実務対応報告公開草案第52号 「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」等の解説

企業会計基準委員会 ディレクター 前田 啓

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Ⅰ.はじめに

企業会計基準委員会(ASBJ)は,平成29年5月10日に,実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」(以下「本公開草案」という。)及び企業会計基準適用指針公開草案第57号(企業会計基準適用指針第17号の改正案)「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理(案)」(以下「複合金融商品適用指針案」という。なお,現行の当該適用指針を「複合金融商品適用指針」という。)を公表した (コメント期限:平成29年7月10日)。本稿では,主に本公開草案の概要を紹介する。

なお,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

Ⅱ.公表の経緯

近年,企業がその従業員等に対して権利確定条件が付されている新株予約権を付与する場合に,当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引(当該取引において付与される新株予約権を「権利確定条件付き有償新株予約権」という。以下同じ。)が見られる。この取引に関する会計処理の取扱いは必ずしも明確ではなかったため,平成26年12月...