IFRSをめぐる動向 第154回 引当金‐的を絞った改善(IAS第37号「引当金、偶発負債および偶発資産」の修正)に関する議論

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 井上 雅子

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1.はじめに

本連載は、主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等における討議内容に基づき、IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は、IASBが「引当金‐的を絞った改善」として検討しているIAS第37号「引当金、偶発負債および偶発資産」(以下、IAS第37号)の修正について、2023年4月のIASB会議の議論を紹介します。この会議では特段の決定事項はなく、IASBは引き続き利害関係者からのフィードバックを求めることとしています。

なお、文中の意見にわたる部分は、筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.「引当金‐的を絞った改善」‐プロジェクトの範囲

現在、IASBは維持管理プロジェクトとして「引当金‐的を絞った改善」によるIAS第37号の修正を検討しています。その範囲は以下の3つの論点に絞られています。本稿では、論点(1)「負債の定義および負債の識別に関する要求事項」について取り上げます。

なお、論点(2)「含まれるコスト」および(3)「割引率」については、別途議論が進められています。

論点検討内容(1)負債の定義および負債の識別に関する要求事項IAS第...