昭51直法2-19
標題のことについて、日本公認会計士協会会長から別紙2のとおり照会があり、これに対し直税部長名で別紙1のとおり回答したから、了知されたい。
別紙1 |
直法2-18 昭和51年5月15日 |
日本公認会計士協会 会長 宮坂保清 殿 |
国税庁直税部長 熊谷文雄 |
圧縮記帳に関する会計処理及び表示について (昭51.4.7付調51第2号照会に対する回答) |
標題のことについては、貴見のとおりで差支えありません。 |
別紙2 |
調51第2号 昭和51年4月7日 |
国税庁 直税部長 熊谷文雄 殿 |
日本公認会計士協会 会長 宮坂保清 |
圧縮記帳に関する会計処理及び表示について(照会) |
日本公認会計士協会の会員が、企業の財務諸表(計算書類)の監査証明を行うにあたって、法人税及び租税特別措置法に規定する資産の圧縮損の計上の方法のうち、圧縮対象資産の取得価額を減額する方式を採用するときは、別紙「税法上の圧縮記帳に関する会計処理及び表示と監査上の取扱い」(日本公認会計士協会・監査委員会報告第23号昭和51年4月6日)によることとしたいと存じます。 つきましては、この取扱いに関する下記の各会計処理及び財務諸表の記載方法を採用する場合においては、税法上、格別の課税所得は生じないと承知しますが、念のためお伺いいたします。 |
記 |
1 国庫補助金、工事負担金等の受入れ、若しくは、収用又は特定の資産の譲渡等と、これに見合う圧縮対象資産の取得とが、同一事業年度において行われたときは、当該利益及び当該圧縮損(税法に規定する圧縮限度額以内の金額をいう。以下同じ。)を特別損益として計上するとともに当該圧縮損に計上した金額に相当する金額を当該圧縮対象資産の取得価額から減額するための会計処理を行う。この結果、当該利益及び当該圧縮損を当該事業年度に係る損益計算書の特別損益項目として記載するとともに、貸借対照表においては当該圧縮損の金額に相当する金額を当該圧縮対象資産の取得価額から控除する形式又は当該圧縮損相当額を当該取得価額から控除した残高のみを記載する方法による。 2 国庫補助金、工事負担金等の受入れ等のあった事業年度前の事業年度において、既にこれに見合う圧縮対象資産を取得しているときは、当該国庫補助金等の受入れ等のあった事業年度において、1に準じた会計処理及び財務諸表の記載を行う。 3 国庫補助金、工事負担金等の受入れ、若しくは、収用又は特定の資産の譲渡等のあった事業年度後の事業年度において、これに見合う圧縮対象資産を取得する見込のあるときは、当該圧縮損に相当する金額以内の金額を利益に計上することなく未決算特別勘定等適当な経過科目で処理し、これを国庫補助金等の受入れ等のあった事業年度に係る貸借対照表の負債の部に表示する。 当該未決算特別勘定の残高について、これに見合う圧縮対象資産を取得したとき又は税法に規定する指定期間の経過等により、当該残高の一部又は全部について精算すべき事由が生じたときは、当該事由の生じた事業年度において、当該精算すべき金額に相当する金額を当該残高から取崩し、これを固定資産売却益等の適当な科目をもって利益に計上し、また、これに伴う資産の圧縮損があるときは、当該圧縮損に相当する金額を損失に計上するとともに当該圧縮対象資産の取得価額から減額する。この結果、1に準じて財務諸表の記載を行う。 4 圧縮損に相当する金額を費用又は損失として計上し引当金勘定に繰入れる方法を採用している法人が、1に示す方法を採用することに変更したとき、法人が現に有している当該引当金の残高を当該圧縮対象資産の帳簿価額(又は取得価額及び減価償却引当金)から直接減額することにより、当初より1に示す方法を採用した場合と同様の結果となるよう所要の修正処理を行う。この結果、1に準じて貸借対照表の記載を行う。 なお、この変更に関する会計処理等について、理解を容易にするため、簡単な設例を示すと、およそ次のようになる。 |
〔設例〕 圧縮対象資産の取得価額 | 100,000千円 | 当初に圧縮損に計上し圧縮 記帳引当金勘定に繰入れた金額 | 80,000千円 | 法定耐用年数 | 10年 | 残存価額 | 取得価額の10%相当額 | 減価償却の方法 | 定額法 | 事業年度の期間 | 1年間 | 圧縮対象資産をある事業年度の期首において取得し(同時に圧縮記帳引当金を設定したものとする。)、取得後第3年目の事業年度において本文に示した会計処理方法の変更があった場合:
