思表示により所有権を取得した者は、その所有権をもって差押債権者である国に対抗することができない。ただし、その権利を保全する仮登記が差押え前からあるときは、その所有権の取得をもって差押債権者である国に対抗することができる(不動産登記法第106条)。
(買戻しの特約等の目的となっている財産)
27 差し押さえた財産が、差押えの当時買戻しの特約又は再売買の予約の目的となっていても、差押え後における買戻権の行使又は再売買の予約完結権の行使による所有権の取得をもって、差押債権者である国に対抗することができない。ただし、買戻の特約の登記(民法第581条第1項、不動産登記法第96条)又は再売買の予約に係る所有権移転請求権の仮登記(不動産登記法第105条第2号)が差押え前にあるときは、その所有権の取得をもって差押債権者である国に対抗することができる(不動産登記法第106条)。
(譲渡担保財産)
28 譲渡担保財産は、譲渡担保権者に属する財産としてその譲渡担保権者の滞納国税につき差し押さえることができ、また、その譲渡人の滞納国税につき
(没収保全がされた財産)
29 没収保全(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)第22条第1項《没収保全命令》、同条第2項《附帯保全命令》若しくは第66条第1項《国際共助手続における没収保全命令及び附帯保全命令》、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下「麻薬特例法」という。)第19条第1項《没収保全命令》、同条第2項《附帯保全命令》、第21条《国際共助手続における没収保全命令》若しくは第23条《国際共助手続における附帯保全命令》又は国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(以下「国際刑事裁判所協力法」という。)第44条第1項《没収保全命令》若しくは同条第2項《附帯保全命令》に規定する没収保全命令による処分の禁止をいう。以下同じ。)がされた財産でも、滞納処分による差押えをすることができる(組織的犯罪処罰法第40条、麻薬特例法第19条第4項、国際刑事裁判所協力法第47条)。この場合において、徴収職員は検察官にその旨を通知しなければならないが、没収保全がされている金銭債権に対して滞納処分による差押えをした場合に、当該金銭債権に係る第三債務者が供託をしたときには、検察官に対する通知は必要ない(没収保全と滞納処分との手続の調整に関する政令(以下「没収保全と滞納処分との調整令」という。)第1条、国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律による没収保全と滞納処分との手続の調整に関する政令(以下「国際刑事裁判所協力法による没収保全と滞納処分との調整令」という。)第1条)。
(担保のための仮登記のある財産)
30 25から27までにおける仮登記が担保のための仮登記である場合には、
(仮差押え又は仮処分の目的となっている財産)
31 仮差押え又は仮処分の目的となっている財産については、
(強制管理等の目的となっている財産)
32 強制管理又は担保不動産収益執行の開始決定(執行法第93条、第180条第2号)の目的となっている不動産及び当該不動産の果実についても、滞納処分をすることができる。
(滞調法の適用を受ける財産)
33 強制執行又は担保権の実行としての競売が開始されている財産についても、滞調法の規定(第21条、第29条、第35条等)により、滞納処分をすることができる。
(再生手続開始の決定がされた者の財産)
34 再生手続開始の決定(民事再生法第33条)がされた者の財産については、国税は一般優先債権(
(特別清算の開始された会社の財産)
35
(法令等による譲渡制限がある財産)
36 麻薬、銃砲・刀剣類等その譲渡若しくは所有等について法令上制限が付されている財産(
37 滞納者の財産について留置権による競売が開始された場合には(執行法第195条参照)、滞納者が留置権者に対して有する残余金の交付請求権を差し押さえるものとする。 (注) 留置権による競売に対しては、交付要求をすることができない(
(未分離の果実)
38 農作物等土地から分離する前の天然果実については、おおむね1月以内に収穫することが確実であるものを除き、差押えをしないものとする(執行法第122条第1項参照)。
破産手続開始の決定がされた者の財産に対する滞納処分
(開始決定前の包括的禁止命令)
