- (1) 完全支配関係がある法人の間の取引の損益の調整
- ① 譲渡利益額又は譲渡損失額の繰延べ
内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)が譲渡損益調整資産をその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)に譲渡した場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額を所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する(法61の13①)。 - ② ①の適用を受けた場合において、その譲渡を受けた法人(譲受法人)において、その譲渡損益調整資産の譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却等の事由が生じた場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額の全部又は一部は、譲渡法人の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する(法61の13②)。
- ③ 譲渡損益調整資産
固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産である。ただし、次の資産を含まない(法61の13①、令122の14、規27の13の3)。 - イ 売買目的有価証券
- ロ 譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券
- ハ 譲渡直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産
(注) 帳簿価額の判定単位は、法人税法施行規則第27条の15第1項(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)と同様である。
- (2) 譲渡損益調整資産が減価償却資産等である場合の譲渡損益の簡便法による調整計算
譲渡法人は、譲受法人に譲渡した譲渡損益調整資産が減価償却資産又は繰延資産である場合には、簡便な計算方法によりその譲渡損益調整資産に係る譲渡損益の調整を行うことができる(令122の14⑥⑧⑨)。 - (3) 完全支配関係を有しないこととなった場合の繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額の計上
内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき(1)①の繰延制度の適用を受けた場合において、その内国法人(譲渡法人)がその譲渡損益調整資産に係る譲受法人との間に完全支配関係を有しないこととなったときは、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額(その有しないこととなった日の前日の属する事業年度前の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額又は損金の額に算入された金額を除く。)は、その譲渡法人のその有しないこととなった日の前日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する(法61の13③)。 - (4) 連結納税の開始又は連結納税への加入に伴う繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額の計上
法人税法第61条の11第1項(連結納税の開始に伴う資産の時価評価損益)に規定する他の内国法人(すなわち時価評価課税の適用対象となる連結開始子法人)又は法人税法第61条の12第1項に規定する他の内国法人(すなわち時価評価課税の適用対象となる連結加入法人)が連結開始直前事業年度又は連結加入直前事業年度以前の各事業年度において譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき(1)①の繰延制度の適用を受けた法人である場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額(その連結開始直前事業年度又は連結加入直前事業年度前の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額又は損金の額に算入された金額を除く。)は、その連結開始直前事業年度又は連結加入直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する(法61の13④)。 - (5) 譲渡法人の適格合併による解散
内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき(1)①の繰延制度の適用を受けた場合において、その内国法人(譲渡法人)が適格合併により解散したときは、その適格合併に係る合併法人のその適格合併の日の属する事業年度以後の各事業年度においては、その合併法人をその譲渡利益額又は譲渡損失額につき繰延制度の適用を受けた法人とみなして、この制度を適用する(法61の13⑤)。 - (6) 譲受法人の適格合併等による譲渡損益調整資産の移転
内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき(1)①の繰延制度の適用を受けた場合において、その譲渡損益調整資産に係る譲受法人が適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(以下「合併法人等」という。)にその譲渡損益調整資産を移転したときは、その移転した日以後に終了するその内国法人(譲渡法人)の各事業年度においては、その合併法人等をその譲渡損益調整資産に係る譲受法人とみなして、この制度を適用する(法61の13⑥)。 - (7) 非適格合併
非適格合併に係る被合併法人がその非適格合併による譲渡損益調整資産の移転につき(1)①の繰延制度の適用を受けた場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額に相当する金額はその非適格合併に係る合併法人のその譲渡損益調整資産の取得価額に算入しないものとし、その譲渡損益調整資産に係る譲渡損失額に相当する金額はその合併法人のその譲渡損益調整資産の取得価額に算入するものとし、その譲渡損益調整資産については被合併法人で譲渡損益を計上せずに帳簿価額で移転することとなる(法61の13⑦)。
譲受法人による譲渡損益調整資産の譲渡が一定の換地処分等による譲渡であり、その譲渡につき換地処分等に伴い資産の取得をした場合の課税の特例による圧縮記帳(措法65①⑤)の適用を受ける場合には、その譲渡利益額に相当する金額は、引き続き計上しない(措法65⑩)。