- (1) 制度の概要
個人が、平成16年1月1日から令和3年12月31日までの間に、その有する家屋又は土地等でその年の1月1日において所有期間が5年を超えるもののうち当該個人の居住の用に供しているものの譲渡をした場合(当該個人が当該譲渡に係る契約を締結した日の前日において当該譲渡資産に係る一定の住宅借入金等の金額を有する場合に限る。)において、当該譲渡の日の属する年にその譲渡をした資産に係る一定の譲渡損失の金額があるときは、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41の5)との選択により、次の特例が認められる(措法41の5の2、措令26の7の2)。 - ① 特定居住用財産の譲渡損失の金額がある場合には、その居住用財産の譲渡損失の金額については、土地、建物等の譲渡による所得以外の所得との損益通算をすることができる。
- ② 通算後譲渡損失の金額を有する場合には、その通算後譲渡損失の金額について、その譲渡の年の翌年以後3年内の各年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額からの繰越控除をすることができる。
- (2) 特定居住用財産の譲渡損失の金額
この特例によって繰越控除が認められる特定居住用財産の譲渡損失の金額とは、平成16年1月1日から令和3年12月31日までの期間内に、所有期間が5年を超える居住用財産の譲渡をした場合(その譲渡に係る契約の前日においてその譲渡をした居住用財産に係る住宅借入金等の金額を有する場合に限る。)において、その居住用財産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、その譲渡をした日の属する年分の分離課税の長期譲渡所得の金額及び短期譲渡所得の金額の計算上控除してもなお控除しきれない部分の金額(当該譲渡に係る契約の前日におけるその譲渡をした居住用財産に係る住宅借入金等の金額の合計額からその譲渡をした居住用財産の譲渡の対価の額を控除した残額を限度とする。)をいう(措法41の5の2⑦一、措令26の7の2⑥)。 - (3) 通算後譲渡損失の金額
その年において生じた純損失の金額のうち、繰越控除の適用対象となる「通算後譲渡損失の金額」とは、特定居住用財産の譲渡損失の金額のうち次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める金額に達するまでの金額をいう(措法41の5の2⑦三、措令26の7の2⑧)。 - ① 青色申告書を提出する場合で、特定居住用財産の譲渡損失の金額が生じた年において、その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額(分離課税の長期譲渡所得の金額及び短期譲渡所得の金額を除く。)の計算上生じた損失の金額がある場合 その年の純損失の金額からその損失の金額の合計額(その合計額がその年に生じた純損失の金額を超えるときは、当該純損失の金額)を控除した金額
- ② 上記①以外の場合で、変動所得の金額の計算上生じた損失の金額又は被災事業用資産の損失の金額がある場合 その年の純損失の金額から、これらの損失の金額の合計額(その合計額がその年に生じた純損失の金額を超えるときは、当該純損失の金額)を控除した金額
- ③ 上記①、②以外の場合 純損失の金額
- (4) 住宅借入金等
「住宅借入金等」とは、次に掲げるものをいう(措法41の5の2⑦四、措令26の7の2⑨)。 - ① 住宅の取得等に要する資金に充てるため金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構等から借り入れた借入金で償還期間が10年以上の割賦償還の方法により返済することとされているもの
- ② 建設業者に対する住宅の取得等に係る債務又は宅地建物取引業者、独立行政法人都市再生機構等の住宅の分譲を行う者に対する住宅の取得等に係る債務で賦払期間が10年以上の割賦払の方法により支払うこととされているもの
- ③ 独立行政法人都市再生機構等の法人を当事者とする居住用財産の取得に係る債務の承継に関する契約に基づくその法人に対する債務で、その承継後の債務の賦払期間が10年以上の割賦払の方法により支払うこととされているもの
- ④ 住宅の取得等に要する資金に充てるために使用者から借り入れた借入金又は使用者に対する住宅の取得等の対価に係る債務で、償還期間又は賦払期間が10年以上の割賦償還又は割賦払の方法により返済し、又は支払うこととされているもの
- (5) 他の特例との関係
その年の前年若しくは前々年における資産の譲渡について「居住用財産の譲渡に係る課税の特例(措法31の3①、35①(同条第3項の規定により適用する場合を除く。)、36の2、36の5)」の適用を受けている場合、又はその年若しくはその年の前年以前3年内における資産の譲渡について「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41の5)」の適用を受け、若しくは受けている場合には、この特例の適用を受けることはできない(措法41の5の2⑦一)。
左記①の損益通算の特例は、その年の前年以前3年内の年において生じた当該特定居住用財産の譲渡損失の金額以外の特定居住用財産の譲渡損失の金額につきこの損益通算の特例の適用を受けているときは、この特例の適用を受けることはできない(措法41の5の2①ただし書)。したがって、この損益通算の特例が適用されない場合には、左記②の繰越控除の特例も対象とされない。
左記②の繰越控除の特例は、合計所得金額が3,000万円超となる年分については適用できない(措法41の5の2④)。
純損失の繰越控除制度及び純損失の繰戻し還付制度の純損失の金額には、左記の譲渡をした資産に係る譲渡損失の金額は含まれない(措法41の5の2⑧⑨)。
左記の所有期間は、居住用財産の譲渡をした年の1月1日現在で判定することとされている。