これでスッキリ!IFRS保険会計Q&A 第3回 保険負債測定のための諸要素

有限責任 あずさ監査法人  藤原 初美
有限責任 あずさ監査法人  黒澤 尚史
有限責任 あずさ監査法人  山下 光

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<はじめに>

約20年に及ぶ議論を経て,2017年5月に国際会計基準審議会(IASB)がIFRS第17号「保険契約」(以下,「IFRS第17号」または「本基準書」という)を公表した。本連載では,難解といわれるIFRS第17号を分かりやすく解説するため,IFRS第17号の適用にあたり検討が必要となる主な論点をQ&A形式で説明する。第3回目の本稿では,保険負債測定のための諸要素のうち,主に原則的な測定方法であるビルディング・ブロック・アプローチ(以下BBA)において重要となる論点を取り上げる。なお,文中の意見にわたる部分は私見である。

(注)特に断りのない限り,項番号および付録は本基準書のものを指す。

Q1.

IFRS第17号では,日本の保険会計にはない契約上のサービス・マージン(以下CSM)や,不利な契約という概念があると聞きました。一体どのような考え方でしょうか?

A1.

BBAにおいて,保険負債は将来キャッシュ・フローの見積りに基づく現在価値として測定されるため,当該保険負債の構成要素には保険契約から生じる将来利益の現在価値が含まれている。この将来利益の現在価値がCSMであり,IFRS第17号の...