税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

引当金の一覧

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〈種類〉

1 貸倒引当金

〔金銭債権(債券に表示されるべきものを除く。)について貸倒れによる損失の見込額として、損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額については、申告を要件として、その金額のうち繰入限度額に達するまでの金額の損金算入が認められる(法52)。なお、法人が貸倒引当金勘定への繰入れの表示に代えて取立不能見込額として表示した場合においても、当該取立不能見込額の表示が財務諸表の注記等により確認でき、かつ、貸倒引当金勘定への繰入れであることが総勘定元帳及び確定申告書において明らかにされているときは、当該取立不能見込額は、貸倒引当金勘定への繰入額として取り扱われる(基通11―2―1)。〕

〈適用対象者等〉

 貸倒引当金の繰入額の損金算入ができるのは、次に掲げる法人である。

 なお、3の法人については、それぞれ3の金銭債権に係る貸倒引当金の繰入額についてのみ損金算入ができる(法52①⑨、令96④⑤⑨、規25の4の2)。

  • 1 各事業年度終了の時において次の法人に該当する法人
    • ① 普通法人(投資法人及び特定目的会社を除く。)のうち、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないもの
       (注) 次の法人を除く。
      • イ 大法人(次の法人をいう。)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人
        • ・資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人
        • ・相互会社及び外国相互会社
        • ・法人課税信託に係る受託法人
      • ロ 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部を当該全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において当該いずれか一の法人と当該普通法人との間に当該いずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人
      • ハ 法人課税信託に係る受託法人
    • ② 公益法人等又は協同組合等
    • ③ 人格のない社団等
  • 2 次の法人(銀行・保険会社等)
    • ① 銀行
    • ② 保険会社
    • ③ 無尽会社
    • ④ 証券金融会社
    • ⑤ 株式会社日本貿易保険
    • ⑥ 長期信用銀行
    • ⑦ 長期信用銀行持株会社
    • ⑧ 銀行持株会社
    • ⑨ 貸金業法施行令第1条の2第3号又は第5号に掲げるもの(主としてコール資金の貸付け若しくはその貸借の媒介を業として行う者で金融庁長官の指定するもの又はコール資金の貸付けを行う登録投資法人)
    • ⑩ 保険持株会社
    • ⑪ 少額短期保険業者
    • ⑫ 少額短期保険持株会社
    • ⑬ 債権回収会社
    • ⑭ 株式会社商工組合中央金庫
    • ⑮ 株式会社日本政策投資銀行
    • ⑯ 株式会社地域経済活性化支援機構
    • ⑰ 株式会社東日本大震災事業者再生支援機構
  • 3 一定の金銭債権を有する法人
    • ① 法人税法第64条の2第1項の規定によりリース資産の売買があったものとされる場合のそのリース資産の対価の額に係る金銭債権を有する法人……その金銭債権
    • ② 第1種金融商品取引業を行う金融商品取引業者に該当する法人……その法人が行う信用取引に附随する金銭の貸付けに係る金銭債権
    • ③ 質屋である法人……質契約に係る金銭債権
    • ④ 登録包括信用購入あっせん業者、登録少額包括信用購入あっせん業者又は登録個別信用購入あっせん業者に該当する法人……基礎特定信用情報として指定信用情報機関に提供された債務に係る金銭債権
    • ⑤ 次の法人……商業、工業、サービス業その他の事業を行う者から買い取った金銭債権でその法人の次の業務として買い取つたもの
      • イ 銀行の子会社である銀行法第16条の2第1項第11号に掲げる会社(従属業務又は金融関連業務を専ら営む会社)のうち同法第10条第2項第5号に掲げる業務(金銭債権等の取得又は譲渡)を営む法人
      • ロ 保険会社の子会社である保険業法第106条第1項第12号に掲げる会社のうち同法第98条第1項第4号に掲げる業務を営む法人
      • ハ 農業協同組合法第10条第1項第3号又は第10号の事業(貯金等の受入れ又は共済)を行う農業協同組合の子会社である会社のうち同法第10条第6項第6号に掲げる業務を営む法人
      • ニ 農業協同組合法第10条第1項第3号の事業を行う農業協同組合連合会の子会社である同法第11条の66第1項第5号に掲げる会社のうち同法第10条第6項第6号に掲げる業務を営む法人
      • ホ 信用協同組合の子会社である協同組合による金融事業に関する法律第4条の2第1項第1号に掲げる会社のうち中小企業等協同組合法第9条の8第2項第10号に掲げる業務を営む法人
      • ヘ 中小企業等協同組合法第9条の9第1項第1号の事業(預金等の受入れ)を行う協同組合連合会の子会社である協同組合による金融事業に関する法律第4条の4第1項第6号に掲げる会社のうち中小企業等協同組合法第9条の8第2項第10号に掲げる業務を営む法人
      • ト 信用金庫の子会社である信用金庫法第54条の21第1項第1号に掲げる会社のうち同法第53条第3項第5号に掲げる業務を営む法人
      • チ 信用金庫連合会の子会社である信用金庫法第54条の23第1項第10号に掲げる会社のうち同法第54条第4項第5号に掲げる業務を営む法人
      • リ 長期信用銀行の子会社である長期信用銀行法第13条の2第1項第11号に掲げる会社のうち同法第6条第3項第4号に掲げる業務を営む法人
      • ヌ 長期信用銀行持株会社の子会社である長期信用銀行法第16条の4第1項第10号に掲げる会社のうち同法第6条第3項第4号に掲げる業務を営む法人
      • ル 労働金庫の子会社である労働金庫法第58条の3第1項第1号に掲げる会社のうち同法第58条第2項第11号に掲げる業務を営む法人
      • ヲ 労働金庫連合会の子会社である労働金庫法第58条の5第1項第6号に掲げる会社のうち同法第58条の2第1項第9号に掲げる業務を営む法人
      • ワ 銀行持株会社の子会社である銀行法第52条の23第1項第10号に掲げる会社のうち同法第10条第2項第5号に掲げる業務を営む法人
      • カ 保険持株会社の子会社である保険業法第271条の22第1項第12号に掲げる会社のうち同法第98条第1項第4号に掲げる業務を営む法人
      • ヨ 農林中央金庫の子会社である農林中央金庫法第72条第1項第8号に掲げる会社のうち同法第54条第4項第5号に掲げる業務を営む法人
      • タ 株式会社商工組合中央金庫の子会社である株式会社商工組合中央金庫法第39条第1項第6号に掲げる会社のうち同法第21条第4項第5号に掲げる業務を営む法人
    • ⑥ 貸金業者に該当する法人……次の金銭債権
      •   イ 帳簿に記載された貸付けの契約に係る金銭債権
      •   ロ 商業、工業、サービス業その他の事業を行う者から買い取った金銭債権
    • ⑦ 信用保証業を行う法人…その法人の行う信用保証業に係る保証債務を履行したことにより取得した金銭債権