39 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、破産法第24条第1項第1号《強制執行等の中止命令》の規定による中止の命令によっては破産手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての債権者に対し、強制執行、仮差押え、仮処分又は一般の先取特権の実行若しくは留置権(商法又は会社法の規定によるものを除く。)による競売及び滞納処分等の禁止を命ずることができる(以下39において「包括的禁止命令」という。同法第25条第1項)。
なお、包括的禁止命令がされたときは、既にされている強制執行等の手続は、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間は中止されるが、既にされている滞納処分は、包括的禁止命令がされたときであっても、中止されない(同条第3項参照)。
(破産管財人又は破産裁判所に対する交付要求)
40 滞納者が破産手続開始の決定を受けた場合(破産法第30条)には、破産財団(同法第34条)に属する滞納者の財産に対する新たな滞納処分はすることができず(同法第43条第1項)、その破産手続において財団債権となる国税については破産管財人に対し、破産債権となる国税については破産裁判所(その交付要求に係る破産事件を取り扱う裁判所をいう。以下同じ。)に対して交付要求をする( (注) 1 国税の破産法上の地位は、次のとおりである。 2 破産管財人が交付要求に応じない場合には、破産裁判所に破産管財人に対する監督権の発動を促し、必要に応じ、破産管財人に対する損害賠償の責任を追及する(同法第75条第1項、第85条第2項参照)。
破産手続開始前の原因に基づいて生じた国税であって、破産手続開始当時、納期限から1年(包括的禁止命令期間を除く。)を経過しているものに係る本税並びに破産手続開始までの利子税及び延滞税(同法第98条第1項)。
(イ) 優先的破産債権とされる本税に係る破産手続開始後の利子税及び延滞税(同法第99条第1項第1号、第97条第3号)。
(ロ) 破産手続開始後の原因に基づく国税で破産財団に関して生じたもの(同法第99条第1項第1号、第97条第4号)。
(ハ) 各種加算税(同法第99条第1項第1号、第97条第5号)
(滞納処分の続行)
41 破産財団に属する財産について、破産手続開始の決定前に既に滞納処分に着手しているときは、破産手続開始の決定後も、その続行をすることができる(破産法第43条第2項)。この続行できる滞納処分には、破産手続開始の決定前に行った参加差押え、債権の二重差押え( (注) 破産手続開始の決定前に原債権を差し押さえた後、原債権が供託された場合における供託金還付請求権の差押えは、原債権の差押えの続行手続であり、破産手続開始の決定後の新たな滞納処分には当たらない(平成16.3.26大分地判参照)。
(行政機関等に対する交付要求)
42 行政機関等が破産手続開始の決定前に着手した滞納処分を破産手続開始の決定後に続行する場合には、その行政機関等に対して交付要求を行い、参加差押えは行わないものとする。この場合において、この交付要求に対する配当金は、破産手続開始の決定前に滞納処分による差押え又は参加差押えを執行している場合を除き、破産管財人に交付され、破産財団から弁済又は配当を受けることとなる(平成9.12.18最高判参照)。
(別除権の行使)
43 国税の担保として提供されている財産については、破産手続開始の決定後においても、破産手続によらないで別除権の行使として、
なお、次の点に留意する。
(注) 別除権とは、次のものをいう。
1 破産財団に属する財産について存する特別の先取特権、質権及び抵当権(電話加入権質に関する臨時特例法、工場抵当法等の特別法によるものも含む。)(破産法第2条第9項)
2 破産財団に属する財産について存する商法及び会社法上の留置権(破産法第66条第1項)
3 破産財団に属する財産について存する担保仮登記に係る権利(仮登記担保法第19条第1項)
(破産手続開始の決定後に取得した財産に対する滞納処分)
44 破産手続開始の決定がされた破産者が破産手続開始の決定後に取得した財産については、破産財団に属しないから(破産法第34条第1項参照)、財団債権に係る国税については、破産手続中であっても滞納処分をすることができる。
なお、破産者は、免責許可の決定が確定したときであっても、国税については免責されない(破産法第253条第1項第1号)。
会社更生法の適用を受ける会社の財産に対する滞納処分
(開始決定前の滞納処分等の中止命令等)
45 更生手続開始の申立てがあった場合において、裁判所は必要があると認めるときは、あらかじめ税務署長に意見を聴いた上で、会社の財産に対して既にされている滞納処分又は国税の担保のために提供された物件の処分(いずれも共益債権を徴収するためのものを除く。以下46、47及び49において「滞納処分等」という。)の中止を命ずることができる(会社更生法第24条第2項)。ただし、その中止の命令は、更生手続開始の申立てにつき決定があったとき又は中止の決定の日から2月を経過したときは、その効力を失う(同法第24条第3項)。
