<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第4回 会計基準の役割(その1)

解説

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

( 26頁)

会計基準は正義の味方?

正義の味方という言葉は1958年に始まった月光仮面というテレビドラマの主題歌で使われ,その後のテレビドラマの基本的なパターンとなった。すなわち,主人公が警察などに成り代わって悪を退治し,正義を救うというパターンである。実は会計基準にはこれと似た役割が期待されている。

IFRS概念フレームワーク第1.5項にはこういう記述がある。「現在の及び潜在的な投資者,融資者及び他の債権者の多くは,情報提供を企業に直接要求することができず,必要とする財務情報の多くを一般目的財務報告書に依拠しなければならない。したがって彼らは一般目的財務報告書が対象とする主要な利用者である。」すなわち,会計基準の役割は情報提供を企業に要求することが出来ない投資者などに「成り代わって」企業に必要な情報を要求することであると述べている。そしてIFRS概念フレームワークはこうも続けている。「企業の経営者も企業に関する財務情報に関心がある。しかし,経営者は,必要とする財務情報を内部で入手できるので,一般目的財務報告書に依拠する必要はない(概念フ...