会計不正の構造【file 07】子会社出向者による不正

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・タイプ(不正の種類): 子会社出向者現金着服

・業種・業態:製造業

・手法・手口:不正振出小切手の換金

今回は,子会社(A社)へ出向し,人事,総務,財務,および経理業務全般の管理者となった総務課長甲氏(のちに総務部長に昇格)により,10年以上にわたり単独で実行された不正事例を取り上げる。不正総額は20億円台の規模。

出向先の子会社において,銀行対応や借入・返済といった財務業務,経理仕訳の作成・承認などの経理業務のほか,広範な業務で権限を有する管理者の不正を,いかに防止・発見すればよいのかについて考える。

1.会計不正の概要

(1)会社の状況

親会社(B社)は製造業を営む老舗企業であり,国内外にA社含め多数の子会社を持つ。A社は商社機能を有し,外部から材料を仕入れてB社へ販売するほか,B社から製品を仕入れ外部に販売している。

A社は,取引銀行に当座預金口座を保有,小切手帳を交付されており,小口現金の補充,各種納税,仕入代金支払等の業務にわたって小切手を使用していた。

A社はその他,軽油(相場商品)を外部より仕入れ,B社グループ物流会社(C社)に販売する業務も手掛ける。なお,軽油現物は,D社等グループ各社...