更新日:2022年9月2日
債権者代位権
1 納税者の資力との関係
(注) 納税者が無資力であるかどうかの判定に当たっては、第二次納税義務者、保証人等の有無及びその資力は考慮する必要がない。
2 詐害行為取消権等の代位行使
納税者の有する代位権又は詐害行為取消権(以下
3 削除
削除
詐害行為取消権
4 財産権を目的とする行為
取消権の対象となる行為は、財産権を目的とする行為である(民法第424条第2項)。したがって、離婚に伴う財産分与(同法第768条)、遺産分割協議(同法第907条)、会社の新設分割(
5 納税者の悪意
また、この納税者の悪意は、一般的に債権者を害することを知っていれば足り、特に租税債権者を害することを知っていることは必要でない。
(注)1 納税者が善意であるときは、それについて過失があっても、取消権が成立しないことに留意する(大正5.10.21大判)。
2 納税者の行為が相当の対価を得てした財産の処分行為(民法第424条の2)である場合は、その対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(以下この条関係において「隠匿等の処分」という。)をする意思を納税者が有している必要がある(同条第2号)。
3 納税者の行為が既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為(民法第424条の3)である場合は、納税者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもってその行為を行っている必要がある(同条第1項第2号、第2項第2号)。
6 詐害行為後に成立した国税
取消権の被保全債権は、詐害行為の前の原因に基づいて生じたものに限られる(民法第424条第3項)から、詐害行為の前に納税義務が成立している国税は取消権の被保全債権となる(昭和42.3.14最高判)が、詐害行為の時に納税義務が成立していない国税であっても、その成立の基礎となる法律関係又は事実があり、その成立が高度の蓋然性をもって見込まれる場合には、取消権の被保全債権となる(平成2.9.27大阪高判、平成9.10.30名古屋高判参照)。
なお、詐害行為の前に国税の納税義務が成立していた場合には、その国税について詐害行為以後に成立した延滞税も取消権の被保全債権となる(昭和63.10.20東京高判)。
7 納税者の無資力
この条の規定に基づく取消権を行使するに当たっては、詐害行為の時から取消権を行使する時まで納税者の無資力が継続している必要がある(昭和12.2.18大判)。
なお、納税者が無資力であるかどうかの判定に当たっては、第二次納税義務者、保証人等の有無及びその資力は考慮する必要がないが、第二次納税義務者、保証人等から国税の全額を徴収できると認められるときは、取消権を行使しないものとする。
8 同時交換的な行為
新たな借入行為とそのための担保の設定等の同時交換的な行為についても、民法第424条の2(相当の対価を得てした財産の処分行為の特則)の規定により、この条の規定に基づく取消権の行使の対象となる。
9 代物弁済等
納税者がした代物弁済等の債務の消滅に関する行為については、民法第424条の3(特定の債権者に対する担保の供与等の特則)の規定により、この条の規定に基づく取消権の行使の対象となる。
なお、納税者と受益者との間に通謀がなかったこと等により代物弁済等が同法第424条の3の規定に該当しない場合であっても、その代物弁済等が過大と認められる部分については、同法第424条の4(過大な代物弁済等の特則)の規定により、この条の規定に基づく取消権の行使の対象となる。
10 転得者の悪意
転得者に対して取消権を行使する場合に必要とされる転得者の悪意とは、その転得者及びその前の全ての転得者(以下この項において「転得者等」という。)が、それぞれの転得の時に、納税者の行為が債権者を害することを知っていることを意味し(民法第424条の5)、取消権の行使の相手方である転得者が、受益者及び他の転得者が悪意であることを知っていることは要しない。
(注) 納税者の行為が既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為(民法第424条の3)である場合は、その転得者等が、納税者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもってその行為をしたこと(同条第1項第2号、第2項第2号)についても知っている必要がある。
11 財産の返還請求権の差押え
この条の規定に基づく取消権を行使する場合において、その取消しとともに財産の返還若しくはその価額の償還として金銭の支払又は動産若しくは有価証券の引渡しを求めるときは、その取消しの判決の確定により納税者が将来取得すべき金銭の支払請求権又は動産若しくは有価証券の引渡請求権を差し押さえる(12参照)。
なお、詐害行為が取り消される前においては、その差押えに係る取立て等を行うことはできないことに留意する。
12 取消し後の滞納処分等
詐害行為の取消しがあった場合における滞納処分等は、次によるものとする。
(注) 詐害行為が取り消された場合には、受益者又は転得者は、滞納者に対し、その行為についてした反対給付の返還又は価額の償還(その行為が弁済等である場合には消滅に係る債権の履行)を請求することができる(民法第425条の2から第425条の4まで)が、その請求との同時履行(同法第533条)を主張して取消しに係る財産の返還又は価額の償還を拒むことはできない。
13 会社法第832条等との関係
納税者の行為が
債権者代位権
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