(開始決定前の包括的禁止命令)
46 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、会社更生法第24条第1項第2号《強制執行等の中止命令》又は第2項《滞納処分の中止命令》の規定による中止の命令によっては更生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての更生債権者等(同法第2条第13項参照)に対し、更生債権等(同条第12項参照)に基づく強制執行、仮差押え、仮処分、担保権の実行による競売、更生債権等を被担保債権とする留置権による競売及び滞納処分等の禁止を命ずることができる(以下46において「包括的禁止命令」という。同法第25条第1項)。包括的禁止命令がされたときは、既にされている滞納処分は、更生手続開始の申立てについての決定があった時又は包括的禁止命令の日から2月が経過した時のいずれか早い時まで中止される(同条第3項)。
さらに、裁判所は、更生手続開始の申立てがされた会社の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、あらかじめ税務署長に意見を聴いた上で、担保を立てさせて、中止された滞納処分の取消しを命ずることができる(同条第5項)。
(開始決定による滞納処分等の中止等)
47 更生手続開始の決定があったときは、その決定の日から1年間(1年経過前に更生計画が認可されることなく更生手続が終了し、又は更生計画が認可されたときは、当該終了又は認可の時までの間)は、更生会社の財産に対する滞納処分等はすることができず、更生会社の財産に対して既にされている滞納処分等は中止される(会社更生法第50条第2項)。なお、上記の滞納処分等の禁止及び中止の期間は、税務署長の同意を得た上で伸長されることがある(同条第3項、第4項)。
また、裁判所は、中止した滞納処分等の続行又は取消しを命ずることができる(同条第5項、第6項)。
(注) 更生手続開始の決定後において更生計画が認可されることなく更生手続が終了する場合は次のとおりである(同法第234条)。
1 更生手続開始の申立てについての裁判に対する即時抗告があった場合における更生手続開始の決定を取り消す決定の確定(同法第44条第3項)
2 更生計画不認可の決定(同法第199条)の確定
3 更生手続廃止の決定(同法第236条、第237条、第241条)の確定
(更生計画における納税の猶予、減免等)
48 更生計画において、国税について納税の猶予、換価の猶予、減免、承継その他権利に影響を及ぼす定めをする場合には、税務署長の意見を聴かなければならないとき(例えば、3年以下の期間の納税の猶予又は換価の猶予の定めをする場合等)と、その同意を得なければならないとき(例えば、3年を超える期間の納税の猶予又は換価の猶予の定めをする場合等)とがある(会社更生法第169条)。
(共益債権となる国税以外の国税の徴収)
49 更生会社に対する共益債権である国税以外の国税については、原則として更生手続により弁済を受けることになるので(会社更生法第47条第1項)、税務署長は、遅滞なく、その額、原因及び担保権の内容を更生裁判所に届け出なければならない(同法第142条第1号、第204条第1項第4号参照)。
なお、滞納処分等又はその続行が許される場合等においては、更生手続によらずに弁済等を受けることができる(同法第47条第5項、第7項)。ただし、更生会社の財産が共益債権の総額を弁済するに足りないことが明らかになった後は、新たな滞納処分等又は中止していた滞納処分等の続行は行わないものとする(昭和56.5.6大阪高判参照)。また、共益債権である国税以外の国税について、更生会社が税務署長に対して行った担保の供与又は債務の消滅に関する行為は、否認権の対象とならない(同法第86条)。
(注) 共益債権となる国税以外の国税としては、更生債権となる国税(更生手続開始前の原因に基づいて生じた国税。会社更生法第2条第8項)、更生担保権となる国税(更生手続開始当時更生会社の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権及び商法又は会社法の規定による留置権に限る。)の被担保債権であって、更生手続開始前の原因に基づいて生じたもの又は更生債権のうち、当該担保権の目的である財産の価額が更生手続開始の時における時価であるとした場合における当該担保権によって担保された範囲の国税をいう。同法第2条第10項)がある。
(共益債権となる国税の徴収)
