[全文公開] 事例でわかる 実務で使える 税効果会計 第1回 税効果会計の決算書分析のポイント

 公認会計士 内田 正剛

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はじめに

「税効果会計は難しい」「他社がどうしているか知りたいけど他社には聞けない」。こんな悩みをお持ちの方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。そんなときに役立つのが他社の開示事例ですが、どう分析したらいいか気になると思います。そこで今回からお伝えする当連載では、「税効果会計の注記事例の分析の仕方」や「日常の経理業務で使える知識」にフォーカスした内容をお届けします。

今回の解説は、週刊経営財務の誌面版とデータベース(DB)版でお届けします。誌面版では、注記事例の分析や実務で使える情報をメインに解説します。そしてDB版では、「図解で整理!税効果会計の基礎と考え方」と題して、税効果会計をしっかり理解したい初心者向けにわかりやすく簡単に解説します。ともに動画でも解説していますので、記事を読みつつご視聴いただければ、より理解が深まります。

〈掲載予定〉

回数 テーマ 掲載号
税効果会計の決算書分析のポイント 3562
繰延税金資産・負債に関する注記分析のポイント 3565
欠損金注記の分析方法 3568
回収可能性の分析方法 3571
会社分類の推測方法 3574
税効果会計の決算・監査対応 3577
計算表と別表5(1)の作り方 3580
注記事例から読み解く連結の税効果 3583
税率差異の注記の読み方 3586
10 税効果会計の業務フロー・まとめ 3588

※掲載内容や予定は変更になる場合があります。

それでは誌面版第1回では、「税効果の決算書分析で見るべきポイント」を解説します。

<今回の目次>

1.税効果の決算書分析で見るべきポイント

2.【事例紹介】税効果の決算書分析をしてみよう

1.税効果会計の決算書分析で見るべきポイント

(1)どう分析する?

「注記や公表情報と照らし合わせながら分析する」。これが税効果会計の決算書分析のコツです。税効果会計というと、貸借対照表の繰延税金資産・負債や法人税等調整額を眺めたくなりますが、これらは会計と法人税の一時的なズレ(=一時差異)を出発点に、色々な見積り作業を経て計算されるものです。逆にいうと、出てきた数字だけを見ていてもその数字が正しいのか、どういう意味なのかがつかめず、ピンとこないのです。

(2)分析から得られるもの

決算書の分析に欠かせない情報や視点を解説する前に、分析から得られるものを知っておくとイメージしやすくなるので紹介します。

①会社の将来の収益力がわかる

将来のことを見積もりながら数字を作っていくのが、税効果会計(特に繰延税金資産)の大きな特徴です。具体的にいうと、繰延税金資産は将来の儲け(=所得)を根拠に金額を決めていくので、会社の将来の業績などの予測が欠かせません。つまり繰延税金資産の金額には、会社の事業の将来性に対する考え方が反映されています。ですから、業績予想や中長期計画などと共に分析する必要があります。

また、繰延税金資産は将来減算一時差異(以下「減算差異」とします)に税率をかけて計算しますが、ざっくり残高に税率をかけているわけではなく、将来減算一時差異が解消する事業年度ごとに計算をしています。このため分析にあたっては、将来減算一時差異がいつ解消するのかを予測する作業も欠かせません。このように、分析することが「会社の将来の収益性を調べる」ということにつながり、理解を深める効果があります。

②繰延税金資産の特徴がわかる

いまの日本の会計・法人税のルールでは、繰延税金資産が発生しやすくなっています。会計が見積りの費用や損失を積極的に決算へ反映させる動きを見せる一方で、法人税は債務確定主義の考え方に従って費用(≒損金)を極力遅く認める傾向が強いからです。つまり将来減算一時差異が比較的多額になりがちなので、それに税率をかけて計算される繰延税金資産も金額が大きくなり決算書へ与えるインパクトも大きいのです。ですから、注記事項「繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原因別の内訳」を見て、どのような原因でどれほど繰延税金資産が発生しているのかを知ることは、とても有益な分析作業になります。

③業績へ与えるインパクトがわかる

繰延税金資産を計上すると、利益を増やす方向へインパクトを与えます。逆に、繰延税金資産を取り崩すときは、利益を減らす(≒損失を拡大させる)方向へ動きます。会社の業績が悪化すると、かなりの割合で将来の業績予測にもネガティブな影響を与えます。そうすると、将来の業績予測をベースに計算する繰延税金資産も計上できる金額が少なくなり、結果として取崩しの可能性が高まります。このように、業績へ与える潜在的な影響への理解も深まります。

