「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」報告書について

~対話先進国に向けた情報開示と株主総会プロセスのあり方~

経済産業省 企業会計室 畠山 多聞

( 32頁)

Ⅰ.はじめに

本年4月,経済産業省では,「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」(座長:伊藤邦雄一橋大特任教授)(以下「本研究会」という)において報告書(以下「本報告書」という)を取りまとめ,公表した

本報告書では,企業と投資家(株主を含む)が質の高い対話を通じて相互理解を深め,中長期的な企業価値創造を行うための環境づくりを提言している。具体的には,統合的な企業情報開示や中長期の投資判断に有用な情報の充実,対話型の株主総会プロセスに向けた日程の設定や電子化の促進等,「対話先進国」に向けた方策を示している。

本稿では,本研究会における基本的な問題意識,議論および提言の概要について紹介することとしたい。なお,文中意見にわたる部分は,筆者の個人的な見解である。

Ⅱ.基本的な問題意識

平成26年6月に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014②では,日本の「稼ぐ力」を取り戻すための方策として「コーポレートガバナンスの強化,リスクマネーの供給促進,インベストメント・チェーンの高度化」を通じた企業の生産性・収益性向上を目指す施策が掲げられている。その背景には,生産性向上により企業収益を拡大し,...