Q&Aコーナー 気になる論点(265) IASBにおけるのれんの議論(4)

解説

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

‐開示の改善‐
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 国際会計基準審議会(IASB)が2020年3月に公表したディスカッション・ペーパー(DP)「企業結合-開示,のれん及び減損」(のれんDP)では,のれんの減損損失を大きく変えないこと,また,現状どおり,のれんを償却しないことを提案しています。今回の提案は,財務報告の改善には役立たないのでしょうか。

IASBの予備的見解の1つは,取得に関する開示の見直しであり,のれんDPでは,IFRS第3号「企業結合」の開示の要求事項を改正することにより,財務報告の改善を考えています。

<解説>

買収後の成果に関する開示の改善(1)‐問題の所在

のれんDPでは,利害関係者からのフィードバックに応じて,IASBは,以下を調査したとしています(1.6項)。

(1) のれんの減損損失を合理的なコストで適時に認識するのために,減損テストをより効果的にすることができるかどうか。また,コストと複雑性を軽減するために,減損テストを改正するかどうか

(2) のれんの償却を再導入する必要があるかどうか

(3) のれんに無形資産を含める必要があるかどう...