Q&Aコーナー 気になる論点(179) 支払義務と負債の計上

‐実務対応報告公開草案第48号の提案②‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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ASBJが2016年12月16日に公表した 実務対応報告第33号 「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」では,支払義務を負っているリスク対応掛金の総額を負債として計上しないこととしています。

他方,2016年12月22日公表の実務対応報告公開草案第48号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」では,支払義務を負っている一定の更新投資について,運営権者は,支出見込総額の現在価値を負債として計上することを提案しています。

支払義務と負債の計上との関係については,IASBでも議論されていますが,なぜ会計処理に相違が生じているのでしょうか。

A:

実務対応報告公開草案第48号において,一定の更新投資は,双務未履行契約ではなく,管理者等が将来の公共施設等を使用させる義務を履行したと解せば,会計処理の相違を説明できると考えられます。

<解説>

リスク対応掛金に係る資産・負債の計上

実務対応報告第33号が対象としているリスク分担型企業年金では,財政悪化リスク相当額(通常の予測を超えて財政の安定が損なわれる危険に対応する額)が,以下のように分担され,その範囲は労...