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(ケースⅠ) 当該資産の取得価額を基礎として減価償却費を計上するとともに、圧縮記帳引当金から当該償却見合相当額を毎事業年度末において取崩し、当該取崩益を計上しているとき、 ① 第2年目の事業年度末における当該資産等の状況 | | 資産の取得価額 | 100,000千円 | 減価償却引当金 (又は減価償却累計額) | △ 18,000千円 | ……100,000×(1-0.1)×1/10×2 | 帳簿価額 | 82,000千円
| 圧縮記帳引当金 | 65,600千円
| ……80,000-80,000×(1-0.1)×1/10×2 |
② 第3年目の事業年度における当該前期繰越分に対する修正仕訳 | | (借方) | (貸方) | 圧縮記帳引当金 | 65,600 | 資産の取得価額 | 80,000 | 減価償却引当金 | 14,400 | | | 又は: | 圧縮記帳引当金 | 65,600 | 資産の帳簿価額 | 65,600 |
③ 第3年目の事業年度における減価償却費の計上 | | 減価償却費 | 1,800 | 減価償却引当金 (または資産の帳簿価額) | 1,800 |
④ 第3年目の事業年度末における当該資産の状況 | | 資産の取得価額 | 100,000千円 | 圧縮記帳額 | 80,000千円
| 差引:修正取得価額 | 20,000千円 | 減価償却引当金 (又は減価償却累計額) | 5,400千円 | ……18,000-14,400+1,800(=1,800×3) | 帳簿価額 | 14,600千円
| ※ 圧縮記帳引当金は全額消去される。 |
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(ケースⅡ)当該資産の取得価額を基礎として減価償却費を計上するが、圧縮記帳引当金について当該償却見合相当額の取崩しを行つていないとき、 (この場合の圧縮記帳引当金の残高は、「財務諸表等の監査証明に関する省令取扱通達」(蔵証第2387号昭和49年12月25日)で認められている範囲を超えることとなるから、監査証明上除外事項の対象となることに留意すること。) ① 第2年目の事業年度末における当該資産等の状況 | | 資産の取得価額 | 100,000千円 | 減価償却引当金 (又は減価償却累計額) | 18,000千円
| 帳簿価額 | 82,000千円
| 圧縮記帳引当金 | 80,000千円 | ※ 税務上は、減価償却費の限度超過額の累計額が14,400千円となっていることになる。 |
② 第3年目の事業年度における当該前期繰越分に対する修正仕訳 | | (借方) | (貸方) | 圧縮記帳引当金 | 80,000 | 資産の取得価額 | 80,000 | 減価償却引当金 | 14,400 | 特別利益 (特定引当金戻入) | 14,400(注) | 又は: | 圧縮記帳引当金 | 80,000 | 資産の帳簿価額 | 65,600 | | | 特別利益 (特定引当金戻入) | 14,400(注) | (注) この場合の特別利益14,400千円は①に示す限度超過額に相当するものであるから、これは税務上認容され課税所得の対象とならない。 |
以下、(ケースⅠ)の③及び④と同様となる。 |
別紙 |
監査委員会報告第23号 |
税法上の圧縮記帳に関する会計処理及び表示と監査上の取扱い |
昭和51年4月6日 監査委員会 |
- 1 趣旨
現行税法は、国庫補助金、工事負担金、保険差益による固定資産の取得(法人税法の規定によるもの)及び収用又は特定の資産の買換等(租税特別措置法の規定によるもの)の場合、圧縮額を費用又は損失として計上し当該資産を減額する方法(以下「圧縮記帳方式」という。)とこれに替えて、当該損費を引当金勘定に繰入れる方法(以下「引当金方式」という。)を認めており、更に非減価償却資産に限って確定決算に基づく利益処分による積立金方式をも併認している。 引当金方式による場合の当該圧縮引当金について、これを商法第287条ノ2の引当金とみなして取扱うためには、商法計算書類規則第45条第1項第6号の規定に基づきその設定の理由等の記載を要することとなるが、これを記載することが困難な場合もあると考えられる。 他方、これらのうち、収用又は特定の資産の買換等について圧縮記帳方式を採用する場合、商法第285条の取得原価主義の規定に照して問題なしとしないとも考えられる。 しかし、企業会計原則が、国庫補助金、工事負担金等で取得した資産について圧縮記帳方式を認めていることに照して、収用又は特定の資産の買換等の場合も、極めてこれに類似している。この点にかんがみ、収用又は特定の資産の買換等について圧縮記帳方式を採用する場合も監査上妥当な会計処理とみなして取扱うこととする。 本報告書においては、税法上認められているものについての圧縮記帳方式を採用する場合の会計処理及び表示と監査上の取扱いについて検討する。 なお、税法の規定により、利益処分による積立金方式が認められているものについては、優先して利益処分による積立金方式を採用することが望ましい。 - 2 圧縮記帳方式による会計処理及び表示
