〈制度の概要〉
土地収用法その他の法律の規定により収用され、又は買取りの申出を拒めば収用される等の場合における買取り等がされたことによって土地、建物などの資産(棚卸資産及びこれに準ずる一定の資産を除く。)を譲渡した場合で、その補償金、対価又は清算金などから譲渡費用(譲渡の費用に充てるために交付された金額があるときは、その金額を差し引いた後の譲渡費用)の金額を差し引いた残りの金額(以下「補償金などの額」という。)の全部又は一部で、収用などのあった年の12月31日までに代替資産を取得したときは、納税者の選択により、○イ5,000万円の特別控除又は、○ロ譲渡資産の譲渡がなかったものとして取得価額の引継ぎによる課税の繰延べの特例を受けることができる(措法33、33の4)。
〈特例の対象となる譲渡又は資産〉
- (1) 特例の対象となる収用等の範囲(措法33①)
- ① ~ ⑬}法人税の「収用等に伴い代替資産を取得した場合の圧縮記帳」の項を参照(416頁)のこと。
- (2) 代替資産の範囲は、次のとおりである。
- ① 同種の資産
代替資産は、収用等をされた資産が次のイからヘまでの区分のいずれに属するかに応じて、これと同じ区分に属する資産でなければならない(措令22④)。 - イ 土地等
- ロ 建物(その附属設備を含む。)又は建物に附属する特定の構築物(門、塀、庭園、煙突、貯水漕等)
- ハ ロに該当しない構築物
- ニ 配偶者居住権(この場合の代替資産は、当該配偶者居住権を有していた者の居住の用に供する建物等に限る。)
- ホ 配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地等を配偶者居住権に基づき使用する権利(この場合の代替資産は、当該権利を有していた者の居住の用に供する建物の敷地の用に供される土地等に限る。)
- ヘ その他の資産(この場合の代替資産は、譲渡資産と種類及び用途を同じくする資産に限られる。)
- ② 一の効用を有する一組の資産
収用等により譲渡した資産が前記のイからホまでの区分(ヘは除かれる。)の異なる二以上の資産で一の効用を有する一組の資産となっているものである場合には、その効用と同一の効用を有する他の資産をもって、その譲渡した資産の全てに係る代替資産とすることができる(措令22⑤)。この場合の一組の資産として適用されるのは次の用途に供されるものに限られる(措規14③)。 - イ 居住の用
- ロ 店舗又は事務所の用
- ハ 工場、発電所又は変電所の用
- ニ 倉庫の用
- ホ イからニまでのほか、劇場の用、運動場の用、遊技場の用その他これらの用の区分に類する用
例えば居住用の建物とその敷地が収用され、代わりの居住用家屋とその敷地を取得するような場合、あるいは既に所有する土地の上に居住用の家屋を建てた場合などはそれぞれ一組の資産として一括して適用が受けられるのである(措通33-39)。
- ③ 事業用資産
収用等により譲渡した資産が、その譲渡した者の営む事業の用に供されていたものである場合には、その者が事業の用に供するためその譲渡資産に係る資産の区分と異なる資産を取得する場合であっても、その取得資産をもって代替資産とすることができる(措令22⑥)。
〈譲渡所得の金額及び所得税額の計算〉
- ① 「補償金などの額」が代替資産の取得価額以下であるとき…譲渡資産の譲渡がなかったものとする。
- ② 「補償金などの額」が代替資産の取得価額を超えるとき…譲渡した資産のうちその超える金額に相当する部分について譲渡があったものとして、次により譲渡所得の金額を計算する。
{〔補償金等の額-譲渡費用〕-代替資産の取得価額}=収入金額
譲渡資産の取得費×{収入金額/(補償金等の額-譲渡費用)}=取得費