〈繰入限度額〉

  • 1 貸倒引当金の繰入限度額は、期末金銭債権を個別に評価する債権(個別評価金銭債権)とその他の一括して評価する債権(一括評価金銭債権)とに区分してそれぞれ計算する。
      なお、被合併法人の非適格合併の日の前日の属する事業年度及び残余財産の確定(適格現物分配に該当しないものに限る。)の日の属する事業年度においては、貸倒引当金の繰入れは認められない。また、普通法人又は協同組合等が公益法人等に該当することとなる場合のその該当することとなる日の前日の属する事業年度については適用されない(法52⑫)。
      また、内国法人が資産の販売等を行った場合に、その資産の販売等の対価として受け取ることとなる金額のうち「その資産の販売等の対価の額に係る金銭債権の貸倒れ」が生じる可能性があることにより売掛金その他の金銭債権に係る勘定の金額としていない金額(以下「貸倒基因金銭債権計上差額」という。)があるときは、その貸倒基因金銭債権計上差額に相当する金額は、その内国法人が損金経理により繰り入れた貸倒引当金勘定又はその内国法人が設けた期中個別(一括)貸倒引当金勘定の金額とみなして、貸倒引当金制度を適用することができる(令99)。
    • ① 個別評価する債権(個別評価金銭債権)-取立て等の見込みがない部分の金額として計算した金額
    • ② 一括評価する債権(一括評価金銭債権)-一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額に当該事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の貸倒実績率を乗じて計算した金額
       繰入限度額の計算の詳細は、次のとおりである(法52①②、令96規25の225の325の4の2)。
      • (1) 個別に評価する債権(個別評価金銭債権)に係る繰入限度額の計算
          個別評価金銭債権については、当該事業年度終了時においてその取立て又は弁済の見込みがないと認められる部分の金額を基礎として下記イからニまでの計算方法により回収不能見込額を計算する。
         (注) 個別評価金銭債権とは、その一部につき貸倒れその他これに類する事由により損失が見込まれる金銭債権(当該金銭債権に係る債務者に対する他の金銭債権がある場合には、当該他の金銭債権を含む。)をいう(法52①)。
            なお、この個別評価金銭債権に係る繰入限度額の計算は、当該金銭債権に係る債務者ごとに行う(令96①)。
          具体的には、次の金額の合計額である。
        • イ 当該金銭債権につき、当該金銭債権に係る債務者について生じた次に掲げる事由に基づいてその弁済を猶予され、又は賦払により弁済される場合における当該金銭債権の額のうち、当該事由が生じた事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までに弁済されることとなっている金額以外の金額(担保権の実行その他によりその取立て又は弁済(以下「取立て等」という。)の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)
          • a 更生計画認可の決定
          • b 再生計画認可の決定
          • c 特別清算に係る協定の認可の決定
          • d 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるもの
            • (ⅰ) 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
            • (ⅱ) 行政機関、金融機関その他第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容が(ⅰ)に準ずるもの
            (注) 繰入額の計算に当たっては、基通11-2-5基通11-2-12を参照。
        • ロ 当該金銭債権(イの適用があるものを除く。)に係る債務者につき、債務超過の状態が相当期間継続しその営む事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由により、当該金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められるときにおける当該一部の金額に相当する金額
           (注) 繰入額の計算に当たっては、基通11-2-611-2-8を参照。
        • ハ 当該金銭債権(イ及びロの適用があるものを除く。)に係る債務者につき次に掲げる事由が生じている場合における当該金銭債権の額(当該金銭債権の額のうち、当該債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額及び担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)の100分の50に相当する金額
          • a 更生手続開始の申立て
          • b 再生手続開始の申立て
          • c 破産手続開始の申立て
          • d 特別清算開始の申立て
          • e 手形交換所(手形交換所のない地域にあっては当該地域において手形交換業務を行う銀行団を含む。)による取引停止処分があったこと
          • f 電子記録債権法第2条第2項に規定する電子債権記録機関(次に掲げる要件を満たすものに限る。)による取引停止処分があったこと
            • (ⅰ) 金融機関(預金保険法第2条第1項各号に掲げる者をいう。以下(ⅱ)において同じ。)の総数の100分の50を超える数の金融機関に業務委託(電子記録債権法58①の規定による同法51①に規定する電子債権記録業の一部の委託をいう。(ⅱ)において同じ。)をしていること