50 共益債権となる国税については、更生手続によらないで更生債権及び更生担保権に先立って随時弁済されるが(会社更生法第132条第1項、第2項)、更生管財人がこの弁済に応じないときは、更生手続中であっても滞納処分をすることができる(この場合における差押登記の嘱託の受理については、昭和42.9.7付民事甲第2524号法務省民事局長通達参照)。ただし、更生会社の財産が共益債権の総額を弁済するに足りないことが明らかになったときは、担保権によって担保されるものを除き、まだ弁済されていない共益債権の債権額の割合に応じて弁済されることになるので(同法第133条第1項)、滞納処分をすることはできない(昭和54.2.16大阪地判参照)。この場合において、共益債権である国税に劣後する担保権により、その実行手続が開始されたときは、その国税について執行機関に交付要求をすることに留意する(同法第133条第1項ただし書参照)。 (注) 共益債権となる国税としては、次のものがある。
1 更生会社に対して更生手続開始前の原因に基づいて生じた源泉徴収に係る所得税、消費税、酒税等で、更生手続開始当時まだ具体的納期限の到来していないもの(同法第129条。昭和49.7.22最高判参照)
2 更生手続開始後の更生会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権に該当する国税(例えば、更生手続開始後の原因に基づいて生じた法人税等。同法第127条第2号)
差押えの効力
(処分の禁止)
51 差押えは、滞納者の特定財産の法律上又は事実上の処分を禁止する効力を有するものであり、差押え後におけるその財産の譲渡又は権利設定等の法律上の処分は、差押債権者である国に対抗することができない。この場合において、差押えにより禁止される法律上又は事実上の処分は、差押債権者である国に不利益となる処分に限られるから、例えば、差押財産についての賃貸借契約の解除、差押財産の改良等の処分はこれに含まれない。
なお、債権(電子記録債権を除く。)の差押えに当たっては、
(効力の保証)
52 差押えによる法律上又は事実上の処分の禁止は、
(効力の制限)
53 差押えによる法律上又は事実上の処分の禁止は、国、地方公共団体等の土地収用法等の規定に基づく土地収用、没収(刑法第19条等)等の処分を妨げるものでなく、かつ、これらの処分があったときは、差押えの効力は失われる。
(差押財産の消滅)
54 加入電話加入契約の解除により電話加入権が消滅する場合、民法第958条《相続人捜索の公告》に規定する期間内に相続人である権利を主張する者がないことにより特許権が消滅する場合(特許法第76条)等においては、その財産に係る差押えの効力は消滅することがある(実用新案法第26条、意匠法第36条、商標法第35条等)。
(時効の完成猶予及び更新)
55 差押えに係る国税については、その差押えの時から次に掲げる区分に応じ、それぞれに定める時までは時効が完成せず、それぞれに定める時から新たに時効が進行する( (注)1 差押えが不適法を理由として取り消されたときは、その取消しから6月を経過するまでは時効が完成しないが、時効の更新の効力は生じない(民法第148条)。 2 第三者の占有する動産若しくは有価証券、物上保証人の財産若しくは
なお、滞納者に対する通知の前に時効が完成した場合には、時効の完成猶予の効力を生じない。
(従物)
56 主物を差し押さえたときは、その差押えの効力は従物に及ぶ(民法第87条参照)。したがって、家屋を差し押さえた場合には、差押えの効力は、その家屋の従物となっている畳、建具等に及ぶ(
(果実)
57 元物を差し押さえたときは、その差押えの効力は、原則として、天然果実に及ぶが、法定果実には及ばない(
(相続等があった場合)
58 滞納者の財産について滞納処分を執行した後、滞納者が死亡し、又は滞納者である法人が合併により消滅した場合には、その滞納処分を続行することができる(
(継続的な収入)
59 給料、年金、賃貸借契約に基づく賃料債権、社会保険制度に基づく診療報酬債権(平成17.12.6最高決参照)その他これらに類する継続収入に対する債権の差押えの効力は、徴収すべき国税の額を限度として、差押え後に収入すべき金額に及ぶ(
(保険に付されている財産)
60 差押財産が損害保険に付され、又は火災共済協同組合の火災共済等の目的となっているときは、その差押えの効力は、保険金又は共済金の支払を受ける権利に及ぶ。ただし、財産を差し押さえた旨を保険者又は共済事業者に通知しなければ、その差押えをもってこれらの者に対抗することができない(
差押財産を譲り受けた者に対する滞納処分