【図1】分析から得られるもの

(3)見るべきポイント

以上の前提知識を踏まえて、どんな情報をどのように照らし合わせて分析すればいいかのアイデアを紹介します。

①分析の注意点 - 傾向分析

1つの事業年度ではなく、複数の事業年度の傾向分析が有益です。通常では起こらない突発的な要因を取り除いた分析ができるからです。会社を取り巻く環境は常に変化していきますし、近年世界的に流行している新型コロナは通常でない出来事の最たる例です。売上高が半減するような「まさか!」という変化が現実に起こり得るので、常に一定の儲けを稼ぎ出すとは限りません。複数年度の数値を分析すると突発的要因を取り除くことができ、「安定的な経営環境ならどの程度の水準の所得を稼ぐのか?」が見えてきます。

②繰延税金資産

(ⅰ)注目ポイント

回収可能性が最重要トピックです。具体的な分析方法は第4回~第6回で解説しますが、「評価性引当額が(理論上の)繰延税金資産に比べてどの程度の割合か?」という視点を持つことも一つの方法です。例えば、将来減算一時差異1,000で税率30%とすると、理論上の繰延税金資産は300で、評価性引当額が60としたら引当割合は20%になります。理論上の金額から評価性引当額を差し引いた数字が貸借対照表に載せられる金額なので、評価性引当の割合を計算してみるのも回収可能性の会社判断を推測する有益な方法です。

このほかにも、繰延税金資産の多額の取崩しが発生する可能性を推測する作業も分析に役立ちます。簡単にいうと、貸借対照表に載っている繰延税金資産の金額を把握しつつ、会社の今後数年の業績見通しを確かめるイメージです。業績見通しがあまり明るくないなら、将来稼ぐ見込みの所得にも否定的な影響を与えるので、繰延税金資産の多額の取崩しが発生する可能性は高まります。

(ⅱ)将来の儲けから推測する

・中長期計画

今後3~5年でどの程度儲けを稼ぐ見込みなのかが把握できる資料です(資料の名称は様々です)。繰延税金資産の回収可能性の判断と整合しているはずだからです。中長期計画の情報は、今後の儲けのトレンド(=回収可能性の変化)の予測に役立つので、回収可能性の分析にあたって是非とも見ておきたい情報です。会社の開示姿勢によりますが数年に1度公表される情報で、一般的に年度別に業績見通しが示されています。

・決算短信の業績予想

サマリーページの最下部に「翌期の」売上高・営業利益・経常利益・当期純利益が示されています。趣旨は中長期計画と同じですが、繰延税金資産の回収可能性の判断と整合しているはずなので、翌期の儲けを予測するのに役立ちます。

(ⅲ)損失の性質の把握に役立つ情報~損益計算書の特別損失

所得の発生を推測するために、特別損失の内容を調べるのも有益です。法人税の方が会計に比べて費用・損失を認めるタイミングが遅くなりがちですが、会計と法人税で費用(損失)を認めるタイミングに差が出るのは、減損損失などの見積り系の損失です。見積り系の損失は特別損失になることが多いので、税引前当期純利益と見積り系の損失を見ると、所得の発生の予測に活用できます。

【図2】分析で見るべきポイントの具体例①

(ⅳ)セグメント注記から推測する

報告セグメントごとの利益(たいていは営業利益)が把握でき、繰延税金資産の回収可能性の判断の推測に活かせます。報告セグメントをある程度細かく設定している注記事例であれば、どの事業から儲け/損失が出ているのかを知ることができ、今後の所得・欠損金の傾向の把握に役立ちます。

なお、税効果会計では法人税の欠損金のことを「税務上の欠損金」とよんでいます。当連載では単に「欠損金」や「繰越欠損金」とよぶことにします。

(ⅴ)減算差異の内容から推測する

・繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原因別の内訳

繰延税金資産がどのような減算差異を原因として発生しているかわかる注記で、当連載では単に「原因別の内訳」とよびます。有価証券報告書の連結財務諸表・財務諸表の「税効果会計関係」の注記事項に記載されています。差異の内容によって回収可能性の取扱いや解消時期は様々なので、繰延税金資産の回収可能性の判断や将来の取崩し時期の予測に役立ちます。有価証券報告書の連結注記では、【図3】のように注記されています。

