更新日:2022年9月2日
取立て
(意義)
1
(取立ての範囲)
2 債権を差し押さえたときは、差押えに係る国税の額にかかわらず、被差押債権の全額を取り立てるものとする(
(取立権取得の効果)
3 徴収職員は、債権差押えにより、その債権の取立権を取得するから、徴収職員が自己の名で被差押債権の取立てに必要な裁判上及び裁判外の行為をすることができる。ただし、滞納者が有する解除権又は取消権等の形成権については、一身専属的権利及び人格的権利並びに取立ての目的・範囲を超えるような形成権の行使はすることができない。したがって、支払督促の申立て、給付の訴えの提起、配当要求、担保権の実行、保証人に対する請求又は破産手続、会社更生手続若しくは民事再生手続への参加(例えば、債権の届出、議決権の行使等)等の行為をすることができるが、債務の免除、債権の譲渡、弁済期限の変更等取立ての目的を越える行為をすることはできない。 (注) 1 国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立てがあった場合においても、被差押債権の取立ては制限を受けない( 2 債権差押えに基づく取立訴訟において、第三債務者は、差押えに係る国税の存否を争うことはできない(昭和52.1.28広島地判、昭和45.6.11最高判参照)。 3 生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、その取立権に基づき滞納者(契約者)の有する解約権を行使することができる(平成11.9.9最高判参照)。
(取立ての方法)
4 第三債務者が被差押債権をその履行期限までに任意に履行しないときは、徴収職員は、遅滞なくその履行を請求し、請求に応じないときは、3の債権取立てに必要な方法を講ずるものとする。
なお、被差押債権の取立てについては、給付の訴えの提起、支払督促の申立て、仮差押え又は仮処分の申請等をする必要がある場合には、法務省の関係部局に依頼して行う(法務大臣の権限法第1条)。
(担保権のある債権の取立手続)
5 抵当権等により担保される債権を差し押さえた場合において、第三債務者が被差押債権の取立てに応じないときは、次に掲げるところによる。 なお、流質契約のある商事質又は営業質の目的となっている財産については、流質期限の経過後は、滞納者の財産として差し押さえる。 なお、上記の債務者が取立てに応じないときは、執行法第193条《債権及びその他の財産権についての担保権の実行の要件等》の規定により担保権の実行又は行使をする。
(生命保険契約の解約返戻金請求権の取立て)
6 生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた場合には、差押債権者は、その取立権に基づき滞納者(契約者)の有する解約権を行使することができる(平成11.9.9最高判参照)。ただし、その解約権の行使に当たっては、解約返戻金によって満足を得ようとする差押債権者の利益と保険契約者及び保険金受取人の不利益(保険金請求権や特約に基づく入院給付金請求権等の喪失)とを比較衡量する必要があり、例えば、次のような場合には、解約権の行使により著しい不均衡を生じさせることにならないか、慎重に判断するものとする。 (注) 差押債権者による死亡保険契約等の解除は、保険者(保険給付の義務を負う者)が解除の通知を受けた時から1か月を経過した日に、その効力が生じる(保険法第60条第1項、第89条第1項)。ただし、介入権者(保険契約者以外の保険金受取人であって、保険契約者若しくは被保険者の親族又は被保険者である者)が、保険契約者の同意を得て、当該期間が経過するまでの間に、解約返戻金に相当する金額を差押債権者に支払うとともに、保険者に対しその旨の通知をしたときは、解除の効力は生じない(同法第60条第2項、第89条第2項)。
(電子記録債権の取立手続)
6-2 差し押さえた電子記録債権を取り立てた場合には、税務署長は電子債権記録機関に対して支払等記録を嘱託する(電子記録債権法第4条、第25条第1項)。
なお、第三債務者が電子記録債権の支払と引換えに支払等記録をすることについて税務署長の承諾を求めた場合には、取立てによる支払等記録の嘱託に代えて、これを承諾する(同条第3項)。
(取立ての責任)
7 徴収職員が被差押債権の取立てに当たって故意又は過失により違法に滞納者に損害を与えたときは、国は、国家賠償法第1条第1項《公権力の行使に基づく損害の賠償責任》の規定により、滞納者に対してその損害を賠償しなければならない場合がある。
(給付の受領の資格)
