IFRSをめぐる動向 第91回 IASBにおける資本の特徴を有する金融商品に関する議論について

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 宮治 哲司

( 10頁)

1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。今回は,IASBにおける,資本の特徴を有する金融商品に関する最近の議論について取り上げます。IASBにおける議論は,IAS第32号「金融商品:表示」(以下,IAS第32号といいます。)の原則の適用が困難であることおよび,IAS第32号の原則の適用により,一部の金融商品の負債または資本への分類について,不適切な結果を招くという批判に対応する目的で,2008年2月にディスカッション・ペーパーを公表したことから始まります。このディスカッション・ペーパーの解説については本連載の第7回「資本の特徴を有する金融商品」( 第2968号 )をご覧ください。また,本連載の第54回「負債と資本」( 第3121号 ),第66回および第67回「負債と持分の区別」( 第3178号 および 第3180号 )も併せてご覧ください。なお,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.これまでの経緯

(1)プロジェクトの中断とリサーチ・プロジェクトとしての復...