【図3】有価証券報告書における「繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原因別の内訳」の注記イメージ

・評価性引当額

繰延税金資産のうち、回収可能性がないと認めた金額のことをいいます。欠損金にかかるものとそれ以外に分けて掲載されています(【図3】のハイライト部分)。一時差異がいつ解消するかのスケジューリングや、繰延税金資産の回収可能性の判断の推測にとても役立ちます。 【編注】

(ⅵ)欠損金

法人税の所得を計算する上で赤字になった金額のことです。儲けとは逆の意味のフレーズですが、会社の稼ぐ力を推測する上で欠かせない情報です。欠損金については3つの情報源があります。

・原因別の内訳と評価性引当額

金額的に重要なら繰越欠損金の情報も記載されています。また、【図3】のように、繰越欠損金の繰延税金資産についての評価性引当額も載っています。これらの情報を分析すると、繰越欠損金の繰延税金資産がどの程度回収可能と判断しているのかが見えてきます。 【編注】

・税務上の繰越欠損金及びその繰延税金資産の繰延期限別の金額

原因別の内訳の注記の中で、繰越欠損金の期限別の情報も示されており、繰越期限別に繰延税金資産や評価性引当額、そして回収可能性のある繰延税金資産を把握することができます。つまり、繰越期限ごとに繰延税金資産の回収可能性の判断が読み解ける有益な情報です。詳しい分析の仕方は、第3回で解説します。

・重要な会計上の見積り

重要と判断した会計上の見積りについて、どのような判断を経て現状の見積りに至ったのかが書かれています。繰延税金資産も会計上の見積りの1つなので、記載の対象となりえます。

【図4】分析で見るべきポイントの具体例②

以上のトピックについての背景や詳しい考え方は第2回以降で解説します。

③繰延税金負債

(ⅰ)注目ポイント

どの加算差異から繰延税金負債が発生しているのかを把握するのが有益です。今後取崩しが見込まれる金額はどの程度かの推測に役立つからです。

(ⅱ)加算差異の内容を見る

先述の原因別の内訳を見ると、繰延税金負債の発生原因別の内訳も把握できます。発生原因ごとの傾向分析をすると、今後の事業年度ごとの取崩し見込み額が推測できます。なお、日本の法人税の制度の特徴から、繰延税金資産に比べると繰延税金負債の発生原因の数は少ない傾向があります。

【図5】繰延税金負債のポイント

④法人税等調整額

法人税等調整額の発生原因を、他の情報と照らし合わせつつ把握します。

(ⅰ)原因別の内訳を複数年度分析

法人税等調整額は2つの原因で発生します。一つが一時差異の発生・解消で、もう一つが評価性引当額の増減です。ですから、原因別の内訳を複数年度並べて分析すると、法人税等調整額が発生した原因は一時差異が発生・解消したことによるものかどうかが把握できます。

(ⅱ)評価性引当額の増減

一時差異が発生・解消せずに評価性引当額が増加・減少した場合も、法人税等調整額は動きます。一時差異の発生・解消とは別の話なので、本来は法人税等調整額とは分けて「評価性引当額の増減」という欄を損益計算書に作って表示すべきですが、現在の会計ルールでは法人税等調整額に含めています。ですから、一時差異の発生・解消とともに、評価性引当額の増加・減少にも目を配ると、法人税等調整額が増加・減少した原因が見えることがあります。

【図6】法人税等調整額のポイント

【動画で解説】決算書分析で見るべきポイント
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2.【事例紹介】税効果会計の決算書分析をしてみよう

それでは、実際に注記事例を見ながら決算書分析の方法を確認してみましょう。注記事例は会社分類別に紹介します。会社分類とは簡単にいうと税効果会計での会社のランクみたいなものです。なぜランク分けが必要かというと、税効果会計は会社の将来の収益力を主な根拠に計上しますが、未来のことは誰にもわからないからです。そこで会計ルールでは、過去の業績などを主な根拠に会社を分類1~5にランク分けしています。このランクのうち会社分類4には例外規定があり、要件に該当すると(形式的には分類4ですが)分類2や分類3として扱います。詳しい内容はDB版第4回で解説します。