            • (ⅱ) 電子記録債権法第56条に規定する業務規程に、業務委託を受けている金融機関はその取引停止処分を受けた者に対し資金の貸付け(当該金融機関の有する債権を保全するための貸付けを除く。)をすることができない旨の定めがあること
            (注) 繰入額の計算に当たっては、基通11-2-5基通11-2-911-2-12を参照。
        • ニ 外国の政府、中央銀行又は地方公共団体に対する金銭債権のうち、これらの者の長期にわたる債務の履行遅滞によりその経済的な価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる金銭債権の額(当該金銭債権の額のうち、これらの者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額及び保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)の100分の50に相当する金額
          (注) 繰入額の計算に当たっては、基通11-2-1311-2-15を参照。
            上記の金額の算定については、法人の有する金銭債権について上記の事由が生じていることを証する書類その他の関係書類の保存がされていないときは、その事由は生じていないものとみなされている(令96②、規25の4)。すなわち、関係書類の保存がある場合に限り、個別評価による繰入限度額が計算されるというものである。
      • (2) 一括して評価する債権(一括評価金銭債権)に係る繰入限度額
          一括評価金銭債権については、当該事業年度終了時において有する一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額に貸倒実績率を乗じて計算した金額が繰入限度額とされる(法52②、令96⑥)。
          当該事業年度終了時の一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額×貸倒実績率
         (注) 繰入額の計算に当たっては、基通11-2-1611-2-22を参照。
        • イ 一括評価金銭債権
            一括評価金銭債権とは、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権で、前記(1)の個別評価の対象とした金銭債権(個別評価金銭債権)を除いたものである。
        • ロ 貸倒実績率
            貸倒実績率の計算は、次によるものとされている。
          貸倒実績率={(その事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の売掛債権等の貸倒損失の額+個別評価分の引当金繰入額-個別評価分の引当金戻入額)×(12/左の各事業年度の合計月数)}/{(その事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度終了の時における一般売掛債権等の帳簿価額の合計額)÷(左の各事業年度の数)}
          (注)1 月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数は1月とする(令96⑦)。
            2 上記各事業年度は、その事業年度がその法人の設立の日の属する事業年度である場合はその事業年度、公益法人等が新たに収益事業を開始した事業年度である場合にはその事業年度、収益事業を行っていない公益法人等が普通法人等に該当することとなった事業年度である場合にはその事業年度とされる。
            3 個別評価分の引当金繰入額とは、その各事業年度で損金の額に算入された貸倒引当金勘定の金額のうち、個別評価による繰入限度額(売掛債権等に係る金額に限る。)に達するまでの金額である。
            4 個別評価分の引当金戻入額とは、その各事業年度で益金の額に算入された貸倒引当金勘定の金額のうち、その前事業年度の個別評価による繰入限度額(その各事業年度において、貸倒損失の額が生じた売掛債権等又は個別評価の対象とされた売掛債権等に係るものに限られる。)に達するまでの金額である。かっこ書の限定は、引当金繰入れ後に売却された売掛債権等については、貸倒実績に算入されないので、これに係る戻入額は除くというものである。
            5 一定の金銭債権を有する法人は、貸倒実績率の計算の基礎となる前3年内事業年度における売掛債権等に係る貸倒損失の額、個別評価貸倒引当金の繰入額の損金算入額及び個別評価貸倒引当金の戻入額の益金算入額について、貸倒引当金の対象となる金銭債権に限定して計算する(令96⑥二イ)。
            6 前3年内事業年度等において中小法人又は銀行・保険会社等に該当しない場合には、該当するものとした場合の個別評価貸倒引当金の繰入額の損金算入額及び戻入額の益金算入額を実際の個別評価貸倒引当金の繰入額の損金算入額及び戻入額の益金算入額とみなして貸倒実績率を計算する(令96⑧)。
  • 2 中小企業者等の貸倒引当金の特例
      中小企業者等の一括して評価する債権の繰入限度額の計算については、貸倒実績率の適用に代えて法定繰入率によることができる(措法57の9①)。
    (注)1 法定繰入率による繰入れができる法人は、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の普通法人(大法人(次の①~③の法人をいう。)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人(みなし完全支配関係がある普通法人を含む。)並びに投資法人、特定目的会社、相互会社及び外国相互会社を除く。)である(措法57の9①、法66⑤二、三、143⑤、措令33の7①)。
    • ① 資本金5億円以上である法人
    • ② 相互会社又は外国相互会社
    • ③ 法人課税信託の受託法人