(1) 国庫補助金、工事負担金等の受入れ、若しくは、収用又は特定の資産の譲渡等と、これに見合う圧縮対象資産の取得とが、同一事業年度において行われた場合には、当該利益及び当該圧縮損を特別損益として計上するとともに当該圧縮額を当該資産から減額するための会計処理を行う。この結果、当該利益及び当該圧縮損を損益計算書にそれぞれ特別損益の項目として記載するとともに、貸借対照表においては当該圧縮額を当該資産の取得価額から控除する形式によるか又は当該控除後の残高のみを記載し当該圧縮額を注記する方式のいずれかによることとする。また、関係附属明細表に当該圧縮の旨及び金額を注記する。(注1) (2) 国庫補助金、工事負担金等の受入れ等のあった事業年度前の事業年度において、既にこれに見合う圧縮対象資産を取得している場合には、当該国庫補助金等の受入れ等のあった事業年度において、(1)に準じた会計処理及び表示を行うこととする。 (3) 国庫補助金、工事負担金等の受入れ、若しくは、収用又は特定の資産の譲渡等のあった事業年度後の事業年度において、これに見合う圧縮対象資産を取得する見込の場合、当該圧縮見込相当額は、当該受入れ等のあった事業年度においてはこれを利益と認識しないで、未決算特別勘定等適当な科目で処理し、これを貸借対照表のその他の流動負債に属するものとして表示するとともに、その旨及び金額を貸借対照表等に注記することとする。 (4) (3)により設定された未決算特別勘定に見合う圧縮対象資産を取得したとき又は税法に規定する指定期間の経過等により、当該一連の取引の一部又は全部について精算すべき事由が生じたときは、当該事由の生じた事業年度において、当該精算相当額を未決算特別勘定より取崩し、これを固定資産売却益等の適当な科目をもって特別利益に計上し、また、これに伴う資産の圧縮額がある場合には、当該圧縮額を特別損失に計上することにより、それぞれ損益計算書に記載することとする。この場合の貸借対照表における表示の方法については(1)に示した各方式に準ずることとする。 - 3 既に設定されている引当金の取扱い
既存の圧縮引当金を有する会社が、圧縮記帳方式を採用することとなったときは、当該引当金を直接取崩すことにより、当該圧縮対象資産の取得価額及び減価償却累計額の組替のための会計処理を行い、2(1)に準じた方法により貸借対照表における表示の統一を行うこととする。また、当該変更を行った場合は、その旨及び金額を貸借対照表及び関係附属明細表に注記する。(注2) この場合における変更については、監査上、表示の変更に準ずるものとして取扱うことができることとする。 - (注1) 圧縮額控除後の残高を記載する形式の場合の例示
たとえば、代替資産(圧縮対象資産)として取得した建物の取得価額が100,000千円、圧縮記帳額80,000千円、耐用年数10年、残存価額10%、定額法で償却の場合、取得後2年経過の場合には次のような表示を行う。 - (1) 貸借対照表の借方表示
建物 | 20,000,000 | | 減価償却引当金 | 3,600,000 | 16,400,000 |
- (2) 貸借対照表の注記
- (注) 建物については、取得価額から圧縮記帳額80,000千円が控除されている。
- (3) 有形固定資産明細表の注記
- (注) 建物の当期減少額には、圧縮記帳額80,000千円が含まれている。
- (4) 減価償却費明細表の注記
- (注) 建物の取得価額は圧縮記帳額80,000千円が控除されている。
(注2) たとえば、(注1)の例示の場合、2年経過後の買換資産圧縮引当金の期末残高は65,600千円となっている。この場合、組替表示を第3年度末で行った場合の表示は次のようになる。
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昭51直法2-19
標題のことについて、日本公認会計士協会会長から別紙2のとおり照会があり、これに対し直税部長名で別紙1のとおり回答したから、了知されたい。
別紙1 |
直法2-18 昭和51年5月15日 |
日本公認会計士協会 会長 宮坂保清 殿 |
国税庁直税部長 熊谷文雄 |
圧縮記帳に関する会計処理及び表示について (昭51.4.7付調51第2号照会に対する回答) |
標題のことについては、貴見のとおりで差支えありません。 |
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