なお、会社分類は開示される情報ではなく、筆者の推測に基づくものですのでお含みおきください。第2回以降でも詳しい分析を解説しますので、今回は入門編的な位置付けで「どのような情報をどのような感じで見たらいいか?」と捉えてください。

会社分類2から会社分類5として推測した注記事例は以下の通りです。

分類2  :新晃工業
分類3  :高松機械工業
分類4(原則):蔵王産業
分類4(例外):ジーエフシー
分類5  :リボミック

これから具体的にみていきますが、税効果会計の決算書分析では以下の開示項目・公表物をチェックすることが大切です。そこで、【図7】にまとめた情報を適宜照らし合わせながら、税効果会計の決算書分析を進めていきます。

【図7】情報の探し方

(1)繰延税金資産の回収可能性の割合

はじめに、各社の繰延税金資産がどの程度回収可能と判断されているのかを【図8】で見てみましょう。

【図8】繰延税金資産の回収可能性の割合(個別)

(注)繰越欠損金にかかるものは除く

これは原因別の内訳の注記から繰延税金資産の回収可能性に関する情報を抽出し、割合を計算したデータです。一概には言えませんが、会社分類が上位のケースほど回収可能な割合が高くなり、評価性引当額の割合が低くなります。ですから、繰延税金資産の回収可能性の分析では、評価性引当額の割合にも目を配ると有益だと思います。

(2)中長期計画・決算短信

①新晃工業

繰延税金資産の回収可能性を分析するためには、企業の中長期計画を見ることが欠かせません。中長期計画は適時開示や会社のウェブサイトのIR情報を見ると掲載されており、税引前当期純利益~経常利益までが3~5期程度示されています。

新晃工業の中期経営計画(2021年5月公表)を見てみましょう。当面3期の連結ベースでの営業利益は、概ね50億円以上の水準で予想されています。個別ベースの業績見通しは不明ですが、よほど特異な事業形態をしていない限りは、近い金額と推測されます。また、中期経営計画の売上高や営業利益の推移予想を見ると、近い将来の経営環境に大きな変化がないと会社が推測していることが見て取れます。ですから、所得の水準がこれまでの実績以上になる蓋然性は高くなります。そのため会社分類2と判定し、スケジューリング可能差異が全額回収可能という判断に違和感はないと思います。

【図9】新晃工業の中期計画の業績見通し(連結)

②高松機械工業

中期経営計画が見つからない場合、決算短信の業績予想を見ることも有益です。決算短信は会社の業績を示す最も速報性の高い情報で、会社のウェブサイトのIR情報に必ず掲載されています。ただし、連結と個別の情報を拾い間違えないように注意する必要があります。というのも、税効果会計の繰延税金資産の回収可能性は連結会社単位で行う一方で、決算短信は連結ベースで開示されるからです。また、業績予想は会社が新しい情報を把握する都度見直されるので、最新の適時開示の情報を捉える必要もあります。

高松機械工業の場合、金額で示された詳しい中長期計画が見当たらないので決算短信を見てみましょう。2022年4月28日に公表された決算短信の連結業績予想を見る限り、少なくとも23年3月期は当期と同水準の利益を会社が見込んでいることがわかります。なお、21年3月期は売上高・経常利益は落ち込みましたが、再び回復する傾向へ入っているように見受けられます。以上の情報と過去の連結実績を踏まえると、23年3月期計画の数値にある程度の現実性があるように見えます。

【図10】高松機械工業の直近5期+翌期の経常利益(連結)

また、税効果会計の決算書分析をする上では、連結グループに占める親会社の割合も知りたいところです。そんな時に役立つのが連単倍率です。例えば経常利益の連単倍率は、連結の経常利益を親会社(個別)の経常利益で割ると計算できます。経常利益の連単倍率(連結・個別の比率)を見ると21年3月期を除き、連結と個別がかなり近い数字(連単倍率がほぼ1)になっています(図11)。業績予想の連結数値を基準に個別の税効果を検討しても結論に大きな影響はないことが推測できます。

【図11】高松機械工業の経常利益の連単倍率

同社の21年3月期有価証券報告書における個別の原因別の内訳から「回収可能」と判定されている繰延税金資産合計額(356百万円)を法定実効税率30.4%で割り戻した金額が、21年3月期の連結実績や22年3月期の見込利益の何年分になるかを分析したのが【図12】です。厳密性は少し下がりますが、年数を把握することで会社分類の推測に役立ちます。直近5期で顕著に数値が低かった21年3月期だと5.03年分、業績予想の金額だと1.28年分です。この結果を踏まえると、会社の判断結果に違和感は少なく感じられます。