    (注)2 法定繰入率は、次のとおりである(措令33の7④)。
    • ① 卸売及び小売業(飲食店業及び料理店業を含むものとし、割賦販売小売業を除く。) 1,000分の10
    • ② 製造業(電気業、ガス業、熱供給業、水道業及び修理業を含む。) 1,000分の8
    • ③ 金融及び保険業 1,000分の3
    • ④ 割賦販売小売業並びに包括信用購入あっせん業及び個別信用購入あっせん業 1,000分の7
    • ⑤ その他の事業 1,000分の6

    (注)3 公益法人等又は協同組合等については、繰入限度額を更に10%割増しとする特例があったが、平成31年度税制改正により廃止された。なお、平成31年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度については、廃止前の規定による割増率に対して1年ごとに5分の1ずつ縮小した額による割増しを認める経過措置が講じられている(平成31年度改正法附則54)。
       法定繰入率による場合の貸倒引当金の繰入限度額の計算の基礎となる債権の額は、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(個別の評価の対象とされたものは除かれる。)の帳簿価額の合計額であるが、これらの債権のうちその債権に係る債務者から受け入れた金額があるためその全部又は一部が実質的に債権とみられない金銭債権がある場合には、その債権とみられない部分の金額に相当する金額は、その帳簿価額から控除される(措法57の9①、措令33の7②)。
       この実質的に債権とみられないものの額は、過去(基準年度)の実績を基にした次の式の簡便計算によることが認められている(措令33の7③)。
     当該事業年度末の実質的に債権とみられないものの額=当該事業年度末の一括評価金銭債権×基準年度末の実質的に債権と見られないものの額の合計額基準年度末の一括評価金銭債権の額の合計額(左記の割合に小数点以下3位未満の端数があるときは、切り捨てる。)
       ここで基準年度とは、平成27年4月1日から平成29年3月31日までの期間内に開始した各事業年度であり、この簡便計算の適用を受けられるのは、平成27年4月1日に存在していた法人(同日後に行われる適格合併に係る合併法人にあっては、当該法人及び当該適格合併に係る被合併法人の全て(当該適格合併が法人を設立する合併である場合にあっては、当該合併又は当該適格合併に係る被合併法人の全て)が同日に存在していたもの)に限られる。
       なお、繰入限度額を計算する場合の取扱いについては、措通57の9-157の9-5を参照。

