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取引相場のない株式(非上場株式)の評価とは

最終更新:2026年10月08日 執筆:税務研究会

制度の目的と背景

相続税法上、すべての財産は「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」である「時価」で評価することが原則とされています。しかし、市場で売買されていない「取引相場のない株式(非上場株式)」は、時価の把握が困難です。そのため、国税庁の「財産評価基本通達」において、納税者間の公平性や申告実務の便宜を図るための画一的な評価ルールが定められてきました。このルールは運用過程において、未上場企業の経営実態や「中小企業の円滑な事業承継への配慮」といった政策的な役割も実質的に担いながら発展してきた歴史があります。

現行制度の仕組み

現行制度では、「株主区分」「会社の規模」に応じて異なる評価方式を適用する枠組みを採用しています。「株主区分」では、株主が同族株主等か、それ以外の株主(経営支配力を持たない少数株主)かのいずれかによって、それぞれ、原則的評価方式か特例的評価方式(配当還元方式)が適用されます。原則的評価方式は、「会社の規模」(大・中・小)によって、それぞれ異なる評価方式が適用されます。

会社規模評価方式
大会社 上場企業の株価や配当・利益・純資産をモデルにして算出する「類似業種比準方式」(純資産価額方式の選択も可)
小会社 会社が保有する純資産をベースに算出する「純資産価額方式」(50%併用方式の選択も可)
中会社 上記2つの方式を一定割合で組み合わせる「併用方式」

また、原則的評価方式による評価になじまない資産構成に偏りのある特定の評価会社(土地保有特定会社等)は、規模に関わらず原則純資産価額方式が適用されます。

なぜ今、見直しが議論されているのか(制度の課題)

長年機能してきたこの制度ですが、近年、経済環境の変化や法制度の多様化に伴い、以下のような構造的な限界が浮き彫りとなっています。

1.評価額の乖離と「評価の崖」の発生

会計検査院の調査により、類似業種比準方式による評価額が、純資産価額方式に比べて著しく低い(約4分の1程度)水準にあることが指摘されました。この極端な評価額の乖離により、会社規模の区分が少し変わるだけで評価額が急変動する「評価の崖」が生じています。

2.制度を悪用した租税回避スキームの横行

この「崖」や制度の隙に着目し、配当の有無による評価方式の適用回避、組織再編・持株会社化を通じた大会社化(L割合の操作)などが行われてきました。さらに、この「崖」や制度の隙を利用し、不当に株価を圧縮する租税回避行為が散見されるようになりました。意図的な株主構成の操作や無議決権株式を用いた配当還元方式の濫用も問題になっています。

3.評価手法の理論的な限界と時代とのズレ

類似業種比準方式は、会社法上の価格決定裁判では「理論的・実証的な裏付けがない」として用いられなくなっています。昨今のM&A実務でも、類似業種比準方式は、企業の個別収益力を反映できないことから、実際のM&A取引価格(時価)と大幅にかい離しています。一方の純資産価額方式も、事業継続が前提であるにもかかわらず清算価値的な算定となっており、さらに、、退職給付引当金などの実質的な負債(確定債務でないもの)が控除されないなど、企業の実態と乖離しているとの批判があります。

今後の方向性

こうした制度疲労による課税の不公平を是正するため、現行の規模別区分や評価方式方式の見直し・再構築を行い、企業の収益力と純資産を適正に反映する新たな統一の評価方法(インカムアプローチ等)へと、抜本的な見直しを図る議論が本格化しています。


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