[連載対談]キーパーソンに訊く重要テーマ 第1回 「内部統制報告制度の改訂」

金融庁 企画市場局 審議官 井上 俊剛
青山学院大学大学院 会計プロフェッション研究科 教授 町田 祥弘

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Ⅰ. ここが訊きたい

2023年4月7日、企業会計審議会において「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」が承認され、公表された。内部統制報告制度は、内部統制監査報告書の形式的な改訂を除けば、2011年3月以来、12年ぶりの改訂となった。

この間、内部統制報告制度に関して改訂の必要性が論じられて来なかったわけではない。制度導入当初から我が国固有の措置として設けられてきた評価範囲の決定方法――いわゆる数値基準――を廃止して、財務報告に係る内部統制全体を評価対象とすべきではないか。我が国の内部統制の基本的枠組みの参考としたトレッドウェイ委員会支援組織委員会(COSO)のフレームワークが2013年に改訂されたことを受けて、我が国の内部統制の枠組みもアップデートすべきではないか。内部統制に係る開示すべき重要な不備が当初の内部統制報告書においてよりも訂正内部統制報告書によって数多く報告されていることから、適切な評価が行われていないおそれがあるのではないか。あるいは、監査人による内部統制監査をアメリカ同様に直接報告(...