INTERVIEW「中小事務所の人材・IT,経営基盤強化を支援」

~公認会計士法改正へ向けた取組みを聞く~
( 14頁)
日本公認会計士協会 会長 手塚 正彦

<編集部より>

公認会計士法等改正に関する審議が本年の通常国会で行われる。監査の信頼性向上に向けて上場会社監査事務所の登録制度を法定化するほか,監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限を見直すなどの施策が盛り込まれる( No.3538・4頁 など)。ここでポイントになるのは日本公認会計士協会(JICPA)の役割だ。金融審議会の公認会計士制度部会が示した報告では,特に中小規模の監査事務所に対して適格性を確認し,育成支援による経営基盤の強化などを行うとされている。今後,JICPAは監査事務所をどのように支援していくのか,現状の課題と今後の取組みを手塚正彦会長に聞いた。

1.リソースに見合った監査を

―公認会計士制度部会で,上場会社監査事務所登録制度に法的な枠組みを導入することになった議論の流れをどのように受け止めていますか。

公認会計士制度部会では,不正がなくならないことに対して監査にも相応の責任があるとの見方が委員の大勢を占めていたと感じました。現実に上場会社による不正や粉飾決算が繰り返されています。また,この数年で厳しい行政処分を受けた監査事務所や,JICPAの品質管理レビューで重要な指摘を受けていたにもかかわらず,それが改善されていないために行政処分勧告を受けた事務所もあります。欧米でも自主規制だけに委ねているケースはほぼないので,国際的な制度との調和の観点からも妥当であるというのが規制当局側の考えでしょう。以上を踏まえると,登録の実効性を高めるために法律で定めることには反対ではありませんでした。

ただし,登録制度の具体的な制度設計と運用についてはJICPAに委ねてほしいと要望しました。国内外ともに監査に対する規制が強化され,監査基準などが詳細になっています。このような状況で行政が監査法人の日常の業務運営を直接検査・監督するようになると,監査事務所側は,基準・規則・監督上の指針などに準拠する対応に注力し,検査で重大な指摘を受けないことを第一の目的とするようになりかねません。結果として,プロフェッショナルとしての判断力が弱くなり,不正の発見や企業に対する指導力の面でかえって現場の力を削ぐことを心配しています。米国で公開会社会計監督委員会(PCAOB)が設立された時も当局から指摘を受けないことが目的になったと米国のファームから聞きました。規制の強...