【図12】分析表(高松機械工業(個別))

(3)特別損失の特徴

①高松機械工業

税効果会計の決算書分析では特別損失の内容も把握しましょう。金額が大きいことが多く、各項目が独立して記載されるので、注記も参考にしながら把握します。例えば減損損失は、内容が注記されます。高松機械工業を例に、税引前当期純利益に見積り系の特別損失をプラスした金額を「ざっくり所得」と名付け、まとめたのが【図13】です。

【図13】高松機械工業の税引前利益(個別)の分析

やや厳密性の高くない情報ではあるものの、特別損失のうち見積り系の損失を税引前当期純利益に足すとざっくりベースの所得水準がつかめます。会計の当期純利益が赤字の時にこの分析をすると「実は所得が出ていた」ということもわかります。

②蔵王産業

21年3月期以前の直近4期の特別損失は土地売却損なので、見積り系の損失は発生していません。したがって、ざっくり所得は税引前当期純利益をそのまま用います。

③ジーエフシー

はじめに経常利益の連単倍率をチェックすると【図14】のようになります。

【図14】ジーエフシーの経常利益の連単倍率

【図15】ジーエフシーの直近5期+翌期の経常利益(連結)

かなり1倍に近いので、連結の数値を使って個別(単体)の税効果会計の分析をしても結論に大きな影響はないことが見て取れます。

次に、経常利益(連結)の推移を見ると21年3月期に損失が発生しています。税効果会計の注記(個別)で欠損金も確認できます。これを踏まえると会社分類4に該当する可能性が高いですが、先述のとおり分類4では原則規定と例外規定があります。22年3月期決算短信から23年3月期予測数値を見ると例外規定に該当する可能性が考えられます。ですから、原則or例外規定の主な判断軸である「臨時性」を検討する必要があります。ここで後述するセグメント注記を見ると、業務用加工食材事業がコロナの影響を大きく受けたことがわかります。コロナの影響をどう見通すかは議論の余地があるものの、臨時的と捉えても違和感はないと思います。20年3月期までの4期は利益基調なので23年3月期の業績予想に異常性はなく、例外規定のある2種類の分類(分類3と分類2)のいずれかと判断できると思います。

(4)セグメント注記

①高松機械工業

セグメント情報は決算短信・有価証券報告書・四半期報告書に掲載されます。単一セグメントの場合は注記が省略されますが、多くの場合、報告セグメントごとの営業利益が記載されています。

高松機械工業のセグメント利益の3期推移を取ったのが【図16】です。

【図16】高松機械工業のセグメント別の営業利益

21年3月期の業績低迷は工作機械事業が赤字になったことが主要因で、それまでは利益の稼ぎ頭だったことがわかります。一方の、自動車部品加工事業では赤字が3期連続で発生しているので、今後見積損失が発生する可能性を認識しておく必要があります。このようにセグメント注記から、事業単位で今後の業績を予想する情報をつかんでおきます。

(5)原因別の内訳~個別

原因別の内訳の注記は税効果会計関係の注記のトップに掲載されていて、連結と個別で注記されている情報に差はあるものの、連結・個別ともに注記されます。有価証券報告書でのみ開示されるので、有価証券報告書のPDFファイル内で「原因別」と検索すれば目的のページへ辿り着けます。

各社の個別の税効果注記で、原因別の内訳に掲載されている会社分類の判定の推測に役立つ主な情報をまとめたのが【図17】です。

【図17】原因別の内訳の情報(個別)まとめ

新晃工業
(分類2)
高松機械工業
(分類3)
ジーエフシー
(分類4例外)
蔵王産業
(分類4)
リボミック
(分類5)
繰越
欠損金
評価性引当額
不能
差異
投資有価証券 関係会社系 役退引当金
投資有価証券
役退引当金

繰越欠損金の有無と評価性引当額・スケジューリング不能差異の内容を把握しておくと回収可能性の判断に活かせます。詳しい解説は第2回や第4回~第5回でお伝えします。

次回は、繰延税金資産・負債に関する注記分析のポイントを解説します。

【動画で解説】決算書分析の事例紹介
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