61 不動産に対し、強制競売、強制管理、担保権の実行としての競売若しくは担保不動産収益執行による差押え、仮差押え又は滞納処分による差押え(保全差押金額又は繰上保全差押金額に係る差押えを含む。以下61において同じ。)の登記があるまま、第三者に所有権移転の登記がされた場合には、当該第三者の国税を徴収するため、当該不動産に対し滞納処分による差押え(参加差押え又は滞調法第29条の規定により行うことができる滞納処分による差押えで、当該第三者を滞納者とするものを含む。以下61において同じ。)をすることができる(この場合における差押登記の嘱託の受理については、昭和42.5.15付民事甲第299号法務省民事局長通達参照)。この場合において、当該第三者を滞納者として行った滞納処分による差押えに基づく換価は、譲渡人に対する差押え等の効力が失われるまでは行わないものとする。
なお、次に掲げる事項に留意する。
担保物処分の場合の差押え
62
滞納処分費の差押え
63 滞納処分費だけが滞納となっている場合には、
信託法と滞納処分の関係
(信託財産に属する財産に対する滞納処分)
64 信託財産に属する財産に対しては、信託財産責任負担債務(信託法第2条第9項)に係る国税(信託財産に属する財産について生じた国税を含む。)に基づく場合を除き、原則として滞納処分を執行することはできない(同法第23条第1項)。 (注)1 信託の清算により、残余財産は、最終的に残余財産受益者等、委託者若しくはその相続人その他の一般承継人又は清算受託者に帰属する(信託法第182条)から、残余財産の給付等が行われた後は、これらの者に帰属する財産として滞納処分を執行することができる。 2 自己信託(信託法第3条第3号)がされた場合において、納税者(信託の委託者兼受託者)が債権者(国税債権者を含む。以下第47条関係において同じ。)を害することを知って当該信託をしたときは、当該信託がされた時から2年間を経過した場合を除き、信託前に生じた納税者に対する国税に基づいて、信託財産に属する財産に対し滞納処分を執行することができる。ただし、受益者が現に存する場合において、その受益者の全部又は一部が、受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において、債権者を害すべき事実を知らなかったときは、滞納処分を執行することはできない(同法第23条第2項、第4項参照)。 3 信託財産に属する財産に対する国税滞納処分について不服がある場合には、受託者又は受益者は、通則法及び法の規定により不服申立てをすることができる(信託法第23条第6項)。
(詐害信託の場合の国税の徴収)
65 納税者が委託者である場合において、納税者が債権者を害することを知って信託をしたときは、信託法第11条《詐害信託の取消し等》の規定により、受託者が債権者を害することを知っていたか否かにかかわらず、受託者を被告としてその信託の取消しとその目的財産の返還(目的財産の返還ができないときは、それに代わる価額の償還)を裁判所に請求することができる。ただし、受益者が現に存する場合においては、その受益者の全部が受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害することを知っていたときに限り、信託の取消しを裁判所に請求することができる。 (注) 信託が終了することにより信託財産に属する財産が、委託者又はその相続人その他の一般承継人に帰属することとなる場合においては、それらの者の滞納国税を徴収するため、それらの者に代位して(
(受託者に対する滞納処分)
66 滞納者が受託者である場合において、その滞納国税が信託財産責任負担債務(信託法第2条第9項、第21条第1項)に該当するものであるときは、信託財産に属する財産のほか、受託者(滞納者)の固有財産に対しても滞納処分を執行することができる。ただし、滞納者が限定責任信託(同法第2条第12項、第216条)の受託者である場合、又は滞納国税の納付義務の成立後に就任した新たな受託者である場合は、受託者が清算受託者となって
(受益者に対する滞納処分)
67 滞納者が受益者である場合において、その滞納国税を徴収するため、受益権(信託法第2条第7項)に対して滞納処分を執行することができる。この場合における差押えの手続については、次のことに留意する。 (注) 信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により、信託を終了することが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして受益者の利益に適合するに至ったことが明らかである場合には、受益者の滞納国税を徴収するため、受益者に代位して(
違法性の承継
(滞納処分相互間)
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