個人の所有する土地建物等(土地、土地の上に存する権利、建物及びその附属設備又は構築物をいう。以下この項目において同じ。)を譲渡した場合の譲渡所得は、他の所得(土地建物等以外の資産を譲渡した場合の譲渡所得を含む。)と区分して、申告分離課税の特例が設けられている(措法31、32)。
この課税の特例を概観すると次のとおりである。
- (1) 原則
- (イ) 長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日における所有期間が5年超であるもの)
課税所得(収入金額-取得費・譲渡費用-特別控除)に対して15%(住民税5%(道府県民税2%、市町村民税3%))の税率による分離課税 - (ロ) 短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日における所有期間が5年以下であるもの)
課税所得に対して30%(住民税9%(道府県民税3.6%、市町村民税5.4%))の税率による分離課税
- (2) 長期譲渡所得で軽減税率が適用される場合(措法31の2、31の3)
- ① 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合(令和4年12月31日までに譲渡した場合)の長期譲渡所得の課税の特例……次の税率による分離課税
2,000万円以下の部分 10%(住民税4%(道府県民税1.6%、市町村民税2.4%))
2,000万円超の部分 15%(住民税5%(道府県民税2%、市町村民税3%)) - ② 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例……次の税率による分離課税
6,000万円以下の部分 10%(住民税4%(道府県民税1.6%、市町村民税2.4%))
6,000万円超の部分 15%(住民税5%(道府県民税2%、市町村民税3%))
- (3) 短期譲渡所得で軽減税率が適用される場合(措法32③)
国又は地方公共団体等に対する土地等の譲渡や収用交換等による土地等の譲渡等一定の場合の短期譲渡所得の税率の特例……課税所得に15%(住民税5%(道府県民税2%、市町村民税3%))の税率による分離課税 - (4) 特別控除
- ① 収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除(措法33の4)……5,000万円
- ② 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(措法34)……2,000万円
- ③ 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(措法34の2)……1,500万円
- ④ 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(措法34の3)……800万円
- ⑤ 居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35)……3,000万円
- ⑥ 特定期間に取得をした土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除(措法35の2)……1,000万円
- ⑦ 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除(措法35の3)……100万円
- (5) 買換え特例
- ① 収用等に伴い代替資産を取得した場合(措法33)
- ② 特定の居住用財産の買換えをする場合(措法36の2)
- ③ 特定の事業用資産の買換えをする場合(譲渡益の80%に相当する部分の課税の繰延べ)(措法37)
- ④ 既成市街地等内にある土地等をその土地等の上に建設される中高層耐火建築物等に買換えをする場合(措法37の5)
- ⑤ 平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合(譲渡益の80%(又は60%)に相当する部分の課税の繰延べ)(措法37の9)
所得税の基本的な仕組みは総合課税であるが、土地建物等に係る譲渡所得と土地の譲渡等に係る事業所得等は、土地政策等の観点から分離課税とされているものである。
取得費は、その資産の取得に要した金額、設備費及び改良費の額の合計額をいう(法38①)。
個人からの贈与、相続等により取得した資産は、受贈者又は相続人等が引き続き所有していたものとみなす(法60)。
居住用財産は、その年1月1日において所有期間が10年超のものに限る(措法31の3②四)。