8 第三債務者から取り立てた金銭は、歳入歳出外現金出納官吏の資格において、受け入れる(出納官吏事務規程第1条第5項参照)。
(履行の場所)
9 被差押債権の履行場所は、原則として、次に掲げるとおりであり、被差押債権が持参債務であるときは、税務署の所在地が履行場所となる(10の(2)のただし書参照)。
なお、滞納者と第三債務者との間で金融機関に振込入金することにより履行することになっている場合であっても、同様である。
(注) 売買代金について、目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所が履行場所となる(民法第574条)。
(履行の時間)
9-2 被差押債権の履行に当たって、法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、履行の請求をすることができる(民法第484条第2項)。
なお、取引時間外に被差押債権の履行があったときも、それが弁済期日内であれば、正当な弁済の提供があったものとして取り扱う(昭和35.5.6最高判参照)。
(履行の費用)
10 被差押債権の履行の費用については、次による(民法第485条参照)。
取立不能の判定
11 第三債務者に弁済の資力がなく取立不能と認められる場合には、債権の差押えを解除するものとする。この場合において、取立不能の判定は、原則として強制執行等の強制的な取立手続をした後において行うが、第三債務者の資力その他の状況により、その債権が取立不能と認められるときは、強制的な取立手続をすることなく判定して差し支えない。
取立財産の差押え
12 第三債務者から取り立てた金銭(
徴収したものとみなす
13
なお、国税の納付に使用することができる有価証券を取り立てた場合において、その支払がなかったときは、滞納者の国税の納税義務は消滅しない(証券ヲ以テスル歳入納付ニ関スル法律第2条参照)。
弁済の委託
(意義)
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なお、弁済委託により受領した証券は債権の弁済に代えて受領するものではないから、第三債務者の債務(被差押債権)は、弁済委託により直ちに消滅するものではない。
(弁済受託に関する証書)
15 徴収職員は、弁済の委託を受けたときは、弁済受託に関する証書を弁済の委託をした者に交付しなければならない(
なお、当該証書は、
(弁済受託に関する証書に記載する延滞税の金額)
16 弁済受託に関する証書に記載する延滞税の金額は、弁済委託を受けた証券の種類により、それぞれ次に掲げる日までの金額とする。
なお、次のそれぞれに掲げる日の翌日以後の延滞税については、
(弁済委託に使用できる証券)
17 弁済委託に使用することができる証券は、証券ヲ以テスル歳入納付ニ関スル法律の規定に基づき国税及び歳入の納付に使用することができる証券以外の有価証券のうち、次に掲げる小切手、約束手形又は為替手形に限る取扱いとする(
なお、証券の券面金額が差押えに係る国税の額を超える場合であっても、被差押債権の金額を超えない限り、その証券による弁済の委託を受けることができる。
(注) 信用金庫、農業協同組合等は、小切手法ノ適用ニ付銀行ト同視スベキ人又ハ施設ヲ定ムルノ件により、小切手法の適用については銀行と同視されているので、これらのもののうち、手形交換所に代理交換の認められているものは、手形交換所に加入している銀行として取り扱う。
(弁済委託を受けることができる場合)
18 弁済委託を受けることができる場合は、最近において取立てが確実と認められる17の証券を提供した場合で、かつ、次に掲げる場合のいずれかに該当するときに限る取扱いとする(
(滞納者の承認)
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(取立ての費用)
20 弁済委託を受けた証券の取立てにつき費用を要するときは、その費用の額に相当する金額を第三債務者から併せて提供させなければならないが(
なお、取立費用は、徴収職員としての資格ではなく、歳入歳出外現金出納官吏の資格において受領するものである(出納官吏事務規程第1条第5項参照)。
(再委託)
21 弁済委託を受けた証券は、その取立てのため、徴収職員が確実と認める金融機関に再委託をすることができる(
(納付委託に関する規定の準用)
22 弁済委託については、
取立て
(意義)
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