〈取崩し(原則)〉

翌期に全額を取り崩して、益金に算入する。すなわち、毎期洗替えの制度によっている(法52⑩)。

〈種類〉

2 返品調整引当金

〔売り上げた商品等の返品率が大きく、常に一定の返品が予想される事業を営む法人については、その返品による損失の見込額として、一定条件のもとに損金経理により返品調整引当金勘定に繰り入れた場合には、申告を要件として、その繰入額は所得の計算上損金に算入する(旧法53①)。〕

〈適用対象者等〉

 返品調整引当金勘定を設けることができるのは、次の各要件に該当している場合に限られる。

(注) 平成30年度税制改正に伴い講じられた経過措置
   平成30年4月1日以後に終了する事業年度については、同日において現に対象事業を営む法人(同日に営まれている対象事業を同日以後に移転を受ける法人を含む。)が経過措置法人とされている(平成30年度改正法附則25①)。

  • (1) 次に掲げる事業を営む法人であること(旧令99、旧基通11-3-1、11-3-1の2)。
    • ① 出版業
    • ② 出版に係る取次業
    • ③ 医薬品、医薬部外品、農薬、化粧品、既製服、蓄音機用レコード、磁気音声再生機用レコード又はデジタル式音声再生機用レコードの製造業
    • ④ ③に掲げる物品の卸売業
  • (2) 常時(1)の事業に係る棚卸資産の大部分につき次の特約のあること(旧令100、旧基通11-3-1の3)。
    • ① 販売先からの求めに応じ、その販売した棚卸資産を当初の販売価格によって、随時にかつ、無条件に買い戻す旨の特約
    • ② 販売先において、その棚卸資産の送付を受けた場合にその注文によるものかどうかを問わずこれを購入する旨の特約

〈繰入限度額〉

  • (1) 返品調整引当金勘定へ繰入れできるのは、左記の事業の種類ごとに次の算式により計算した金額のいずれかの金額である(旧令101①)。なお、被合併法人の非適格合併の日の前日の属する事業年度及び残余財産の確定の日の属する事業年度においては引当金勘定への繰入れは認められず(旧法53①)、また、普通法人又は協同組合等が公益法人等に該当することとなる場合の、当該該当することとなる日の前日の属する事業年度については適用されない(旧法53⑨)。
     (注) 平成30年度税制改正に伴い講じられた経過措置
        経過措置法人の平成30年4月1日以後に終了する事業年度(令和12年3月31日以前に開始する事業年度に限る。)については、繰入限度額の経過措置が講じられている。
        具体的には、令和3年3月31日までの間に開始する事業年度については、廃止前の規定による繰入限度額とされ、同年4月1日から令和12年3月31日までの間に開始する各事業年度については、廃止前の規定による繰入限度額に対して1年ごとに10分の1ずつ縮小した額の繰入れをそれぞれすることができる(平成30年度改正法附則25①)。
        なお、経過措置の適用により令和12年4月1日以後最初に開始する事業年度の前事業年度に損金算入された返品調整引当金勘定の金額は、その最初に開始する事業年度において益金算入する。
        また、平成30年4月1日前に対象事業を営んでいた法人(同日の属する事業年度の同日前の期間において対象事業を廃止したため経過措置法人に該当しない法人を除く。)の同日の属する事業年度の前事業年度に損金算入された返品調整引当金勘定の金額は、同日の属する事業年度において益金算入する(平成30年度改正法附則25④)。
    • ① その事業に係る期末売掛金の額×返品率×売買利益率
    • ② その事業に係る期末前2月間の棚卸資産の売上金額(特約により買い戻した額を控除しない。)×返品率×売買利益率
  • (2) 返品調整引当金の繰入額の計算については、次による。
    • ① 返品率は、次の算式によって計算する(旧令101②)。
        返品率=その事業年度及びその事業年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度における特約に基づく返品額の合計額÷その事業年度及びその事業年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度における売上高の合計高(特約により買い戻した額を控除しない。)
    • ② 売買利益率は、次の算式によって計算する(旧令101③)。
      売買利益率={その事業年度の販売価額の総額(特約により買い戻した額を控除する。)-(その売上原価+販売手数料)}/その事業年度の販売価額の総額(特約により買い戻した額を控除する。)

〈取崩し(原則)〉

翌期に全額を取り崩して、益金に算入する。すなわち、毎期洗替えの制度によっている(旧法53⑦)。

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