インドにおける高額紙幣廃止‐ブラックマネー撲滅に向けて

KPMGインド アソシエイト・ディレクター 公認会計士,米国公認会計士 宮下 準二

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1.はじめに

2016年11月8日(火),インドのナレンドラ・モディ首相は,「現在発行されている3種類の紙幣のうち2種類が,これから4時間後に有効性を失う」旨をテレビ演説にて突如表明しました。容易に想像がつくように,社会は大混乱となり,執筆時点(2016年11月15日)においても,依然,銀行前には長蛇の列が発生し,取り付け騒ぎのような状況が続いています。「一般市民の生活は完全に混乱」との報道が連日なされ,政府は批判の矢面に立たされています。一方,今回の決定を英断として捉える向きもあり,少なくはないインド企業が今回の措置に対して歓迎の意を表明しています。

今回の高額紙幣廃止に関して,導入の背景と狙いについて解説します。

なお,本文中の意見に関する部分については,筆者の私見である事をあらかじめお断りいたします。

2.措置概要とその影響

本措置の概要は,以下のとおりです。

措置前発行紙幣:100ルピー,500ルピー,1,000ルピー

廃止紙幣:500ルピー,1,000ルピー

廃止紙幣有効期限:2016年11月9日深夜0時

措置後発行紙幣:100ルピー,500ルピー(新),2,000ルピー(新)

廃止紙幣の預入:...