弁護士　安部　健介
　弁護士　青山　慎一

このたびの金融商品取引法の改正で新たに導入されたフェア・ディスクロージャー・ルールは，上場企業からアナリスト・投資家への早耳情報的な選択的情報開示による投資家間の情報格差を防ぐことで公正な資本市場の形成を図るものです。一方で，このルールが上場企業とアナリスト・投資家との間の対話を妨げることにならないかという懸念も持たれるところです。

本稿では，ルールのポイントをQ&A形式でできるだけ分かりやすく解説するとともに，上記懸念を踏まえて上場企業に望まれる対応についてふれたいと思います。なお，本文中の意見にわたる部分は，筆者らの個人的な見解であり，筆者らの所属する団体の見解ではありません。

Ｑ1　"フェア・ディスクロージャー・ルール"ってどういうルール？

Ａ1　フェア・ディスクロージャー・ルールとは，上場企業の役員や広報・IR担当者などが証券会社のアナリストや投資家などにまだ公表されていない重要な企業の情報を伝えたときには，意図的な場合は同時に，意図的でない場合は速やかに，その情報を公表しなければならないというルールです。

Q2　証券取引所の適時開示ルールやインサイダー取引規制があるのに，どうしてフェ...